民法ってどんな法律?(物権編④)

| 担保物権ってなに?

 

担保物権は、弁済を確保するために他人のものの担保としての価値を利用する権利です。たとえば、弁済をするまで返さないとしたり、弁済ができなくなったら売却して代金から弁済を受けたりする権利です。担保物権には、留置権、質権、先取特権、抵当権の4つがあります。

担保物権には、次の4つの性質があると言われています。

1 付従性

債権がなければ担保物権もなく、債権が消えれば担保物権も消える性質です。

2 随伴性

債権が譲渡されると、担保物権も一緒に移転する性質です。

3 不可分性

全部が弁済されるまで、目的物全部に対して担保物権を行使することができる性質です。

4 物上代位性

目的物を売ったり貸したりしたときにその代金から弁済を受けることができる性質です。ただし、留置権にはこの性質がありません。

 

 

| 質権

 

質権は、担保として受け取ったものを債務が弁済されるまで手元に置いておく権利です。イメージとしては、質屋にモノを預ける代わりにお金を借りるというものですね。お金を返すまで預けたモノは戻ってきません。

質権を設定するには、契約のときにモノ(質物)を渡さなければいけません。不動産も質入れすることができますし、権利も質入れすることができます。

 

 

| 留置権

 

留置権は、モノについて生じた請求権を弁済してもらうまでそのモノを手元に置いておく権利です。たとえば、建物の賃借人が賃借中に建物の壁を必要に迫られて修繕した場合、本来大家が負担する修繕費の返済を受けるまでは部屋の引き渡しを拒むことができます。

留置権は法律上当然に発生する権利ですので、契約は必要ありません。

 

 

| 先取特権

 

先取特権は、特定の債権を持つ人が債務者の一定の財産から優先的に弁済を受ける権利です。法律上当然に発生する権利です。

先取特権には、一般の先取特権、動産の先取特権、不動産の先取特権の3つがあります。さらに不動産の先取特権には、不動産保存の先取特権、不動産工事の先取特権、不動産売買の先取特権の3つがあります。

とくに不動産工事の先取特権は、工事の代金を支払わないときに工事業者に認められる権利です。工事をした不動産を売却したり賃貸したりしたときには、先取特権を有する工事業者がその代金や家賃から工事代金を受け取ることができます。ただし、工事の前に予算額を登記していなければいけませんので、かなりハードルが高いです。

 

 

| 抵当権

 

抵当権は、目的物を取り上げずに使用させ続けてる担保物権です。住宅ローンをイメージされるとOKです。返済が滞ると抵当権を実行されて競売にかけられ、土地や建物を手放すことになります。

抵当権の設定は契約によって行われます。また、債務者の代わりにモノだけを抵当に入れる物上保証人もいます。いくつかの不動産をまとめて抵当に入れることもできます。

実は、抵当権に対抗できる権利があります。それが法定地上権です。前回の地上権のところで少し書きましたね。競売にかけられた場合に、法定地上権が成立すると建物を取り壊して立ち退く必要がなくなります。ただし、所有者ではなくなりますから地代や家賃を支払わなければいけません。

賃貸人がいる場合に競売にかけられると、抵当権の登記より後に入居した賃貸人は立ち退かなければいけません。すべての抵当権者が同意した場合で同意の登記がされていれば立ち退かなくてもいいのですが、このような場面はないと言ってもいいと思います。

抵当権と似ている権利に根抵当権があります。根抵当権は、事業の融資などに使われるもので極度額まで何度でも借りられる特殊な抵当権です。

 

 

| まとめ

 

1 担保物権には4つの性質があります!

2 質権や抵当権は身近にイメージできるかも!?

3 留置権には優先弁済的効力がないのでご注意!



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民法ってどんな法律?(物権編③)

| 用益物権ってなに?

