行政書士試験の憲法(裁判所1)

前回まで内閣について一通り書いてきました。今回からは裁判所について書きたいと思います。裁判所は司法権を持っていて裁判をするところです。三権分立の1角を担っています。裁判所は憲法でどのように規定されているのでしょうか。

 

 

| 司法権の意味

 

裁判所は司法権を行使します。三権分立の一つです。裁判には、民事事件、刑事事件、行政事件があります。明治憲法下では行政事件は行政裁判所が担っていました。

 

憲法 76条

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

 

 

| 裁判所の判断ができる範囲

 

司法権が裁判所にあるとはいっても、裁判所の審査権はどこまで及ぶのでしょうか。実は、法律上の争訟にあてはまらないものは裁判所が判断できません。

法律上の争訟は(1)具体的な争訟であること(2)法の適用によって解決できること、の2つを満たすものです。この(1)と(2)を満たして初めて裁判所で裁判を受けることができるのです。

たとえば、お金を貸したけれども返してくれないから返してくれるように訴えるという場合があります。お金を返せという主張とお金を返す必要はないという主張が対立しています。具体的な争いですから(1)具体的な争訟であること、という要件を満たします。

そして、民法を適用することでどちらの主張が正しいのかを判断でき、トラブルを解決することができます。法を適用することで解決できますから(2)の要件も満たします。

逆に言うと、具体的な争訟でなかったり法の適用によって解決できなかったりする場合には、裁判所は判断をすることができませんので訴訟をすることができないのです。

1 具体的な争訟ではない場合

具体的というのは、争っている人が特定できていたり、争っている内容がはっきりとしていたりする場合です。そうではない場合には具体的な争訟ではありません。具体的な争訟かどうかが争われた裁判があります。警察予備隊違憲訴訟(最大昭27.10.8)です。

朝鮮戦争が勃発した昭和25年。アメリカは日本にも防衛する力が必要だと考え、警察予備隊を作るように要請しました。日本はこれに応じて警察予備隊を創設しました。日本社会党委員長は警察予備隊が憲法9条に反すると訴えました。裁判所は、具体的な権利関係や法律関係がないため法律上の総省にあたらず訴えを却下しました。

日本社会党委員長と警察予備隊の間には実際の争いが生じていないので法律上の争訟にはあたらないとされたのです。

却下というのは、訴えるための要件(訴訟要件)が揃っていないときに出される判断です。内容を審査されるのではなく形式的に要件を満たしていないから門前払いをされるのが却下です。

棄却は、主張している内容に理由が認められないときに出される判断です。法廷で証拠調べなどが行われた結果、原告の主張が認められないときに出されるのが棄却です。原告の主張が認められるときには認容判決がなされます。

2 法を適用しても解決できない場合

法を使って解決できないのであれば司法権を担う裁判所が判断できないのは当然です。法を適用しても解決できないとされた事件として板まんだら事件(最判昭56.4.7)があります。

あるお寺が板まんだらを奉納するお堂を建てるため寄付を募りました。しかし、信者が独自に調査したところ板まんだらが偽物であることが判明し、寄付をしたお金を返せと訴えました。裁判所は、事件を解決するには宗教上の教義を解釈する必要があるから法律上の争訟にはあたらないと判断しました。

板まんだらが本物であるか偽物であるかは宗教上の教義を解釈する必要があります。裁判所は宗教上の教義を解釈する能力がありません。裁判所は法を解釈して適用するところだからです。

それゆえに、法律上の争訟にあたらず裁判所の審査権は及ばないとされました。

 

 

| まとめ

 

1 司法権は裁判所に属する!

2 法律上の争訟でなければ裁判所は判断不可!

3 “具体的な争訟”、“法を解釈適用して解決”の二つが必要!



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