2020年4月1日に民法が大きく改正されました。宅建士(宅地建物取引士)試験を受験しようと思っている方は、元々勉強がしづらい民法が改正されて不安に思われているのではないでしょうか。
今回から民法の改正されたところのうち、宅建士試験でよく問われるだろうと思われるところを、アシュラの独断と偏見で書きたいと思います。
| 民法の主な改正点
改正されたところは主に契約関係です。契約関係に限れば、主な改正箇所は次の9つです。
1 消滅時効
2 解除
3 危険負担
4 契約不適合責任
5 賃貸借契約
6 法定利率
7 保証
8 債権譲渡
9 約款
これらのうちで宅建士試験でよく出題されそうなところは、消滅時効、解除、危険負担、契約不適合責任、賃貸借契約、保証でしょうか。特に契約不適合責任は怖いですね。今回は、約款について書きたいと思います。
| 約款ってなに?
約款は、事業者が大量の取引を迅速・効率的に行うために画一的な取引条件を定めたものです。電気や入院保険の契約にも使われています。見たことがあるのではないでしょうか。
そもそも民法には約款に関する規定がありませんでした。民法の原則に従えば、契約が成立するには意思の合致が必要です。ところが、約款の内容をしっかりと読んでいる人は少ないと思います。消費者の知らない(読んでない)条項があっても約款の内容が契約内容になって拘束するのかが不明確でした。
また、民法の原則に従えば、契約内容を変更するには契約の相手方の承諾が必要です。しかし、約款で大量に取引をしている事業者からすると、約款を変更するたびに1人1人の承諾を得るのはほぼ不可能です。そのため約款には変更についての条項が設けられていることがありますが、この条項は有効なのかが分かりませんでした。
そこで、改正民法では定型約款について規定が設けられました。
| 定型約款のルール
定型約款によって定型的な取引を行った者は約款に記載されている個別の条項についても合意したものとみなされることになりました。
1 定型約款の要件
定型約款とされるための要件は4つあります。
(1) 特定の者と不特定の者との取引であること
(2) 内容の全部または一部が画一的であること
(3) 画一的な内容がいずれの当事者にとっても合理的であること
(4) 契約の内容とすることを目的として、特定の者によって準備されたものであること
定型的な取引でも提携約款にあたらないものもあります。たとえば、賃貸借契約や労働契約です。これらは相手方の個性に注目して締結される契約ですので、不特定の者との取引にあたりません。
2 契約内容になる要件
定型約款が契約内容とされるための要件は2つあります。いずれかの要件を満たせば提携約款の内容が契約内容になります。
(1)定型約款を契約内容とする合意があったこと
(2)予め相手方に定型約款を契約の内容にすることを表示していたこと
たとえば、電車に乗る場合の契約も約款の内容が契約内容になっています。
3 定型約款の不当条項
定型約款が取引相手に不当な条項を含んでいるときは、次の要件を満たす場合には契約内容となりません。
(1)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項
(2)信義則に反して相手方の利益を一方的に害する場合
これらは民法で定められる以前から消費者契約法に似たような規定がありました。それにしても“信義則”という伝家の宝刀を持ち出す必要があったのでしょうか。
4 定型約款の内容の表示請求
相手方から請求があった場合には、事業者は遅滞なく定型約款を開示する義務があります。ただし、開示請求の前に定型約款を記載した文書を交付している場合やWEB上で約款内容を提供した場合には、開示請求に対する開示義務はありません。
5 定型約款の変更要件
定型約款を変更する場合には、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
(1)変更が相手方の一般の利益に適合する場合
(2)変更が契約目的に反せず、変更の必要性・変更内容の相当性・変更する旨の規定の有無などの事情に照らして合理的である場合
6 定型約款の変更手続
定型約款を変更するには規定の手続きをとらなければいけません。
(1)約款の変更の効力発生時期を定める
(2)定型約款を変更すること、変更後の定型約款の内容・効力発生時期をインターネットなどの方法で周知する
| まとめ
1 定型約款の規定を新設!
2 定型約款の表示請求が可能!
3 定型約款の変更手続を明記!