 

前回の“民法ってどんな法律?(物権編②)”では、物権は分類されていて所有権や占有権の他に用益物権や担保物権があるというお話を書きました。今回は用益物権について書きたいと思います。

用益物権は、一言で言いますと“他人の土地を利用させてもらう権利”です。他人の土地の利用関係については用益物権の他に“相隣関係”という規定もあります。一緒にまとめて書きたいと思います。

 

 

| 地上権

 

地上権は、他人の土地に工作物や樹木を所有するために土地を利用する権利です。実際にはあまり使われていない権利です。と言いますのも、同じ目的であれば土地を賃貸借することができるからです。

地上権での“工作物”は建物の他に、電柱、広告塔、石油タンクなどがあります。樹木には、稲、果樹、茶などは含まれません。

地上権には無償のものと有償のものがあります。賃貸借との違いはここですね。賃貸借は必ず賃料が発生します。もし無償であれば、賃貸借ではなく使用貸借です。

さらに、地上権は登記をしなければ第三者に地上権を主張できません。一定の要件を備えれば法律上地上権が成立する場合もあります。

 

 

| 地役権

 

地役権は、自己の土地を便利に使うために他人の土地を利用する権利です。たとえば、道路を作って公道に出られるようにしたり、田んぼに水を引くために水路を作ったりするときに使います。

地役権を手に入れるためには契約をすることはもちろんですが、その他にも時効取得することができます。ただし、継続的に行使されていて外から分かるものでなければいけません。さきほどの道路や用水路の利用の場合には時効取得が認められる可能性がります。

地役権には無償のものと有償のものがあります。ただし、地代がいくらかを登記することはできませんので、地代を第三者に主張することはできません。

 

 

| 永小作権

 

永小作権は、耕作や牧畜のために小作料を払って他人の土地を利用する権利です。無償の永小作権はありません。

永小作権を手に入れるためには契約や時効取得があります。ただし、登記をしなければ第三者に主張することはできません。

 

 

| 入会権

 

入会権は、一定地域に住んでいる人が山林で薪や草を採取する場合などに共同で収益を上げる慣習上の権利です。ほとんど慣習に委ねられていますので各地によって内容は様々です。また、登記をすることはできません。

 

 

| 相隣関係

 

相隣関係は、隣接する不動産を利用するときのルールです。いろいろな形があります。

1 隣地使用権、立入権

境界付近で工事を行うときなどに隣地を利用させてもらう権利です。承諾があれば建物の中にも立ち入ることができます。

2 通行権

袋地になっていて公道に面していない場合に、公道へ行くために周りの土地を通る権利(囲繞地通行権)です。地役権と同じようなものですが、かならず通行料を支払わなければいけません。

3 樹木の切除

隣地の樹木が境界戦を超えているときに、枝を切るように請求できます。根っこならば勝手に切ってもかまいません。

4 境界線付近の建築

建物を建てるときには、境界線から50㎝以上離すように決められています。これに違反している場合には、建築を中止するように求めたり変更するように求めたりすることができます。ただし、完成後には請求できませんし、建築着手から1年以上経ったら請求できません。

5 境界標の設置

境界標を隣接と共同の費用で設置することができます。

6 目隠しの設置

境界線から1m未満の距離で窓やベランダなどを作るときには目隠しをつけなければいけません。

7 自然の水の妨害禁止

自然に水が流れてきているのを勝手に妨げてはいけません。

 

 

| まとめ

 

1 用益物権は他人の土地を利用する権利!

2 通行地役権と囲繞地通行権はよく似ている!?

3 地上権と賃借権もよく似ている!?



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民法ってどんな法律?(物権編②)

| 物権はいくつかに分けられる

 

以前のブログ“民法ってどんな法律?(物権編①)”で書きました通り、民法には9種類の物権が書かれています。実はもう一つありまして、“入会権”という物権もあります。現在ではほとんど利用されていませんので9種類と書かせていただきました。ご了承ください。

これらの物権は大きく2つに分けられます。占有権と本権です。占有権以外の物権は“本権”と呼ばれています。占有権だけが少し変わった物権だと思ってください。

本権の中ではまた2つに分けられます。所有権と制限物権です。所有権だけがモノを全面的に支配する権利ですので特別扱いをされます。

制限物権の中ではまたまた2つに分けられます。用益物権と担保物件です。用益物権はモノを一定の目的のために利用するための権利です。地上権、地役権、永小作権、入会権の4つが用益物権です。担保物権は債権(請求権)を担保するための権利です。留置権、先取特権、質権、抵当権が担保物権です。

 

 

| 物権を手に入れる!

