未成年者が契約できないってホント?

| 法定代理人の同意は必要?

 

みなさんご存知のとおり、未成年者は20歳未満の方です。2022年4月1日に改正民法が施行されると未成年は18歳未満になります。

たとえば、未成年者が携帯電話の契約をしようとすると親御さん(法定代理人)の同意が求められます。この同意がないと契約はできません。そうは言っても、未成年者はどんな契約もできないのかと言いますとそうではありません。

学校帰りにお菓子を買って食べている中学生や数人で集まって駄菓子を頬張る小学生を見かけることあります。このお菓子はどうしたのでしょうか?もちろん小学生や中学生が自分だけでお店で買ったものです。

スーパーやお菓子屋で子どもが買い物に来た時には親御さんの同意を求めませんよね?先ほどの携帯ショップとは何が違うのでしょうか。

民法上、原則として未成年者は親御さんの同意なしでは契約はできません。ですから、未成年者だけで携帯電話の契約もできませんし、お菓子も買えないのが原則です。もし契約をしてしまうと後から親御さんに契約を取り消される可能性があります。

しかし、原則には例外があるものです。例外は3つあります。

1つめは、単に権利を得たり単に義務を免れたりする行為は未成年者が単独ですることができます。たとえばタダでモノをもらう場合ですね。

2つめは、親御さんが処分を許した財産の処分です。固い言い方で分かりにくいですが、お小遣いでお菓子を買ったりする行為がコレです。お小遣いは自由に使ってよいという暗黙のルールで渡されます。つまり親御さんがお小遣い(財産)の使い方(処分)を許したのです。ですから、先ほどの中学生や小学生はお小遣いでお菓子を買って食べられたのですね。

3つめは、親御さんから営業を許された場合です。未成年者が起業したという場合には親御さんから営業を許されたのだと思います。

以上から、結論としては未成年者がする契約は原則として取り消しうるが、例外もあるということになります。

 

| 成年被後見人ってなに?

 

未成年者と同じく制限行為能力者という括りには成年被後見人も入ります。この2者以外にも、被保佐人と被補助人があります。

成年被後見人は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者です。さっぱりわかりません。簡単に言い換えますと、認知症などになって大体いつも判断力がない状態になっている人で、家庭裁判所から審判を受けた人のことです。よくあるのは認知症が相当程度進んだ状態でしょうか。このような方は自分が正しいことをしているのか間違ったことをしているのか分かりませんし、周りの状況も理解できていない可能性があります。このような方が結んだ契約は原則として取り消すことができます。

未成年者と大きく違うポイントは、後見人が事前に同意をしても意味がなくて契約を取り消すことができます。未成年者の場合は親御さんの同意があれば有効に契約が成立しましたが、成年被後見人の方がより強く保護されています。また、契約の時に正気に戻っていたとしても取り消すことができます。

ただし、原則にはやはり例外があります。日用品の購入や日常生活に関する行為は取り消すことができません。毎日の食料品の買い物まで取り消せるとなると、誰もお年寄りにモノを売らなくなってしまうかもしれませんものね。

 

 

| まとめ

 

1 未成年者は原則として単独で契約はできません!

2 成年被後見人も原則として単独で契約はできません!

3 両者とも例外があります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

民法ってどんな法律?(物権編①)

| 物権ってなに?

 

物権にはいくつもの権利が法定されていますが、簡単に言えば“モノに対する権利”で“誰に対しても主張できる権利”です。たとえば所有権は代表的な物権ですが、あなたの持っているボールペンはあなたのもので、誰に対しても自分のものだと主張できます。

民法上の物権は9つあり、全て法律に書かれています。民法その他の法律で規定されている物権以外は認められません。譲渡担保のように担保物件と同じような効果がある権利もありますが、いわゆる物権ではありません。

9つの物権は以下のとおりです。

1 占有権

2 所有権

3 地上権

4 永小作権

5 地役権

6 留置権

7 先取特権

8 質権

9 抵当権

聞いたことがある権利は、占有権、所有権、留置権、質権、抵当権でしょうか。特に所有権や抵当権はなじみのある権利だと思います。

 

 

| 物権ってどんな権利?

 

物権は物に対する直接的・排他的な支配を内容とする権利です。ですから、一個の物には一個の物権しか成立しません。同じ物に同じ複数の物権は認められません。“一物一権主義”と呼ばれている性質です。物の何が一個かは難しい時もありますが、土地は1筆、建物は1棟ですね。

物権にはいくつかの性質や効力があります。どの物権にも認められている性質・効力としては、優先的効力と物権的請求権があります。

優先的効力は、物権と物権、物権と債権の関係がありますが、物権と物権は先に対抗要件(登記や占有)を備えた物件が優先します。物権と債権では物件に優先的効力があります。特に担保物権と債権では債権よりも物権が優先されます。

物権的請求権は、物権が侵害された時に妨害を排除したり予防したりする権利です。妨害されていれば除けるように請求できますし、妨害されそうであれば予防するように請求できます。

このように物件は強力な権利です。直接的・排他的に物を支配できますし、債権にも優先します。ですから、物権は法定されているモノしか認められていないのです。

 

 

| まとめ

 

1 物権は所有権や抵当権のような権利!

