相続法の改正で何が変わる?

| 大きな改正は2~3か所

 

この記事の題名に相続法と書きましたが、主に民法の相続のところです。第1篇から順に総則、物権、債権、親族ときて相続が第5編になります。この相続部分と関連法の改正が2018年にありまして、法律の施行が2019年1月から順次行われることになりました。

改正で何が変わったのでしょうか?法務省のサイトで改正点をざっと眺めてみますと細かいところが多いように思います。私が個人的に大きな改正点だと思うところは2~3点だけでした。

 

 

| 配偶者居住権の新設

 

被相続人が亡くなって相続が開始すると、今まで住んでいた土地や建物も相続の対象になる場合が多いです。そうすると相続財産は相続人で共有しますから、勝手に住むわけにはいきません。家賃相当額の使用料を支払わないといけない場合もあります。亡くなった方の配偶者の方が住んでいると面倒くさいことになります。

そこで、配偶者居住権という権利を作って、配偶者は終身または一定期間無償で住めるようになります。もちろん条件はあります。具体的には、相続人が遺産分割をする場合に配偶者が配偶者居住権を取得して、配偶者以外の相続人は負担付所有権を取得するという制度です。

この制度のいいところは、今まで老夫婦で暮らしてきた家にそのまま住めるだけでなく、制限のある居住権を取得することで土地や建物の評価額が低くなって預貯金などの現金をより多く相続できるようになったことです。老後の不安も減って安心して暮らせるようになりました。

 

 

| 自筆証書遺言について

 

遺言の作成の多くは自筆証書遺言か公正証書遺言だと思います。自筆証書遺言は安価に作成できる反面、厳格なルールに違反すると無効になってしまいます。反対に公正証書遺言はお金がかかる代わりに間違いのない遺言を作ることができます。

自筆証書遺言では全て自筆で書く必要がありましたが、今回の改正で財産目録はパソコンで作成することができるようになりました。さらに通帳のコピーもOKです。

さらに、自筆証書遺言は紛失や改ざんなどが怖かったのですが、法務局での保管が可能になります。特に、同居していた相続人と遠隔地に別居していた相続人との間で書き換えや誘導があったような争いや禍根を残すこともありました。そのようなことがないように、第三者である法務局で自筆証書遺言を保管する制度が作られます。

 

 

| その他の改正点

 

その他の改正点としてまして、遺産の分割前に被相続人の預貯金が一部払い戻し(金融機関ごとに上限150万円)できるようになったり、被相続人の介護などをした相続人ではない親族にも金銭の請求ができるようになったり、配偶者に短期の居住権を付与することができるようになったり、20年以上の夫婦間限定で自宅の生前贈与が遺産の先渡しにならないように扱うことができるようになったりと色々あります。

施行日は内容によって様々です。自筆証書遺言の財産目録については2019年1月13日に施行されました。多くは2019年7月13日までに施行される予定ですが、配偶者居住権や遺言の補完制度については2020年7月13日までに施行されることになっています。施行日が決まると法務省のサイトに載せられますので、気になる方は覗いてみてはいかがでしょうか。

 

 

| まとめ

 

1 改正相続法の施行がスタート!

2 配偶者居住権を新設!

3 自筆証書遺言の財産目録がPCで作成可能に!



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自分で遺言を書くのは難しい?(内容編)

| 遺言書を作るときの注意点

 

以前に“自分で遺言を書くのは難しい?”という記事で、プロでも完璧な遺言を作るのは難しいしルールに違反すると無効になってしまうことを書きました。

今回は遺言の全部が無効にはならないけれど意味のない記述や無駄な内容にならないようにするためのポイントを、内容編として書きたいと思います。

1 法定相続人を調べる

法定相続人は、自分が亡くなった後に財産を相続する人(相続人)として法律に書かれている人のことです。配偶者やお子さんが多いでしょうか。中には親御さんやご兄弟の場合もあります。法定相続人が誰なのかについては“相続人って誰?”をご参照ください。誰が法定相続人なのかを間違ってしまうと、遺言が台無しになってしまう可能性もあります。そうならないためにも、遺言者の出生までさかのぼる戸籍を本籍地の市役所で取得して調べます。

2 財産を調べる

預貯金の金額やご自宅の評価額をきちんと把握されていますか?遺言書を書いた時と相続の時では金額が大きく違うということもあり得ます。また、どんなに価値のないものだと思っていてもできるだけ具体的に書き出しておくことをお勧めします。ただ、面倒くさいのは確かですから、遺言書には“そのほかの財産は〇〇に相続させる”との一文を付け加えておくとよいでしょう。借金のことも書いてください。

3 財産を特定して書く

預貯金やご自宅はおおよそのことを書いておけば分かるだろうというのはやめましょう。預金でしたら“◯◯銀行△△支店の遺言者名義の預金債権のすべて”のように書きます。金額は変動しますので書きません。ご自宅ならば“大阪府〇〇市△△町×番□号の土地と建物”のように書きます。できましたら登記簿謄本の表示通りに地番で書くと完璧です。

