法律用語の基礎知識 その①

| 法律の文章は分かりにくい

 

必要に駆られて法律の条文を読んだり判例を読んだりしたことはありませんか?法律の文章はとても分かりにくいです。正確に伝えるためにより回りくどく冗長な文章になっています。最近の新しめの法律は、第1条に目的、第2条に用語の定義が書かれていて少しは読みやすくなっていますが、いかんせん基礎知識がない我々には難解この上ありません。

そこで今回は、法律での言葉の使い方や法律用語について書きたいと思います。とはいっても、全ての法律を網羅することは到底不可能ですから、一般的なことや民法に関することを少しだけ忘備録として書きたいと思います。

 

 

| “又は”と“若しくは”

 

日常会話では“又は”も“若しくは”も同じように使っています。どちらかを選択するときに使われますね。「牛または馬」と言ったり「牛若しくは馬」と言ったりした場合、どちらも「牛か馬のどちらか」という意味は変わりません。

ところが法律では少しややこしくなります。まずは基本から。たとえば「牛か馬か豚」という場合には“牛又は馬又は豚”というように書かれています。では、“若しくは”はいつ使うのでしょうか。

大きな括りは“又は”、小さな括りは“若しくは”を使います。たとえば、「弁護士、司法書士若しくは行政書士、又は建設業若しくは宅地建物取引業の代表者」と言った場合、大きな括りとして“弁護士、司法書士、行政書士”のグループと“建設業の代表者、宅地建物取引業の代表者”というグループに分けられます。その中で、それぞれ“弁護士”“司法書士”“行政書士”に、“建設業の代表者”“宅地建物取引業の代表者”に分けられます。

“及び”“並びに”も同じように使われます。“並びに”が大きな括りで、“及び”は小さな括りです。たとえば「弁護士、司法書士及び行政書士及びその補助者並びに建設業及び宅地建物取引業の代表者及び従業員」といった具合です。

 

 

| “直ちに”と“速やかに”と“遅滞なく”

 

法律で届出をしないといけない場合、“速やかに届け出なければならない”とか“遅滞なく届け出なければならない”と書かれていることがあります。7日以内とか14日以内とかはっきりと書かれていればいいのですが、“速やかに”とか“遅滞なく”と言われても漠然としていてよく分かりません。日常生活でもあまり区別をしていないかもしれません。

実はこの区別について裁判例があるのです。“直ちに”が最も即時性が強く、次に“速やかに”、最後に“遅滞なく”になるそうです。“遅滞なく”の場合には正当な理由や合理的な理由があって遅滞した場合には許されると考えられているようです。

イメージとしては“直ちに”は“すぐ”、“速やかに”は“急いで”、“遅滞なく”は“なるべく早く”くらいでしょうか。よく分かりませんが…。

 

 

| まとめ

 

1 法律の文章は分かりにくい!

2 原因は言葉の使い方!?

3 “又は”や“並びに”は大きな括り!



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民法ってどんな法律?(債務不履行編②)

前回の“民法ってどんな法律?(債務不履行編①)で書きましたが、契約を守らないと損害賠償や解除をされてしまいます。今回は契約の解除と危険負担について書きたいと思います。

 

| 契約の解除

 

解除は、一方的な意思表示で契約が最初からなかったことにすることです。契約が最初からなかったことになりますから、当事者はお互いに原状回復をする義務があります。元の状態に戻すということですね。受け取ったものは返しますし、加工していれば元の状態に戻ります。原状回復に費用がかかったとしても当人が負担します。ただし、費用は解除とは別に損害として賠償を請求される可能性があります。お金を返す場合は利息も必要です。

解除権は、債務不履行など法律の規定によって発生する場合、解約手付があったときなど契約によって発生する場合があります。

また、債務不履行の種類によっても変わりますので、分けて書きたいと思います。

1 履行遅滞のとき

履行遅滞のときは、債務が弁済できる程度の相当の期間を定めて弁済をするように催告します。たとえば、2019年5月15日までに支払いをするというように期限を定めます。その間に弁済がない場合に初めて解除することができます。

2 履行不能のとき

履行不能のときは、弁済を催告してもどうせ弁済できないのですから、いきなり解除をすることができます。

一度、解除権を行使するとあとから“やっぱりやめた”と撤回することはできません。

 

 

| 危険負担ってなに?

 

債務不履行になるのは債務者に故意や過失がある場合です。売った住宅をわざと引き渡さないとか引き渡したいけれど修理が間に合わないから引き渡せないといった場合ですね。

これとは違って、危険負担は誰にも故意や過失がない場合です。たとえば、建物の売買契約をした後に落雷によって建物が燃えてしまってなくなってしまった場合です。このような場合は誰が建物を引き渡せなくなった責任を取るのでしょうか?

