法律用語の基礎知識 その③

前回は途中で終わってしまいましたので、今回は前回の続きである“意思表示”や“意思の通知”などの違いについて書きます。

 

| “意思表示” “意思の通知” “観念の通知”

 

“イシ”という漢字はいくつもありますが、民法では“意思”が使われ“意志”は使いません。理由は全く知りませんので、ご存知の方がいらっしゃいましたらそっと教えてください。

1 意思表示

意思表示は、法律上の効果を期待して欲する意思を外に公表することです。たとえば、“アンパンが欲しい、食べたい、買いたい”と思ったときに、パン屋へ行って“アンパンをください”と言うことです。

この場合の法律上の効果は、アンパンの所有権がパン屋から自分に移転することです。“アンパンをください”と言って“はい、120円ね”と言われた時点でアンパンの所有権はパン屋から自分へ移転しています。パンを手にして食べるためには120円を支払わないといけませんが、それはまた別の話です。

意思表示にはこのような契約の申し込み以外にも、追認や取消、遺言などがあります。

2 意思の通知

意思の通知は、法律上の効果を目的としていない意思の公表です。法律効果を目的としたものが意思表示で、法律効果を目的としていないものが意思の通知です。

法律上の効果を目的にしていないとはいっても、意思の通知をすると法律が勝手に法律の効果をつけます。意思の公表をする人の目的が法律上の効果ではないというだけなのです。たとえば、催告ですね。契約を解除するときには原則的に催告をします。催告は期日までに支払いがないけれども、○月×日までに代金1000円を支払ってねというものです。期日を過ぎた場合の再度の請求のようなものですね。

この請求の目的は1000円を払ってもらうことであって、解除ではありません。しかし、法律は勝手に、催告をしても○月×日までに1000円を支払わなければ契約の解除ができるという効果を与えます。本人が意図していないのに…です。解除をするために催告をすることも多いんですけどね。

3 観念の通知

観念の通知は事実の通知です。意思の公表ではありません。事実の通知ですから、そこに意思はないのです。

たとえば、債務の承認や債権譲渡の通知があります。100万円の借金があることを認めることは債務の承認になります。債務を承認すると時効が中断しますので、観念の通知に法律上の効果が付くことになりますが、時効の中断を目的としていませんしそもそも意思ではありません。

また、債権譲渡の通知は債権者が変わったことを知らせるものです。たとえば、大家が変わったので次回の家賃の振込先は××銀行○○支店の△△さんの口座によろしくねというような通知です。これに通知によって新しい所有者は店子へ家賃の請求ができるようになりますが、債権譲渡の通知は新所有者が家賃の請求をするためにするものではありませんしそもそも意思ではありません。

 

意思表示と意思の通知と観念の通知は似たような概念ですが、すこしずつ違いがあります。この行為は意思表示かな?意思の通知かな?観念の通知かな?と考えるようにすると、違いはそのうちに知らず知らず身に着いたりするものです。一度で理解できる秀才は別ですけどね。

 

 

| まとめ

 

1 意思表示は法律上の効果を目的とします!

2 意思の通知は法律上の効果を目的としません!

3 観念の通知は事実の通知で意思はありません!



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法律用語の基礎知識 その①

| 法律の文章は分かりにくい

 

必要に駆られて法律の条文を読んだり判例を読んだりしたことはありませんか?法律の文章はとても分かりにくいです。正確に伝えるためにより回りくどく冗長な文章になっています。最近の新しめの法律は、第1条に目的、第2条に用語の定義が書かれていて少しは読みやすくなっていますが、いかんせん基礎知識がない我々には難解この上ありません。

そこで今回は、法律での言葉の使い方や法律用語について書きたいと思います。とはいっても、全ての法律を網羅することは到底不可能ですから、一般的なことや民法に関することを少しだけ忘備録として書きたいと思います。

 

 

| “又は”と“若しくは”

 

日常会話では“又は”も“若しくは”も同じように使っています。どちらかを選択するときに使われますね。「牛または馬」と言ったり「牛若しくは馬」と言ったりした場合、どちらも「牛か馬のどちらか」という意味は変わりません。

ところが法律では少しややこしくなります。まずは基本から。たとえば「牛か馬か豚」という場合には“牛又は馬又は豚”というように書かれています。では、“若しくは”はいつ使うのでしょうか。

大きな括りは“又は”、小さな括りは“若しくは”を使います。たとえば、「弁護士、司法書士若しくは行政書士、又は建設業若しくは宅地建物取引業の代表者」と言った場合、大きな括りとして“弁護士、司法書士、行政書士”のグループと“建設業の代表者、宅地建物取引業の代表者”というグループに分けられます。その中で、それぞれ“弁護士”“司法書士”“行政書士”に、“建設業の代表者”“宅地建物取引業の代表者”に分けられます。

“及び”“並びに”も同じように使われます。“並びに”が大きな括りで、“及び”は小さな括りです。たとえば「弁護士、司法書士及び行政書士及びその補助者並びに建設業及び宅地建物取引業の代表者及び従業員」といった具合です。

 

 

| “直ちに”と“速やかに”と“遅滞なく”

 

法律で届出をしないといけない場合、“速やかに届け出なければならない”とか“遅滞なく届け出なければならない”と書かれていることがあります。7日以内とか14日以内とかはっきりと書かれていればいいのですが、“速やかに”とか“遅滞なく”と言われても漠然としていてよく分かりません。日常生活でもあまり区別をしていないかもしれません。

実はこの区別について裁判例があるのです。“直ちに”が最も即時性が強く、次に“速やかに”、最後に“遅滞なく”になるそうです。“遅滞なく”の場合には正当な理由や合理的な理由があって遅滞した場合には許されると考えられているようです。

イメージとしては“直ちに”は“すぐ”、“速やかに”は“急いで”、“遅滞なく”は“なるべく早く”くらいでしょうか。よく分かりませんが…。

 

 

| まとめ

 

1 法律の文章は分かりにくい!

2 原因は言葉の使い方!?

3 “又は”や“並びに”は大きな括り!



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