 

物権を取得する方法は2つあります。原始取得と承継取得です。

原始取得は、まだ誰のものでもないものを手に入れたり、時効で手に入れたりしたときに、前主のキズを承継しません。つまり、まっさらの権利を手に入れることができるのです。

承継取得は原始取得と違って、前主のキズを承継します。中古品ですね。モノの売買や相続のときにモノの所有権を取得しますが、その所有権には地役権や抵当権のような権利がくっついている場合があります。この地役権や抵当権がキズです。

逆に、物権を失くしてしまう場合があります。モノが壊れて無くなってしまったり、モノを売ってしまったり、誰かに時効取得されてしまったりした場合です。

 

| 物権は公開されてる!?

 

物権は強力な権利ですので、取引を安全にするために特別な工夫がなされています。

1つは公示の原則です。誰が所有しているのか、権利がどのような状態なのかを他の人にもわかるようにすることを公示と呼んでいます。権利は見えませんから、権利の状態が分からずに取引に入った他人に損害を与えてしまうかもしれません。それを防ぐための方法が公示なのです。

不動産の場合は登記です。法務局に行って申請をすれば誰でも不動産登記を見ることができます。不動産以外のモノ(動産)の場合は引渡です。簡単に言えば持っている人が所有者です。貸し借りがある場合などは違いますけどね。船や飛行機や車は登記や登録制度があります。樹木や農作物には明認方法という公示方法があります。

物権が移転した場合には当事者間ではもちろん有効ですが、他人に物件の移転を主張するためには公示が必要です。民法には177条(不動産)や178条(動産)に、公示のない物権変動は第三者に対抗できないと書かれています。

 

 

| まとめ

 

1 物権はいくつもに分類されます!

2 占有権、所有権は意外に特別な権利!

3 物権は誰でもわかるようになっています!



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連帯保証は怖いって聞くけど…

| 連帯保証って何が違うの?

 

連帯保証人はご存知かと思いますが、内容までご存知でしょうか?連帯保証人になる機会はそれほど多くありませんが、たとえば大学進学などで未成年のお子さんが一人暮らしを始めるときに賃貸住宅を借りる場合には、不動産会社から親御さんに連帯保証人になるよう求められると思います。

連帯保証は単なる保証とは違って、かなり厳しい内容です。もちろん債務者がきちんと支払いをしていれば全く問題ありません。支払いを怠った時に保証人の出番になります。

保証契約の特徴はいくつかあります。まず、債権者と債務者の契約とは別に契約します。しかも書面で契約しなければいけません。また、主たる債務がなくなると保証債務もなくなりますし、主たる債務に生じたことは保証人にも効果を及ぼします(付従性)。債権が譲渡されると保証債務も一緒についていきます(随伴性)。

以上は、単なる保証も連帯保証も共通の事柄です。違うところは2つあります。

1 連帯保証には補充性がない

単なる保証の場合、債務者が支払いを怠って保証人に請求されたとしても、まずは初めに債務者に請求してくれと主張することができます。ところが、連帯保証人はそのような主張ができません。いきなり連帯保証人に請求が来ても支払わないといけないのです。

さらに、単なる保証の場合、保証人が債務者に支払う能力があって簡単に強制執行ができることを証明すると債権者は債務者の財産に強制執行しなければいけません。しかし、連帯保証人はこの主張ができませんので、いくら債務者に財産があっても連帯保証人が支払わないといけないことになっています。

2 連帯保証には分別の利益がない

“分別の利益”という意味はよくわかりませんよね。いわゆる専門用語なのだと思います。分別の利益は保証人が数人いる場合(共同保証)に、原則として各保証人は主たる債務の額を保証人の頭数で割った額を負担することを言います。たとえば、主たる債務が1000万円、保証人が2人いた場合、保証人はそれぞれ500万円ずつ返済すればよいことになっています。

