行政書士試験の憲法(内閣4)

前回、前々回で内閣総理大臣と内閣の権限について書きました。行政権の基本的なことを書きましたが、日本には議院内閣制というややこしい制度があります。

今回は議院内閣制について書きたいと思います。内閣は今回で終了です。

 

 

| 議院内閣制ってなに?

 

日本では議院内閣制という制度を採用しています。議院内閣制は国会(立法)と内閣(行政)を分けた上で、内閣が国会の信任によって存在する政治制度です。

日本では三権分立を採用していますから国会と内閣は分けられています。衆議院は内閣不信任決議をすることができ、内閣は衆議院を解散できる権限があります。

また、内閣は国会に対して連帯して責任を負っていて、国会が内閣総理大臣を指名し国務大臣の過半数は国会議員で構成されます。

国会が内閣不信任案をもち内閣が解散権を持つことで、互いにけん制して国民の民意を反映しやすくしています。

国民は国会を通して内閣の信任や不信任をコントロールできます。国民が国会をコントロールし国会が内閣をコントロールすることで、間接的に国民が内閣をコントロールすることができるようになっています。

このように書くと日本国憲法が議院内閣制を明確に採用しているように思えますが、実は日本国憲法には議院内閣制の明文規定はありません。いくつかの条文を併せて日本国憲法が議院内閣制を採用していると考えられています。

 

憲法 66条

3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

 

憲法 67条

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先立つて、これを行ふ。

 

憲法 68条

内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

 

憲法 69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

憲法 70条

内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 

憲法 71条

前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

 

 

| 衆議院の解散

 

内閣には衆議院を解散する権限があると書きました。衆議院の解散がどのようなものかはみなさんご存知かと思います。一応整理しておきたいと思います。

衆議院の解散は衆議院議員の任期満了前に議員の資格を失わせる行為です。解散の後は40日以内に衆議院議員選挙が行われ、選挙後30日以内に最初の国会が招集されます。国会が招集されて10日以内に内閣総理大臣が指名されます。

このように衆議院議員選挙によって民主的コントロールがされています。

衆議院の解散については憲法69条に規定されています。

 

憲法 69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

この条文を読んでも衆議院を解散できる場合は、不信任決議案の可決か信任議決案の否決しかないように思われます。ところが、通説では憲法69条以外の場合でも内閣は衆議院を解散できると考えられています。過去の慣行であったり、柔軟に民主的コントロールを及ぼしたりするためには憲法69条の場合に限定しない方がよいからです。

もう一つの問題は、憲法7条3項にある天皇の国事行為です。衆議院の解散は天皇の国事行為とされています。

 

憲法 7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

3 衆議院を解散すること。

 

そもそも天皇の国事行為は天皇と政治を切り離した形式的なものだと考えられていますので、実質的には助言と承認を行う内閣が衆議院の解散を決定しています。

 

 

| まとめ

 

1 議院内閣制は民主的コントロールの手段!

2 衆議院の解散は憲法69条に限定されない!

3 衆議院の解散権は内閣にある!



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