これからの空き家対策

全国の行政書士が相続による所有者不明の空き家問題に取り組んできました。主に、空家の所有者や相続人の確定のための調査です。先日の記事“相続した家が空家だとどうなる?”でご紹介いたしましたが、国土交通省は空き家対策に本腰を入れて始めています。

今回は前回に引き続き政府の推進する空き家対策について書きたいと思います。

 

| これまでの空き家対策

 

“全国空き家対策推進協議会”が平成29年8月31日に設立されて、実践的な空き家対策について政策提言を始めました。

それだけではなく、国土交通省は所有者が分からない土地を自治体や民間事業者が公益性のある事業に利用できるように特別措置法を制定しました。2018年年11月のことです。このときには、所有者不明の土地を適切に調査・管理する仕組みを作っただけでした。

その後、2019年6月には所有者不明の土地を円滑に利用する仕組みを作り出しました。

この仕組みでは、土地を利用したい自治体や民間事業者が都道府県知事に土地の利用権の設定を申請します。知事は、市町村の意見を聞き決定します。利用期間は最長10年で所有者が現れないときは更新します。

所有者が現れたときは、土地を元の状態に戻して所有者に明け渡すのが原則ですが、所有者がOKといえばそのまま利用し続けることができます。賃料に当たる金額を支払う必要はありますが、突然所有者が現れたときに過去の賃料相当額を一度に支払うのは現実的ではないため、事前に金銭相当額を法務局に供託しておくようにします。

公益性のある利用目的としては公園や広場、文化施設などです。営利性の強い商業施設や個人の住宅としての利用はできません。保育園に使ったら待機児童の問題が解決に向かうかも…

 

 

| これからの空き家対策

 

2022年4月にはこの法律の改正案が提案されました。主な改正点は3つです。

1 利用の円滑化の促進

(1)広場や公民館以外に備蓄倉庫などの災害関連施設や再生可能エネルギーの発電施設の整備に関する事業でも利用できるようにする。
(2)民間事業者が整備する場合、土地の利用券の上限期間を10年から20年に延長。
(3)損傷や腐食などで利用が困難で、引き続き利用されないと見込まれる建物がある土地でも土地収用法の特例手続きで利用できるようにする。

2 災害等の発生防止に向けた管理の適正化

(1)災害等の発生を防止するために、市町村長による勧告・命令・代執行制度を創設する。
(2)管理不全土地管理命令の請求権を市町村長に付与する。
(3)土地所有者の探索のために必要な公的情報の利用・提供を可能にする措置を導入する。

3 所有者不明土地対策の推進体制の強化

(1)計画制度・協議会制度の創設
(2)所有者不明土地利用円滑化等推進法人の指定制度の創設
(3)市町村長による国土交通省職員の派遣要請制度の創設

今後所有者不明の土地はどうなっていくのでしょうか。

所有者不明になる主な要因は相続での未登記です。相続をしたときには是非とも相続登記をされることをおすすめします。

また、2024年4月には相続登記が義務化されます。相続があったことを知った日から3年以内に不動産の名義を変更しなければいけません。怠ると10万円以下の過料を課せられる可能性があります。お気を付けください。

 

 

| 農地の同じような制度

 

農地では、所有者不明の耕作放棄地は都道府県知事が利用権を利用者に与えることができます(農地法43条)。こちらは農業委員会から農地中間管理機構(農地集積バンク)を経由して知事が決定します。農地中間管理機構が利用権を取得し、賃料相当額を支払う必要があります。農地を集積・集約したり農家を法人化したりして生産効率を上げることが行われています。

農地中間管理機構は、主に東北や北陸、九州など農地の多い地域で活躍しています。大阪では平成28年度で集積率が約10%と低く、まだまだ小規模の農地が多くなっています。

守口や門真は10%以下、寝屋川は10~20%といったところです。枚方市は農地管理事業の実績がまだありません。生産緑地の2022年問題の解決にも利用して欲しい制度です。

 

 

| まとめ

 

1 空き地の利用権を公共性の高い事業者に!

2 法改正で用途が広がるかも!

3 農地にも似たような制度があります!



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