民法ではいろいろと場合分けをして定めています。原則は、債権者主義と言われるものです。たとえば、建物の売買契約が落雷で燃えてしまった先ほどの例では、買主は代金を支払わなければいけません。

この危険負担は、中古住宅の売買のように特定の物権に関するものでお互いに義務を負っている場合に該当します。

では、賃貸借契約のように物権に関係ないものの場合には、債務者主義を適用します。たとえば、借りていたアパートが燃えてしまった場合には、大家さんは建物を貸せなくなった反面、家賃を徴収することができません。大家さんは建物を貸す義務がありますので、ここでは債務者になるのです。

その他の例外では、停止条件が付いている契約の場合です。たとえば、転勤が決まったら中古住宅を売るといった場合ですね。転勤がまだ決まらない間に落雷によって家が燃えてしまった場合には、転勤が決まっても売買代金を受け取ることはできません。ところが、落雷によって家が少し壊れただけの場合には、転勤が決まったら壊れた建物を引き渡すと売買代金を全額貰うことができます。

また、債権者が契約の目的物を壊してしまったような場合には、債権者主義になります。たとえば、中古住宅の売買で買主が家の様子を見に来た時に買主の吸っていたタバコの火の不始末で家が燃えてしまった場合、債権者は建物の代金を支払わなければいけません。ただし、売主が手に入れた利益(売買代金など)は、公平の観点から買主に変換しなければいけないことになっています。

 

 

| まとめ

 

1 履行不能で解除する場合は催告が不要!

2 だれの責任でもない場合は危険負担の問題!

3 危険負担には債権者主義と債務者主義があります!



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民法ってどんな法律?(債務不履行編①)

| 契約を守らないとどうなる?

 

契約は約束です。守らないといけません。しかし、いつでも契約が守られるとは限りません。約束を破ってしまうと相応のペナルティが課せられます。特に、わざと約束を守らなかったり(故意)、自分の過失で約束が守れなかったり(有過失)すると、損害を賠償する責任を負ったり契約を解除されることがあります。

故意や有過失でない場合には“危険負担”という制度を使って解決します。今回は、約束を守らなかった場合について書きたいと思います。

 

 

| 債務不履行の種類

 

債務不履行は、正当な理由がないのに約束を守らなかったことです。“正当な理由がないのに”というのは、故意・過失があった場合のことです。

債務不履行には次の3つがあります。

1 履行遅滞

2 履行不能

3 不完全履行

これらの場合を一つずつ書いていきます。

 

 

| 履行遅滞

 

履行遅滞は、債務の弁済ができるのに約束の期日を過ぎても弁済しない場合です。たとえば、中古住宅を購入したのに売主が約束の期日になっても住宅を引き渡さない場合です。

このような場合には、引渡が遅れたことによる損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたり、強制的に引渡をさせたりすることができます。

 

 

| 履行不能

 

履行不能は、約束の期日に関係なく債務の弁済ができなくなった場合です。たとえば、中古住宅の売買契約をしたのに、土地や建物の引渡の前に売主の火の不始末で建物が燃えてなくなってしまい、建物の引渡ができなくなった場合です。

このような場合には、損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたりすることができます。

 

 

| 不完全履行

 

不完全履行は、債務の弁済として一応は行われたけれど不完全だった場合です。たとえば、物件の調査の依頼を受けた調査会社が調査をして報告書を提出したけれど、とてもずさんな報告だった場合です。

このような場合には、債務者が改めて完全な履行をすることができる場合には、完全な履行を請求したり期日に遅れたことによる損害の賠償を請求したりできます。債務者が完全な履行をすることができない場合には、損害の賠償を請求することができます。

 

 

| 損害賠償の特則

 

損害賠償をする場合には、例外的に守らないといけないルールがあります。

1 損害賠償額の予定

家を買ったときには違約金の定めが契約書に書かれています。たとえば、暴力団員などの場合には違約金を物件代金の80%を支払うといったようなものです。民法では違約金の定めを損害賠償額の予定と推定することになっています。損害賠償額の予定は、あらかじめ債務不履行の場合に損害を賠償する金額を決めておくことです。

2 金銭債務の特則

代金の支払債務や賃料の支払債務は金銭債務と言います。金銭債務は履行不能になりません。いくらお金がなくて支払えなくても世の中のお金がすべてなくなったわけではありませんから、単に期日までにお金を用意できなかっただけです。このような場合には履行遅滞になります。

また、お金を支払えない原因が天変地異などの不可抗力であっても損害賠償をしなければいけません。支払えないことに故意や過失は必要ないのです。単に支払えないというだけで履行遅滞になります。

また、賠償金額は原則として法定利率とされています。一般消費者であれば5%、業者であれば6%の利率で支払わなければいけません。これよりも高い約束があればそれに従います。

3 過失相殺

債務不履行について、債務者だけでなく債権者にも過失がある場合には損害賠償の責任や金額を決めるときに裁判所が必ず考慮することになっています。

 

 

| まとめ

 

 

1 約束を守らないと債務不履行になります!

2 債務不履行の責任は損害賠償責任と解除!

3 損害の賠償には特別なルールがあります!



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民法ってどんな法律?(物権編④)

| 担保物権ってなに?

