内閣総理大臣は国務大臣を任免するだけでなく、内閣を代表したり法律などに署名をしたり国務大臣の訴追に同意したりする権限がありました。いくつかの条文に散らばって書かれていますので、内閣総理大臣の権限の条文を読んでまとめるのは面倒くさいです。
記事の中で条文を書いていますが、受験生には条文を一度は読んで欲しいを思っています。うっとうしいかもしれませんがお付き合いください。
本日は内閣の権能について書きたいと思います。
| 内閣の権能
内閣には憲法上いくつかの仕事があります。行政権はとてつもなく広範ですから、内閣の仕事もとてつもなく広いです。その中で主なものが憲法に書かれています。全部で7つあります。
1 法律の誠実な執行と国務の総理
内閣は国会で成立した法律を誠実に執行しなければいけません。たとえ違憲だと思っていたとしても、裁判所で違憲だと判示されるまではそのまま執行する義務があります。
2 外交関係の処理
条約締結の承認は国会にありますが、それ以外の外交関係の仕事は内閣が処理します。外務省が担当部署ですね。
3 条約の締結
外交関係の処理でも書きましたが、条約の承認は国会が行います。ただ、条約の締結は内閣の仕事です。
4 官吏に関する事務の掌理
官吏、つまり国家公務員の人事や事務処理を行います。報告を求めたり地方部局へ査察に行ったりします。
5 予算の作成と国会への提出
内閣は予算を作成して国会に提出する義務があります。予算の作成は財務省が担当していますね。国会に提出した後は国会で審議され議決されます。
6 政令の制定
行政機関は色々な命令を発布しますが、そのうち内閣が制定するものを政令と言います。証が制定するのは省令です。政令には、特に法律に委任がある場合を除いて、罰則を設けることができません。行政権には直接的な民主的コントロールが及んでいないからです。
7 恩赦の決定
恩赦の決定は内閣の権限です。ただし、天皇の認証が必要です。
憲法 73条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
憲法 7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
| 内閣の責任の取り方
内閣には上のような権能がありますが、責任の取り方も憲法に書かれています。内閣は行政権全般について責任を負い、国会に対して連帯して責任を負います。国会が内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が国務大臣を任免するのですから、国会に対して内閣が連帯して責任を負うのも当然です。
憲法 66条
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
具体的には、内閣は総辞職をして責任を取ります。内閣が総辞職するパターンは3つあります。
1 内閣不信任決議
衆議院で内閣不振に決議がされたときは、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職をしなければいけません。
2 内閣総理大臣の欠缺
内閣総理大臣が死亡したり辞職したりして欠けたときは、内閣は総辞職します。
3 衆議院議員選挙
衆議院議員選挙の後に初めて国会が収集されたときは、内閣は総辞職します。
内閣が総辞職した後次の内閣総理大臣が任命されるまでは、総辞職した内閣が引き続き職務を行います。
憲法 69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
憲法 70条
内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
憲法 71条
前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
| まとめ
1 内閣の権能は7つ!
2 内閣は行政権全般に責任を負います!
3 内閣の責任の取り方は総辞職!