| 前回までのまとめ
今回も最初に前回までをまとめます。詳しくは、“相続人って誰?”、“あいつには相続させたくない!”を参照してください。
1 親族の範囲
親族には血族と姻族があります。血族は血のつながりのある人(血のつながりのない養子も含みます)、姻族は配偶者の血族と血族の配偶者です。親族は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。
2 親族の数え方
親族の数え方は共通の祖先まで戻ります。いとこは、共通の祖先である祖父母まで戻って、まずは親で①、祖父母で②、祖父母の子(伯父・叔母)で③、伯父・叔母の子で④ですから、4親等の血族です。
3 法定相続人
相続人はまず配偶者と子。いない場合には直系の祖先(尊属)、さらにいない場合は兄弟姉妹です。代襲相続の制度もあります。
4 遺留分
遺留分は法定相続人が必ず相続できる財産の一定部分です。ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分の割合は、直系尊属のみの場合は遺産の1/3、それ以外の場合は遺産の1/2です。
5 法定相続分
言葉で説明するとややこしくなるので、前回の表を載せます。
6 相続させない方法
家庭裁判所に廃除を訴えます。廃除は遺留分を持っている法定相続人に対してしかできません。遺留分を持っていない兄弟姉妹の場合は、遺言で他人に全てを遺贈するか相続分をゼロにします。
| 生きている間にはできない!
相続に関して生きている間にもできるし遺言でもできることには認知や廃除などがあります。しかし、遺言でしかできないこともたくさんあります。列挙しますと7つあります。
1 未成年者の後見人や後見監督人の指定
2 相続分の指定とその委託
3 遺産分割方法の指定とその委託
4 遺産分割の禁止
5 相続人間の担保責任の指定
6 遺言執行者の指定とその委託
7 遺留分減殺方法の指定
これらは法律上“遺言で”と決められています。それにしても初めて出てくる言葉がたくさんありますね。
1 未成年後見人
未成年者の親権は通常親が持っています。親が亡くなったときに誰が未成年者の子供の親権者になるのかを決めなければいけません。この未成年者の親権者の代わりをするのが未成年後見人です。
未成年後見人は、未成年者の面倒を見て育てたり、財産を管理したり、未成年者の代わりに契約をしたりと親の代わりをします。親権者がいる場合に財産管理だけをする未成年後見人もいます。
後見監督人は未成年後見人が未成年の不利になるようなことをしないかを監視・監督します。
2 相続分の指定
法定相続分とは違った割合で相続させたいときに行います。ただし、遺留分の割合よりも少なくすることはできません。
例えば、奥さんの法定相続分は1/2で遺留分は1/2ですから、奥さんは少なくとも1/4を相続できるはずです。遺言で奥さんの相続分を1/5にすると奥さんが相続するはずだった1/4よりも少なくなりますから、遺留分減殺請求の対象になります。
3 遺産分割
遺産の分け方です。相続分は決まったとしても、どの財産を誰が相続するのかはまだ決まりません。それを遺言で決めてしまうことができます。例えば、土地と建物は奥さんに、株は長男に、預金の半分は長女に・・・という具合です。
4 遺産分割の禁止
自分が死んだとき、つまり相続が始まったときから5年以内の期間を決めて遺産を分けないようにすることができます。
5 相続人間の担保責任
問題がないように見えて実は財産としての価値が少ないような遺産もあります。例えば、使えないほど土壌汚染がひどい土地が考えられます。
このようなほとんど価値のない不動産をまともな価格で計算してしまって、運悪くそれを相続した相続人がいると不公平です。
そこで、不公平な遺産分割をされた相続人は、他の相続人に損害賠償を求めることができます。
6 遺言執行者
遺言に書かれた内容を実現するためにいろいろな手続きをする人です。
被相続人は、相続人が揉めることなく遺言通りに分けてくれるか心配です。ですから、遺言を実行する人を決めて遺志を全うしてくれる人に託すことができるのです。
7 遺留分減殺請求
遺留分を侵害する遺言があった場合、そのまま放っておくと遺言通りに財産を分けられてしまいます。遺留分は主張しないとダメなのです。
“愛人に全ての財産を遺贈する”などという遺言が出てきたら唖然とするでしょう。そのときは遺留分減殺請求をして法定相続分の半分を確保してください。
もっと書きたかったのですが長くなってしまいましたので、今回はこの辺で終わります。次回以降、相続のおおまかな流れ、相続をしない方法、相続財産の決まり方、相続人がいない場合の財産の行方などを書いていきます。
今後ともよろしくお願いします。
| まとめ
1 遺言でしかできないことはたくさん!
2 未成年の子供が心配なら後見人を選任!
3 遺留分が侵害されたら必ず主張!