2 物件は法定されたものだけ!

3 物件には強力な性質や効力があります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

民法ってどんな法律(意思表示編②)

| 嘘をついたり勘違いしたらどうなるの?

 

前回の記事で騙されたり脅されたりして締結した契約は取り消すことができると書きました。このような詐欺や強迫は瑕疵ある意思表示と呼ばれています。

今回は無効になるような意思表示について書きたいと思います。

1 (通謀)虚偽表示

契約をする当事者がグルになって架空の契約を結ぶ場合を“虚偽表示”と言います。“通謀虚偽表示”と言われることもあります。どんな場面でそのような架空の契約をするのかと言いますと、契約があると誰かに信じさせて騙そうとするときです。“借金のカタに土地を取られそうだから売買したことにして欲しい“というような場合ですね。

虚偽表示で締結した契約は無効です。ただし、善意の第三者には無効を対抗(主張)できません。第三者に過失があったり登記がなかったりしても対抗できません。第三者になる人は、たとえば虚偽表示の目的物を差し押さえた差押債権者です。単なる債権者は第三者に当たりません。

第三者が悪意の場合には無効を対抗できますが、悪意の第三者が善意の転得者に譲渡した場合には無効を対抗できません。善意の第三者は保護されるべきだと考えられているからです。では、善意の第三者が悪意の転得者に譲渡した場合はどうでしょうか。悪意の転得者は保護されるべきではないと思われますが、判例では善意の第三者が現れた後は転得者が悪意でも無効を主張できないとされました。法律関係をややこしくしないためです。

2 心裡留保

心裡留保(しんりりゅうほ)って聞きなれない言葉ですね。法以外で使われる場面ってあるのでしょうか。心裡留保は嘘や冗談で契約を締結した場合です。よく使われる表現では“真意と異なる意思表示”というものがあります。

心裡留保の意思表示は原則有効です。相手の言ったことが本気か冗談かは簡単には分かりません。ですので、契約の相手を保護する必要があるからです。

嘘や冗談で言ったことを相手が知っていた場合や知ることができた場合には、相手を保護する必要がありませんので無効です。

3 錯誤

勘違いや無知によって間違えて契約をした場合を“錯誤”と言います。1000ドルと1000元を同じ価値だと勘違いして1000元で売るという契約をした場合、大阪の土地を売るつもりだった売主が間違えて東京の土地を売ってしまった場合などがあります。

錯誤による意思表示は無効です。ただし、2つの条件があります。

(1)要素の錯誤があること

要素の錯誤は契約の重要な部分に関する錯誤です。先の例でいえば価格や所在ですね。これらは契約の重要な部分です。金額や住所の間違いは要素の錯誤になりえます。

(2)表意者に重大な過失がないこと

表意者というのは表現をした人です。先の例でいえば売主です。間違えたことについて重大な過失があると錯誤による無効を主張できません。

錯誤無効主張できる人は原則として表意者だけです。ただし、表意者が錯誤を認めている場合には表意者の債権者も無効を主張できます。

実はもともと無効は誰でも主張できるものなのです。ところが錯誤無効は間違えた表意者を保護する制度ですから、原則として表意者だけしか主張できないようにされたのです。

錯誤ではこんな場面もあります。近くに駅ができるから土地の値段が上がるだろうと思って土地を購入する場合です。本当に駅ができるのなら問題ありませんが、駅ができるという情報が嘘だった場合には、勘違いがもとで土地を購入したことになります。このような場合は原則として錯誤無効の主張はできません。ただし、判例では、動機が相手に表示されていれば要素の錯誤になって無効主張ができるとされています。

 

 

| まとめ

 

1 無効になる意思表示は3つ!

2 嘘をついても契約は有効!

3 勘違いした場合は契約は無効!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

民法ってどんな法律?(意思表示編①)

前回のブログで民法の基本理念について書きました。今回はもう少し法律らしいことを書きたいと思います。

 

 

| 契約ってなに?

 

契約は契約書がなくても成立します。売買契約を例にしますと、「アンパンをください」というお客さんと「はい、108円です」という店員の会話でアンパンの売買契約が成立します。あとはお金を渡してアンパンを受け取るだけです。簡単に言えば、意思(表示)が一致すると契約は成立します。

余談の豆知識ですが、法律では“意思”という漢字を使い“意志”は使いません。

誰とどのような契約をするかは自由(契約自由の原則)ですが、いったん契約をしたら守らなければいけません。契約を守らないと責任を追及されます。

 

 

| 意思(表示)ってなに?