ところが、連帯保証人には分別の利益がありません。ですから、主たる債務が1000万円、連帯保証人が2人いる場合でも、主たる債務者が返済を怠って債権者が連帯保証人に請求してきたときは連帯保証人は1000万円を返済しなければいけないのです。先に書いたとおり、連帯保証人には補充性がありませんから債務者に財産が有っても1000万円を返済することになります。

 

他にも連帯保証の特徴はいろいろとありますが、連帯保証が怖い理由は補充性がないことと分別の利益がないことなのです。請求があれば有無を言わさず全額を返済する義務があるというのですからかなり厳しいですよね。よほど信頼できる人からの依頼でなければ連帯保証人にはならないことが賢明です。

ただ、事業の借り入れの場合はどうしようもありません。法人でも個人事業でも借り入れなく事業を営むことは難しいですから、多くの会社では代表取締役や代表は連帯保証人になっていることでしょう。代表者の方のご苦労・ご心労に頭が下がる思いです。

 

 

| まとめ

 

1 連帯保証は単なる保証とは違います!

2 主たる債務がなくなれば保証債務もなくなります!

3 連帯保証には補充性や分別の利益がありません!



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1人で“できること”と“できないこと”

| 行為能力が制限される

 

前回の記事でも書きましたが、1人で契約をすると契約を取り消されてしまう人たちがいます。未成年者、成年被後見人については前回の記事のとおりです。本日は、残り2つの被保佐人と被補助人について書きたいと思います。

未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人はまとめて制限行為能力者と呼ばれています。昔は行為無能力者と呼ばれていましたが名称が変わりました。また、禁治産者は成年被後見人に、準禁治産者は被保佐人となりました。

被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所の補佐開始の審判を受けた者をいいます。法律の書き方は分かりにくいですね。つまり、一般の人よりも判断力がすごく弱くて裁判所の審判を受けた人です。

判断力がすごく弱いとは言っても、原則として1人で契約ができます。成年被後見人と比べますと、判断力が少しあっていつも判断力が悪いわけではない人ですから、成年被後見人ほど保護をしなくても大丈夫なのです。

被保佐人が1人で契約できるますが、次の9つのことは保佐人の同意がなければいけません。

1 元本の領収、利用

2 借金、保証

3 不動産などの重要な財産の権利の得喪に関すること

4 訴訟

5 贈与、和解、仲裁合意

6 相続の承認、相続放棄、遺産分割

7 贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込の承諾、負担付贈与の承認

8 新築、改築、増築、大修繕

9 長期(土地5年以上、建物3年以上)の賃貸借

日常の中ではあまり経験しないことばかりですね。分かりにくいのは3番の“権利の得喪”でしょうか。権利の得喪というのは、たとえば不動産を買ったり売ったりして所有権を得たり手放したりすることです。

7番の負担付贈与は、たとえば“うちの猫の世話をしてくれるならこの時計をあげる”といった〇〇をするならこれをあげるというものです。単に“これをあげる”という贈与ではなくて、“〇〇をするなら”という負担が付いた贈与のことです。

保佐人の同意がない行為は取り消すことができます。

 

 

| 被補助人はどんな人?

 

被補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます。成年被後見人は“能力を欠く常況”、被保佐人は“能力が著しく不十分”、被補助人は“能力が不十分”になっています。これをみると、被補助人は被保佐人よりも軽い状態ですね。

ですから、被補助人は基本的に何でも1人で契約ができます。ただし、家庭裁判所が決めた行為は補助人の同意が必要です。家庭裁判所は、被保佐人が補佐人の同意を得なければいけない9つの行為の中からしか指定できません。上に書いた借金とか訴訟とか新築とかのあの9つの中からです。

補助人の同意がない行為は取り消すことができます。

 

 

| まとめ

 

1 被保佐人は同意が必要な行為が列挙されています!

2 被補助人は裁判所が同意の必要な行為を指定します!

3 被保佐人も被補助人も原則として1人で契約ができます!



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