国会の記事がもう7つめです。国会は統治の基本ですから理解することや覚えることが多くなりがちです。一つ一つ丁寧に理解をしてください。前回までは国会の権能でしたが、今回は議院の権能です。今回が国会の最後になります。
| 議院の権能は大きく2つ
議院の権能は大きく分けると2つあります。議院自律権と国政調査権です。
1 議院自律権
議院自律権は、内部組織に関する自律権と運営に関する自律権があります。
(1)内部組織に関する自律権
・会期前に逮捕された議員の釈放要求兼
国会議員には不逮捕特権がありますので、議院は会期前に逮捕された議員の釈放を要求することができます。国会の運営に必要だからです。
憲法 50条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
・議員の資格争訟裁判
議員には議員になる資格がなければいけません。国会議員の場合には国籍の要件があったり、年齢制限もあったりします。そのような資格がないと疑われる場合には、議院は議員の資格について調べるために裁判をすることができます。資格がないとされると議員の議席を失わせて失職させることができます。
憲法 55条
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
・役員選任権
憲法 58条
両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
(2)運営に関する自律権
・議院規則制定権
議院は各議院内の規則を制定することができます。自分たちのルールは自分たちで決めることができるのです。
憲法 58条
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
・議員懲罰権
議員規則制定権と同じ条文に議員懲罰権が規定されています。院内の秩序を乱した議員に対しては懲罰を与えることができます。ただし、議員を除名するには出席議員の2/3以上の賛成が必要です。
憲法 58条
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
2 国政調査権
国政調査権は議院の重要な権能です。国政調査権は、議院が国政について調査をし、証人の出頭を要求したり、証言をとったり、記録の提出を要求できたりします。
国会の仕事のメインは法律の制定ですから、そのためには法律の背景となる情報をよく知っておかなければいけません。
憲法 62条
両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
国政調査権を持っているのは国会ではなく議院です。間違えやすいので注意してください。
ただ、国政調査権は万能ではありません。限界があります。国政調査権の限界には、人権に関する限界、司法権に関する限界、行政権に関する限界があります。
(1)人権に関する限界
国政調査権の行使と言えども人権を侵害することはできません。また、逮捕をしたり、捜索をしたり、差押をしたりすることもできません。
(2)司法権に関する限界
司法権の独立を害するような国政調査はできません。たとえば、裁判の内容の当否を調査したり、現在行われている裁判の事実関係や法適用を調査したりすることは許されないとされています。ただし、裁判とは異なる目的で並行して調査することは司法権の独立を害しないとされています。司法権に関する限界については、浦和事件という事件がありました。
浦和事件は浦和地裁が下した判決に対して参議院の法務委員が不当であると決議しました。それに対して、最高裁は司法権の独立を害しており国政調査権の範囲を逸脱していると抗議しました。国政調査権は補助的な権能だから、司法権の独立を害さない範囲に限られると考えられたのです。
(3)行政権に関する限界
基本的に行政権に対しては広く国政調査権を行使することができます。ただし、公務員の職務上の秘密に関することは国政調査ができません。また、検察に対しても司法権と同様に独立性が認められているため、司法権に関する限界と同様の限界があります。
| まとめ
1 議院の権能は議院自律権と国政調査権!
2 議院自律権には内部組織と運営に関する自律権がある!
3 国政調査権は強力な反面、色々な限界がある!