 

先ほどさらっと“意思(表示)”と書きましたが、意思表示を簡単に説明するのは私には無理です。“〇〇と言ったら××という結果になるけど、××という結果に責任を持てるから◯◯と言った”というものが意思表示です。

ただ、責任を持てない場面もあります。たとえば騙されて契約したとか脅されて契約したとかですね。このような場合の処理の仕方は民法に書かれています。

1 詐欺の場合

騙されて意思表示をした場合を“詐欺”といいます。そんなことはいちいち言われなくても分かってますよね。詐欺によって意思表示をした場合には原則として取り消すことができます。例外は善意の第三者の権利を害する場合です。

またさらっと“善意”と書きましたが、法律上の“善意”は“知らなかった”ということです。逆に“悪意”は“知っていた”ということです。善意の第三者というのは、騙されて契約したことを知らなかった第三者です。

第三者による詐欺というパターンもあります。第三者が騙していた場合は相手方が悪意の場合のみ取り消すことができます。

2 強迫の場合

脅されて意思表示をした場合を“強迫”といいます。民法では“強迫”という漢字を使い“脅迫”は使いません。刑法では“脅迫”ですね。

強迫による意思表示は取り消すことができます。例外はありません。善意の第三者にも意思表示の取り消しを主張できます。

詐欺の場合は善意の第三者には主張できなかったけれど、強迫の場合には善意の第三者にも主張できるのはなぜでしょうか?騙された場合は騙された人にも一定の責任がありますが、脅された場合は脅された人に責任は全くありません。ですから、強迫の場合には善意の第三者にも主張できるのです。

ちなみに、〇〇に××を主張できる場合を“対抗できる”と言います。対抗関係にあるのは“食うか食われるか”という関係にある場合です。相手の権利が認められると自分は権利がなくなるという場合ですね。“強迫の場合には善意の第三者にも対抗できる”という言い方をします。

 

今回は詐欺と強迫で終わります。意思表示には他に(通謀)虚偽表示、心裡留保、錯誤の規定がありますが、次回以降に持ち越したいと思います。

 

 

| まとめ

 

1 契約は口約束でもOK!

2 騙された場合は契約を取り消すことができます!

3 脅された場合も契約を取り消すことができます!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

民法ってどんな法律?

| 民法の中身は多種多様

 

2020年6月までに改正された民法が施行されます。120年ぶりの大改正として一時ニュースにも取り上げられていました。民法改正って言われても法学部の学生や資格試験などで民法を勉強した人以外はよく分かりませんよね?今の民法の基本的な考え方などを書きたいと思います。

民法と一口に言っても、中身は多種多様です。所有権に関するものや契約に関するもの、近隣のトラブル解消法、相続など日常的な事柄の根本的なルールを定めています。簡単に言いますと、契約ごとや事故などの責任について定められたルールですね。

 

 

| 民法の背骨は私的自治

 

民法の基本的な理念は私的自治です。人同士が話し合って自分たちでルールを決めるというものです。ここでは、対等で平等で合理的な選択をする人が念頭に置かれています。このような人は自分に一方的に不利なルールを納得できないので、対案として自分にとって有利な提案をするはずです。そこで折り合いをつけるために話し合って双方が納得できる条件で合意がされることが前提なのです。

私的自治はもう少し具体的に定められています。所有権絶対の原則、契約自由の原則、過失責任の原則の3つです。

所有権絶対の原則は、自分が所有する物は誰にも奪われないし、自分の好きに使ったり処分したりすることができるルールです。現代では当たり前ですが、身分制度のある時代や地域ではとても大切なルールでした。

契約自由の原則は、契約をするかしないか、誰と契約するか、どのような内容で契約するか、どのような様式で契約するかを自由にできるルールです。様式というのは契約書を作るか口頭だけですませるかなどの方法です。

過失責任の原則は、故意や過失があれば責任を取らなければいけないというルールです。交通事故を思い浮かべられるとイメージしやすいかと思います。このルールは契約を守らなかった場合にも適用されます。

 

 

| 民法の運用方法のルール

 

民法自体のルールとは別に、ルールを運用する方法にもルールがあります。ややこしいですね。権利の行使の限界といってもいいかもしれません。信義誠実の原則と権利の濫用です。

信義誠実の原則は、取引関係になった人はお互いに相手の信頼を裏切らないように誠実に行動しなければいけないというルールです。かなりおおざっぱなルールですが、たまに問題になったりします。

権利の濫用は、一見正当な権利の行使でも実質的には社会性に反する場合には権利行使を認めないルールです。こちらもかなりおおざっぱなルールです。

信義誠実の原則も権利の濫用も相手方の信頼を裏切るような行動はダメだというもので、あまり厳密に区別をされないようです。傾向としては、契約に関しては信義誠実の原則、所有権や担保権、親族間については権利の濫用が使われるといわれています。もちろん両方を使った裁判例もあります。

 

 

| まとめ

 

1 改正民法がもうすぐ施行!

2 民法の大原則は私的自治!

3 権利の行使にもルールがあります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ
Translate »