このブログでも何度か“公正証書”という言葉を書いてきました。たとえば、遺言書や離婚協議書です。このような文書を公正証書にするのはなぜでしょうか。そもそも公正証書って何なのでしょうか。
| 公正証書って?
公正証書は公証人が作成する文書です。公証人は公証役場に勤めています。一般的に公証人は国家公務員として考えられていますが、国から給料を貰っているわけではありません。公証役場は独立採算制なのです。
公正証書にするメリットは主に2つあります。
1 強い証拠力
公正証書は証拠として強力です。よほどのことがないと公正証書の内容が覆ることはありません。
2 執行力
公正証書を作成する段階で債務者が同意したときは、裁判をしなくても公正証書があるだけで強制執行ができます。
| 公正証書にする実益は?
上で書いたとおり、公正証書には強力な効力があります。この強力な効力を活かせる場面はどんなときでしょうか。
1 契約書
公正証書は次の要件を備えたときに直接的に強制執行ができます。
(1)“公証人がその権限内で一定の方式により作った証書”であること
(2)“一定の金額の支払又は他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付”を目的にしていること
(3)“直ちに強制執行に復する旨を記載した”ものであること
2 証拠
公正証書は厳格な手続きによって作成されますので、信用力が高いと言われています。また、契約の存在・内容を立証しようとするときの証拠としての役割も認められます。債権を譲るときに必要な“確定日付のある証書”としても利用できます。
3 遺言
遺言は契約ではありませんが、かなり厳しい様式性が求められています。自分で遺言書を作った場合は思った通りの結果になるのか不安になりますが、公証人が作成した公正証書遺言では様式に間違いがありませんので紛争を未然に防ぐことができます。また、様式に間違いがないことから家庭裁判所の検認手続も必要ありません。公正証書遺言と秘密証書遺言では必ず公証人の関与が必要です。
| 公正証書は3通?
公正証書を作成すると3通ができあがります。それぞれ原本、正本、謄本と呼びます。
1 原本
実際に公証人が作成した文書です。公証人が保管します。正本や謄本はこの原本の写しです。原本は公証役場で20年間保管されることになっています。
2 正本
強制執行をするために必要なのが正本です。原則として1通だけ作られて依頼者に渡されます。正本を失くした場合などでもう一通正本を欲しいときは、理由書を公証人に提出しなければいけません。失くさないように保管しなければいけませんが、もし失くしても再発行が可能ですので安心です。
3 謄本
謄本は原本の写しで、相手方に渡されます。正本のように強制執行をすることはできません。謄本が相手方に渡される時期は、正本で強制執行をするときです。公正証書を作成したときに渡されるのではありませんので注意してください。
| まとめ
1 公正証書は公証人が作る書類!
2 公正証書には強い証拠力と証明力があります!
3 公正証書は原本、正本、謄本の3通あります!