前回は人身の自由のうち被疑者・被告人の権利について書きました。被疑者は起訴前、被告人は起訴後の呼び名です。憲法33条~35条が被疑者について、37条~39条が被告人についての条文でした。今回は被疑者の権利について書きたいと思います。
| 不法な逮捕からの自由
不法な逮捕からの自由については、憲法33条に書かれています。
憲法 第33条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
逮捕時の身体拘束は、原則として裁判官の発する逮捕状・勾引状・勾留状が必要であることが定められています。いわゆる令状主義です。
令状主義では、裁判官がチェックをすることで恣意的な身体拘束を防止することが目的です。もし逮捕をする警察や検察(捜査機関)が逮捕状などの令状を発することができるのなら、捜査機関が好きなように令状を発してしまうかもしれません。ですから、裁判所が不法な逮捕かどうかをチェックして令状を発することにしています。
| 不法な抑留・拘禁からの自由
不法な抑留・拘禁からの自由は、憲法34条に書かれています。
憲法 第34条
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
抑留と拘禁の違いは、一時的な身体拘束が“抑留”、継続的な身体拘束が“拘禁”とされています。
抑留や拘禁をする場合には、正当な理由が必要です。理由を告げずに抑留や拘禁をすることはできません。
また、弁護士に依頼する権利を与えられなければ抑留や拘禁をすることができません。最近はあまり聞きませんが、刑事ドラマなどで“お前には弁護士を依頼する権利がある”などと言っていましたね。
| 所持品・住居の不可侵
所持品や住居は私生活の基礎的な存在です。
憲法 第35条
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
プライバシー保護が必要ですので令状主義が採用されました。しかも“各別の令状”でなければいけません。証拠品を捜索して差し押さえるには、証拠品ごとの捜索・差押令状が必要です。ただ、実務ではどのような証拠が出てくるのか分からないので、◯◯に関する物のように書かれているようです。
例外的に憲法33条の現行犯逮捕と令状逮捕の時には、特別な令状なく所持品検査や住居への侵入が可能です。
| まとめ
1 令状逮捕が原則で、現行犯逮捕は例外!
2 理由がなければ抑留・拘禁は禁止!
3 捜索・差押には各別の令状が必要!