行政書士試験の憲法(人身の自由6)

前回は人身の自由のうち被告人の権利を2つ書きました。被告人には、公平・迅速・公開の裁判を受ける権利があり、証人を呼んで審問する権利がありました。今回は被告人の権利の続きを4つ書きたいと思います。今回が人身の自由の最終回になります。3~4回のつもりが6回になってしまいました。申し訳ございません。

 

 

| 弁護人依頼権

 

被告人には弁護士に弁護を依頼する権利があります。弁護士は被告人の利益のために活動します。憲法37条第3項に書かれています。

 

憲法 第37条

3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

 

一般的に被告人は法的な知識がなかったり、身柄を拘束されていて身体的・精神的にキツイ立場にあったりします。そのような被告人をサポートするために弁護士が弁護をします。被告人にお金がなかったり、知り合いの弁護士がいなかったりする場合には、国が弁護士をつけます。国選弁護人と呼ばれる人たちです。

 

 

| 黙秘権

 

皆さんよくご存じの“黙秘権”です。刑事ドラマでよく聞いた“お前には黙秘権がある”というセリフです。最近はあまり聞かなくなってきたように思います。憲法38条第1項に書かれています。

 

憲法 第38条

何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

 

被告人は質問をされても答える必要はありません。実際には黙秘によって捜査機関や裁判所の印象が悪くなるかもしれませんが、質問に答えないことは権利として認められています。

 

 

| 自白強要の禁止

 

被告人には黙秘権がありますが、強制的に自白をさせることは禁止されています。強制的な自白では証拠になりません(自白排除の法則)。また、自白が唯一の証拠であるときには有罪になりません(補強証拠の法則)。憲法38条第2項と第3項に書かれています。

 

憲法 第38条

2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く拘留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 

嘘の自白をして、自白に基づいた捜査をすると証拠が全く見つからないといったストーリーの刑事ドラマがあったように思います。憲法の規定を逆手に取った手段ですね。ただ、実際の捜査機関はそれほど自白偏重ではないようですから、このような手は使えないと思います。

 

 

| 事後法と二重の危険の禁止

 

何かをしたときに適法であった行為が後から成立した法律によって違法になって逮捕・起訴されるという事態は、想像しただけで恐ろしくなります。また、1度無罪になった行為を蒸し返して逮捕・起訴されるというのも恐ろしいですね。このようなことは憲法39条で禁止されています。

 

憲法 第39条

何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

最近の事例でいえば、2010年に著作権法が改正されました。以前は、私的利用目的であればインターネット上にある音楽を自由にダウンロードして聞くことができました。しかし、改正著作権法ではインターネット上の音楽を勝手にダウンロードすることはできなくなりました。一時、話題になりましたよね。

2010年に成立した改正著作権法を、2009年に私的利用目的で音楽をダウンロードした行為に適用することはできません。社会的な規範がないからです。刑法的に言うと“故意がない”ということになります。

 

 

| 残虐な刑罰の禁止

 

最後にこっそりと1つ飛ばした憲法36条についてです。

 

憲法 第36条

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 

これは被告人の権利というよりも罪が確定して罰を受けている在監者の権利です。今まで見てきた禁止規定とは違って、憲法36条だけは“絶対に”禁止するとしています。明治憲法下でよくあったという公務員による残虐刑を、歴史的な反省から絶対に禁止されたのです。

ときどき社会的に盛り上がるのが、絞首刑(死刑)は残虐な刑罰ではないかという議論です。判例によると、残虐な刑罰とは不必要な苦痛を与える残酷な刑罰のことだとされています。具体的には火あぶりや磔などです。絞首刑は残虐な刑罰とはされていません。

 

 

| まとめ

 

1 弁護人依頼権、黙秘権は被告人の基本的な権利!

2 事後法による処罰の禁止は身近なルール!

3 絞首刑は残虐な刑罰ではない!?



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