4 遺留分・寄与分・特別受益・代襲相続に注意する

遺留分を侵害しているときは減殺請求されることを念頭に対策をたてましょう。寄与分や特別受益がある場合、代襲相続である場合には遺産の配分などに配慮しておくと、遺産相続が“争族”になりにくいです。

5 相続人が先に亡くなる可能性

遺言者よりも相続人が先に亡くなることもあり得ます。死亡した人への遺言は無効ですので、無効になった部分は相続人全員での話し合いが必要になります。かなり時間と手間がかかります。ですので“相続人◯◯が遺言者よりも先に死亡した場合は相続人◯◯への相続財産を××に相続させる”旨を記載しておくと安心です。

6 遺言執行者の指定

遺言の執行をする人を指定しておくと、銀行口座の手続がスムーズに行えます。もちろん相続人が1人の場合には必要ありません。ただし、相続人以外の人に遺贈する場合や遺言で認知や廃除などをする場合には遺言執行者を指定しておきましょう。

7 付言を書いておく

遺言者の気持ちを書いておきます。そうすることで遺言が不自然だ、偽物だなどという相続人の疑念やトラブルを回避できます。特に法定相続分と異なる取り決めをするときにはその理由や事情をきちんと説明しておくとよいでしょう。

8 “相続”と“遺贈”を使い分ける

“相続”は法定相続人に遺産を譲る場合に使用し、“遺贈”は法定相続人以外の人に遺産を譲る場合に使用します。書き方としては“妻 ◯山×子(昭和10年1月1日生)に相続させる”とか“家政婦△川□美(昭和25年10月10日生)に遺贈する”のように、続柄や生年月日も添えて書いておくと安心です。

 

 

| まとめ

 

1 法定相続人や財産をしっかりと調べましょう!

2 財産や相続人はしっかりと特定できるように!

3 付言で相続分の理由や事情を書きましょう!



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自分で遺言を書くのは難しい?

| 遺言書の作成は専門家でも難しい

 

遺言書の作成は専門家でも完璧なものを作るのは難しいです。もちろん専門家が作った遺言書が無効になるということはありませんが、余分な記述や無駄な記述があったりするものです。

完璧な遺言書の作成が難しいのにはいくつか理由があります。まず、そもそも遺言者が自分自身の中で気持ちの整理ができていないことがあります。家族の関係がこじれてしまうと今のうちに遺言書を作っておこうと思われる方もいらっしゃるでしょう。ところが、諦めてしまうのではなく家族関係を少しでも良くしたいと思われるならば、状況によっては遺言内容が変わってきてしまいます。気持ちの整理をきちんとつけてから遺言書を作ることをおすすめします。

また、預金・現金の額や不動産の評価額が変わってしまうことはよくあります。数年もたてば考えていた金額と違っているということも少なくありません。大きく変わってしまうと遺言を作り直す必要が出てきます。

このように、遺言書を作成しても気持ちや相続財産の額が変わってしまうことがよくあり、完璧な遺言書を作ることは難しいのです。

 

 

| 遺言書を作るときの注意点(形式面)

 

遺言書を作るときにはいくつかの注意点があります。遺言書は厳格に要式が決められた法律文書ですから少しの不備でも無効になってしまいます。ここでは無効にならないための確認ポイントを挙げたいと思います。

1 全文を自筆すること

遺言の内容全文だけでなく、日付や氏名も自筆でなければいけません。今のご時世ではパソコンで書きたくもなりますがダメです。録音やビデオレターもダメです。代筆はもちろん無効です。

2 筆記具

鉛筆や消えるボールペンはダメです。消せない普通のボールペンや万年筆などを使ってください。

3 用紙

種類やサイズに決まりはありませんが、感熱紙などの保存に耐えない用紙は使わない方がいいでしょう。遺言を実行するときに文字がほとんど読めなかった…では遺言の意味がありませんものね。

4 日付の書き方

日付は正確に書いてください。平成31年3月31日や2019年3月31日のように書く必要があります。平成31年3月吉日はダメです。

5 氏名

本名を書いてください。本名でなくてもいいのですが、ペンネームや芸名などの場合には本人であることを特定できなければいけませんので、本名を書くことをお勧めします。また、夫婦で連名の共同遺言は無効です。

6 押印

押印は実印でなくても認印でもOKです。

7 契印

遺言書が2枚以上になるときにはページ番号をつけて契印しておくとよいでしょう。

8 封印

遺言書を封筒に入れて封印します。遺言書であることが分かるように封筒の表に「遺言書」と書いておくとよいでしょう。封印は封筒の紙の境目に押します。

 

 

| まとめ

 

1 プロでも完璧な遺言書は難しい!

2 遺言書の書き方には厳しいルールがあります!

3 ルール違反では無効になるので注意!



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