| 遺産分割協議と調停・審判
相続人と相続財産が判明したらいよいよ遺産分割協議です。相続人全員で話し合わなければいけません。誰が何を相続するのかを決める話し合いです。
遠方に住んでいて集まれない場合には、メールや手紙、電話などで話し合いを進めることもできます。
相続人の中に未成年や認知症の方がいる場合には、場合によっては特別代理人や成年後見人をつける必要があるかもしれません。
相続人全員が同意して遺産分割協議が整ったら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には必ず全員の署名押印が必要です。このときは実印を押してもらうようにしましょう。印鑑証明書も一緒に添付します。それぞれの相続人が1通ずつ保管できるように、相続人の人数分だけ作成します。
遺産分割協議が整わない場合には、相続人全員で家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。これで遺産分割協議が整うと調停調書が作られて遺産を分割することができます。
遺産分割調停が整わない場合には遺産分割審判に移行します。相続人がそれぞれ自分の望む分割方法を主張して資料を提出します。裁判官がその主張と資料を見て妥当だと思う審判をし、審判書が作られて相続人に送付されます。これで最終的な決定がなされました。
| 限定承認と相続放棄
遺産の中に借金や負債があるときにはそのマイナスの遺産も相続されます。借金や負債が多くて相続したくない場合には、限定承認や相続放棄の手続きをとることができます。
限定承認や相続放棄については、次回以降に書きたいと思います。マイナスの財産を相続しなくてよい方法があることだけは覚えておいてください。
| その他の手続き
1 所得税の準確定申告
被相続人が確定申告をしないといけない場合には相続人が代わりにこの手続きをします。ただし、死亡後4か月以内の手続きが必要です。かなり急がないといけないと思ってください。
2 預貯金の払い戻し、株式の名義書き換え、投資信託の払い戻し、電話や有料放送などの解約
遺言書や相続財産を探しているときに、このような書類が見つかったら保管をしておきましょう。まとめて手続きをしないと、どの手続きが終わって何がまだなのかが分からなくなります。
3 不動産の相続手続き
不動産の名義変更をしておきましょう。これは義務ではありませんが、放置しておくとのちの相続でもめるかもしれません。相続を“争族”にしないためにも手続きをしておきましょう。
4 相続税の申告と納付
相続税の申告と納付は、被相続人が死亡してから10か月以内にしなければいけません。納税までが10か月です。ただ、遺産分割協議が整わずに相続分が分からない場合が多くあります。このような場合には、一応の金額として法定相続分で申告・納税することが多いです。遺産分割協議が整った後に更正請求をして清算します。
相続税が支払えない場合は、物納や分割納付という方法もあります。税務署に相談してください。
5 相続税軽減措置の手続き
小さな宅地を相続した場合や農地を相続した場合には相続税の軽減措置があります。これらの措置を受けるには、10か月以内に相続税の申告・納税をするときに“申告期限後3年以内の分割見込書”という書類も提出します。この書類は、3年以内に遺産分割協議が整う見込みだという書類です。遺産分割協議が整ったら“更正請求”をします。
| まとめ
1 遺産分割協議書には全員の署名と実印!
2 印鑑証明書も忘れずに!
3 負債が多い時には限定承認・相続放棄を!
4 所得税・相続税の手続き、不動産の名義変更も!