| 土地の面積が足りないってどういうこと?
建物を建てるために土地を購入しましたが、引き渡しを受けてから測量をすると謄本に書かれている公簿面積に足りなかった。実際にこういうことがあるそうです。謄本の公募面積は地積測量図の面積を転記してるんじゃないの?と疑問に思いましたが、最近社長から教わりました。
測量は土地を分筆するときにも行われます。たとえば500㎡の土地Aがあったとします。この土地の一部分である80㎡を分筆するとき、分筆をする80㎡の測量が行われますので分筆した土地Bは確かに80㎡です。土地Aは土地Bを分筆しましたので、420㎡になりました。地積測量図には土地Aは“残地”として面積420㎡と記入されます。
この残地が曲者だったのです。分筆が繰り返されるうちにどこかでおかしくなって、残地の面積が少なくなることがあるそうです。なるほど、そうだったのですね。
| 土地の面積が足りないときはどうすれば?
分筆が繰り返されて実際の土地の面積が公募面積に足りなかったときどうしたらいいのでしょうか?足りない土地の代金を売主に返すよう求めたり、仲介した不動産屋に損害賠償をしたりすることができるのでしょうか?
インターネットで検索してみると、ちょうどピッタリの裁判例がありました(東京地裁平成24年4月18日判決)。
事案は長いので割愛しますが、簡単に書きますと買主さんが土地を購入後に測量をしたら公簿面積に足りなかったというのです。そこで、買主さんは売主さんに対して数量指示売買における担保責任を追及して契約を解除し代金の返還を求めました。また、仲介した不動産屋には説明義務違反があったとして損害賠償を求めました。
結論としては、当該取引は公簿売買であって数量指示売買ではないから請求は棄却されました。また、仲介した不動産屋への損害賠償も否定されました。
買主さんは踏んだり蹴ったりですね。
| 数量指示売買が否定された理由
数量指示売買は次のように定義されています。“当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数又は尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買”のことをいいます。この定義は最高裁昭和43年8月20日判決で示されたそうです。
ポイントは、(1)“目的物の実際に有する数量を確保するため”、(2)“売主が契約において表示し”、(3)“数量を基礎として代金額が定められた”というところです。
東京地裁平成24年4月18日判決の事案では、買主さんは一定の大きさの建物が建てられる土地を探していたこと、地積測量図の寸法に着目して売買契約が締結されたことは認められました。
しかし、売買契約書では“現状有姿の公簿取引であること”と“実測面積との間に差異が生じても互いに異議を申し立てず、売買代金減額請求もしない”と書かれていました。
この点を重視してこの取引は公簿売買であると認定しました。また、測量をしない代わりに相場よりも安く売買されたこと、1㎡あたりの単価や坪単価が端数であることから、面積を基礎に売買代金額が決められたとは言えないとされました。
上で書いたポイントに当てはめてみますと、(1)“目的物の実際に有する数量を確保するため”の部分は認められました。(2)“売主が契約において表示し”の部分は公簿取引と表示されていたので認められませんでした。(3)“数量を基礎として代金額が定められた”の部分は相場よりも安いことと単価が端数であることから認められませんでした。
結局、(2)と(3)の要件を満たさなかったので数量指示売買とはされなかったのです。
| 説明義務違反が否定された理由
不動産売買をするときには、売買契約を締結する前に重要事項説明が行われますが、重要事項説明書には“敷地と道路との関係図”を書く欄があります。
東京地裁平成24年4月18日の事案では、この欄に奥行きの長さが2通り書かれていました。西側の奥行は10.39m、東側の奥行は10.05mです。奥行きが東西で違うのですから、奥行が正確な数字であると買主さんに重大な誤信を与えるものではなかったとされました。
また、相場よりも安く売買され、現状有姿の公簿売買であることは売買契約書や重要事項説明書に記載されていますから、奥行が10.39mに足りなくても説明義務違反にはならないと判示されました。
この裁判例を読んで1つ階段を上った気がします。
| まとめ
1 土地の売買には公簿売買と数量指示売買があります!
2 数量指示売買は要件をきちんと満たす必要があります!
3 売買契約書や重要事項説明書はよく読んでください!
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