 

担保物権は、弁済を確保するために他人のものの担保としての価値を利用する権利です。たとえば、弁済をするまで返さないとしたり、弁済ができなくなったら売却して代金から弁済を受けたりする権利です。担保物権には、留置権、質権、先取特権、抵当権の4つがあります。

担保物権には、次の4つの性質があると言われています。

1 付従性

債権がなければ担保物権もなく、債権が消えれば担保物権も消える性質です。

2 随伴性

債権が譲渡されると、担保物権も一緒に移転する性質です。

3 不可分性

全部が弁済されるまで、目的物全部に対して担保物権を行使することができる性質です。

4 物上代位性

目的物を売ったり貸したりしたときにその代金から弁済を受けることができる性質です。ただし、留置権にはこの性質がありません。

 

 

| 質権

 

質権は、担保として受け取ったものを債務が弁済されるまで手元に置いておく権利です。イメージとしては、質屋にモノを預ける代わりにお金を借りるというものですね。お金を返すまで預けたモノは戻ってきません。

質権を設定するには、契約のときにモノ(質物)を渡さなければいけません。不動産も質入れすることができますし、権利も質入れすることができます。

 

 

| 留置権

 

留置権は、モノについて生じた請求権を弁済してもらうまでそのモノを手元に置いておく権利です。たとえば、建物の賃借人が賃借中に建物の壁を必要に迫られて修繕した場合、本来大家が負担する修繕費の返済を受けるまでは部屋の引き渡しを拒むことができます。

留置権は法律上当然に発生する権利ですので、契約は必要ありません。

 

 

| 先取特権

 

先取特権は、特定の債権を持つ人が債務者の一定の財産から優先的に弁済を受ける権利です。法律上当然に発生する権利です。

先取特権には、一般の先取特権、動産の先取特権、不動産の先取特権の3つがあります。さらに不動産の先取特権には、不動産保存の先取特権、不動産工事の先取特権、不動産売買の先取特権の3つがあります。

とくに不動産工事の先取特権は、工事の代金を支払わないときに工事業者に認められる権利です。工事をした不動産を売却したり賃貸したりしたときには、先取特権を有する工事業者がその代金や家賃から工事代金を受け取ることができます。ただし、工事の前に予算額を登記していなければいけませんので、かなりハードルが高いです。

 

 

| 抵当権

 

抵当権は、目的物を取り上げずに使用させ続けてる担保物権です。住宅ローンをイメージされるとOKです。返済が滞ると抵当権を実行されて競売にかけられ、土地や建物を手放すことになります。

抵当権の設定は契約によって行われます。また、債務者の代わりにモノだけを抵当に入れる物上保証人もいます。いくつかの不動産をまとめて抵当に入れることもできます。

実は、抵当権に対抗できる権利があります。それが法定地上権です。前回の地上権のところで少し書きましたね。競売にかけられた場合に、法定地上権が成立すると建物を取り壊して立ち退く必要がなくなります。ただし、所有者ではなくなりますから地代や家賃を支払わなければいけません。

賃貸人がいる場合に競売にかけられると、抵当権の登記より後に入居した賃貸人は立ち退かなければいけません。すべての抵当権者が同意した場合で同意の登記がされていれば立ち退かなくてもいいのですが、このような場面はないと言ってもいいと思います。

抵当権と似ている権利に根抵当権があります。根抵当権は、事業の融資などに使われるもので極度額まで何度でも借りられる特殊な抵当権です。

 

 

| まとめ

 

1 担保物権には4つの性質があります!

2 質権や抵当権は身近にイメージできるかも!?

3 留置権には優先弁済的効力がないのでご注意!



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行政書士の需要が多い仕事は?

| 行政書士のニーズはどこ?

 

法律系の士業では、弁護士や行政書士の業務範囲はあいまいです。行政書士は業務で作成できる書類が数えきれないほどありますし、許認可から遺言・相続まで多種多様です。

これらの中で仕事の数が多いと言われているものをピックアップしてみましょう。

1 建設業、産廃業

行政書士の中では代表的な業務ですね。需要が多いですが、専門にしている行政書士も多いのが現状です。競争がかなり熾烈だと言われています。

2 運輸業、交通関係

車庫証明はかなり数が多いと思います。数千円から1万円くらいの価格帯が多いようです。道路使用許可や道路占有許可など警察関係が多いですね。

3 風俗営業関係

飲食店の営業許可やバーなどの夜間に酒類を提供する飲食店の許可などです。こちらも警察関係が多いですね。

4 会社設立関係

法人の設立手続や定款の作成をします。業務の難易度自体はそれほど高くありませんが、電子定款の準備などが必要になります。

5 法務、会計

会計帳簿への記帳や議事録の作成などです。簿記の知識が必要であったり会社法の知識が必要であったりします。知識や経験があれば参入しやすい分野です。

6 外国人関係

ビザの申請や帰化申請などの業務です。行政書士の誰もができるのではなく、入国管理局に申請取次の登録をしている行政書士のみができる仕事です。

7 相続、遺言、任意後見

遺言書の案を作成したり遺産分割協議書を作成したりします。相談業務も多い分野です。高齢社会で潜在的な需要はかなり多いと思いますが、なかなか専門的に特化して他者と差別我をするのが難しい分野でもあります。

 

 

| まとめ

 

1 建設業や運輸業の許認可の需要あり!

2 法人関係は許認可にもつながる!?

3 相続関係は他者との差別化が困難!?



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