2019年行政書士試験 民法検討 (問題29~問題30)

2019年の行政書士試験が11月10日(日)に行われてから1か月以上が経ちました。受験生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。合格の発表は2020年1月29日(水)です。待ち遠しいですね。

合格発表までの間に2019年度の行政書士試験の択一の検討をしたいと思います。

今回は、2019年の問題29、問題30です。今回の2問は難しいと思います。

 

 

| 行政書士試験の民法検討(問題29~30)

 

民法の択一は問題27~35の9問です。

 

【問題29】

動産の物権変動に関する問題です。妥当でない肢を選びます。不動産の物権変動は覚えていても、動産の物権変動の要件は忘れてしまっている受験生もいるのではないでしょうか。特に肢4と肢5の譲渡担保は知らなくても仕方ありません。肢1と肢2だけで正解を導きたい問題です。

1 動産の所有権の対抗要件は“引渡”です。現実の引渡である必要はありませんが、何らかの引渡がなければいけません。肢1では引渡をしないうちに差押がなされていますから、譲受人は差押権者に所有権を主張できません。

2 動産の賃貸借の対抗要件は規定されていません。ですから、賃借人は新所有者に賃借権を主張できません。逆に、新所有者が賃借人に所有権を対抗するためには、対抗要件である引渡を備える必要があります。

3 寄託契約の受寄者は保管をしているだけなので、新所有者の所有権に基づく引渡の請求に応じなければいけません。

4 譲渡担保権の問題です。譲渡担保は動産に対する抵当権のようなものですから、譲渡担保設定者は今までと同じように動産を利用することができます。ですから、占有改定による引渡を認めないと譲渡担保権を設定する意味がありません。難しい肢だと思います。

5 集合譲渡担保権の問題です。集合譲渡担保は種類、量的範囲、場所で特定された集合物を譲渡担保の目的とする譲渡担保です。集合物としての同一性が損なわれない限り、譲渡担保は継続します。難しい肢だと思います。

 

【問題30】

地役権や抵当権などに関する問題です。組合せ問題です。妥当な肢を選びます。

ア 地役権が水利のために設定されているときは、水の円滑な流れを阻害することは許されません。ただ、地役権は用益物権ですから、地役権に基づいた土地の明渡しまでは認められません。

イ 眺望のための地役権を設定しているときは、眺望を妨害する建物の収去を請求することができます。土地の明け渡しまでは認められません。

ウ 囲繞地通行権の問題です。袋地の所有者は隣地を通行することができます。ただし、原則として通行料を支払う必要があります。肢ウの通行したい人は所有権者ではなく地上権者ですが、相隣関係の規定は地上権にも準用されます(民法267条)。ですから、別途、通行するための契約(賃貸借契約など)を締結しなくても、囲繞地通行権を主張できます。

エ 法定地上権の問題です。抵当権設定以前からある建物を土地の所有者が抵当権設定後に譲り受けた場合、“抵当権設定当時、土地と建物が同一の所有者に属すること”という要件を満たしませんので、法定地上権は成立しません。

オ 地上権における土地の工作物の収去の問題です。原則として、地上権が消滅すると、土地を原状に戻して返還しなければいけません。建物が建っていれば建物を取り壊さないといけません。ただし、土地の所有者が時価相当額で建物を買い取る旨を通知したときは、地上権者(建物所有者)は、正当な理由がなければ土地所有者の買取の申出を断ることができません。

 

 

| まとめ

 

1 譲渡担保や集合譲渡担保の問題は難問!

2 地役権者は土地の明渡請求はできません!

3 地上権者には原則として工作物の収去義務があります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ
Translate »