| 社会保険の適用事業
建設業は今、社会保険に入らないとなかなか下請けに入れなくなってきています。当事務所でも法人化にあたって相談にされる方もいらっしゃいます。このようなご相談をお受けできるように社会保険労務士に挑戦中なのです!
さっそく適用事業を見ていきましょう。適用事業は加入しなければいけない強制適用事業と望んで加入する任意適用事業があります。
| 強制適用事業の要件は?
まずは強制適用事業から。
1 労働基準法
同居の親族のみの事業以外のすべての事業です。
2 労働者災害補償保険法(労災)
労働者を使用する事業のすべてです。ただし、個人経営の農業・水産業・林業を除きます。
3 雇用保険法
労働者が雇用されるすべての事業です。ただし、船員を雇用しない個人経営の農林水産業は除きます。
4 健康保険法・厚生年金法
個人事業所:常時5人以上を使用する事業
国・地方公共団体:常時1人以上の従業員を使用する事業
法人:常時1人以上の従業員を使用する事業
船舶:すべての船舶(ただし、厚生年金法のみ)
個人経営の個人事業は意外に除外されています。個人経営の農林水産業は労災や雇用保険に入らなくてもよい方が多いのではないでしょうか。
注意するのは、労災は労働者を“使用”で、雇用保険は労働者を“雇用”なんですね。雇用保険だから雇用と覚えやすいので助かります。
また、法人は健康保険や厚生年金への加入が必須です。
| 任意適用事業の要件は?
次に(暫定)任意適用事業の要件を見てみましょう。
1 労働基準法
任意適用事業はありません。同居の親族のみの事業でも適用されません。
2 労働者災害補償保険法
個人経営の農林水産業に適用されます。
農業:使用労働者数が常時5人未満かつ特定危険有害作業を行わない、事業者が特別加入していない
水産業:使用労働者数が常時5人未満かつ特定危険有害作業を行わない、総トン数5トン未満の漁船か主として河川・湖沼・特定水面で操業する漁船
林業:常時労働者をしようしないかつ年間使用延労働者数が300人未満
3 雇用保険法
個人経営の農林水産業に適用されます。ただし、船員が雇用される水産業を除きます。
さらに、使用労働者数が5人未満の個人事業にも適用されます。
4 健康保険法・厚生年金法
個人経営で、従業員を常時5人未満使用するか非適用業種の事業所です。非適用業種は、農林水産、理容美容、興行、接客娯楽、法務、宗教の6業種です。
健保や厚生年金は、一般的な個人事業では5人未満なら任意適用事業で5人以上なら強制適用事業になるんですね。6種類の非適用業種では5人以上でも任意加入です。
労災では危険な農業や水産業では加入できないというのが厳しいです。労災は業種によって保険料が異なりますから、危険な業種では保険料を算出できないのでしょうね。
| 任意加入の要件は?
任意加入は事業者が入ろうと思ったら入れるというものではありません。いろいろな要件があります。
1 労働者災害補償保険法
労働者の同意は不要ですが、厚生労働大臣の認可が必要です。労働者の希望で加入する場合には、労働者の過半数の希望と加入申請が必要です。
反対に、脱退には労働者の過半数の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。その他にも、労災保険関係成立後1年を経過していることと特別保険料の徴収期間を過ぎていることも必要です。
2 雇用保険法
労働者の1/2以上の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。労働者の希望で加入する場合には、1/2以上の希望と加入申請が必要です。
反対に、脱退には労働者の3/4以上の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。
3 健康保険法・厚生年金法
被保険者の1/2以上の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。労働者の希望で加入する場合でも、労働者の加入申請は必要ありません。
反対に、脱退には被保険者の3/4以上の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。
労災も雇用保険も健保・厚生年金も、すべて加入よりも脱退の方が手続きが厳しくなっています。
労災と雇用保険の労働者の希望のある場合で、要件が微妙に違うのが面白いですね。労災は過半数、雇用保険は1/2以上です。労災の方がわずかに厳しいのは何故なのでしょうか?
| まとめ
1 社会保険には強制適用事業と任意適用事業があります!
2 5人や5トンという“5”が分かれ目!
3 加入よりも脱退の方が厳しい!