食品を取り扱っている業者の方はHACCPという名前をご存知かと思います。簡単に言いますと、食品の安全を脅かす危険性が混入するリスクを排除する食品衛生管理手順を見える化して管理する方法です。
今回は、小規模事業者向けの簡易版HACCPについて書きたいと思います。
| 小規模事業者には簡易版HACCP
厚生労働省では、1事業所あたり50人未満の小規模事業者の場合には、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(簡易版HACCP)に取り組むこととしています。各業界団体が手引書を発表していますので、厚生労働省のサイトで確認してみてください。
簡易版HACCPでは7原則12手順から5原則7手順に簡略化されています。具体的な5原則7手順は次のとおりです。
手順1 機器取扱い手順書の作成
作業で使用する機器の取扱説明書・マニュアルを作成します。
手順2 製造工程図の作成
原材料の購入から出荷・提供までのプロセスを工程ごとに書き出した資料を作成します。いわゆる工程表です。
手順3 危害要因の分析(原則1)
食品衛生に著しい悪影響を与える危害要因を、工程ごとに列挙します。細かいことでも気づいたことは全て書き出します。たとえば、空調の風のあたる場所での作業は、食品にホコリが入る可能性があるといった具合です。
手順4 重要管理点の発見(原則2)
列挙した危害要因の中から特に除去・提言すべき重要な工程を決定します。
手順5 管理基準の設定(原則3)
特に重要な工程を適切に管理するための基準を設定します。たとえば、60度以上で10分加熱するという具合です。
手順6 モニタリング方法の設定(原則4)
管理基準が正しく実行されているかを適切な頻度で確認し、確認結果を記録する方法を設定します。
手順7 改善措置の設定(原則5)
モニタリングで管理基準から逸脱していた工程を是正する措置を設定します。
HACCPと大きく異なるところは、チームの編成が不要なことと記録が不要なことです。1人でも計画実施が可能ですので、小規模事業者にはうれしい限りです。また、各作業工程での記録が不要であることから、人員の配置が少なくて済みます。管理者が1人であっても実施が可能な手順になっています。
| 簡易版HACCPの対象業者
簡易版HACCP(基準B)の対象業者は主に4つ挙げられています。
1 小規模事業者
2 当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
3 提供する食品の種類が多く変更頻度が頻繁な業種
4 一般衛生管理の対応で管理が可能な業種
簡易版HACCPの対象事業者であっても、通常のHACCP(基準A)を導入することは可能です。ただし、通常のHACCP対象事業者が簡易版HACCPを選択することはできません。ご注意ください。
HACCPの導入は異物混入などのクレームを減少させたり対外的に自社の衛生管理の取組について根拠をもって示すことができたりしますので、消費者に対して自社製品の安全・安心への信頼を向上させることができます。
| まとめ
1 簡易版HACCP(基準B)は小規模事業者にうってつけ!
2 業界団体の手引を活用して簡易版HACCP計画を作成!
3 簡易版HACCPではチームの編成と記録が不要に!