多くの農地が宅地に転用される時期が近づいてきています。最初の生産緑地の指定から30年が経って農業を辞めてしまう農家が増えると予想されています。以前の記事“生産緑地の今!”や“ウチの農地に家を建てたい!”でもご紹介しましたが、農地に家を建てるには大きな障害が立ちはだかっています。
| 農地転用許可制度
農地に家を建てるには農地転用許可または農地転用の届出をしなければいけません。どのような手続きが必要なのかは、農地の区分と農地を売却するのかによって異なります。まずは農地の区分と許可の方針について書きたいと思います。
1 農用地区域内農地
市町村が農業振興地域整備計画で農用地区域と定めた区域内にある農地のことです。原則的に農地転用許可は下りません。また、一般的な不許可要件に該当する場合にも農地転用許可は下りません。
一般的な不許可要件には次の4つがあります。
・転用の確実性が認められない場合
・周辺農地への被害防除措置が適切でない場合
・農地の利用の集積に支障を及ぼす場合
・一時転用の場合に農地への原状回復が確実と認められない場合
これらに該当すると、どの種類の農地であっても農地転用許可申請をしても不許可になります。
2 甲種農地
市街化調整区域内で、農業公共投資後8年以内の農地や、集団農地で高性能農業機械での営農可能農地のことです。この種類の農地も原則として農地転用許可は下りません。
ただ、例外的に許可がされる場合が主に5つあります。
・農業用施設、農産物加工・販売施設の建設
・土地収用事業の認定を受けた施設の建設
・集落接続の住宅等(500㎡以内)の建設
・地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設の建設
・農村産業法、地域未来投資促進法などによる調整が整った施設の建設
一般の方が住宅を建てる場合は、集落接続の住宅等を建築する場合に限られそうです。
3 第1種農地
10ha以上の集団農地、農業公共投資対象農地、生産力の高い農地が第1種農地です。この種類の農地も原則として農地転用許可は下りません。
ただし、甲種農地と同じ例外があります。
4 第2種農地
農業公共投資の対象になっていない小集団の生産力の低い農地、市街地として発展する可能性のある区域内の農地は第2種農地です。小さく未整備の農地や市街地の近郊にある農地ですね。この種類の農地は、第3種農地に立地困難な場合には農地転用の許可が出されます。
5 第3種農地
都市的整備がされた区域内の農地、市街地にある区域内の農地は第3種農地です。この種類の農地は原則として農地転用の許可が出されます。
| 農地転用の許可は誰が出すの?
農地転用の許可権者は都道府県知事です。ただ、農林水産大臣が指定する市町村の場合は市町村長が許可権者になります。市街化区域内の農地は農業委員会へ届出をするだけでOKです。市街化区域内の農地は第3種農地ですから、農地に家を建てるのは比較的簡単にできます。
また、農地転用の許可が必要ない場合もあります。たとえば、国・都道府県・指定市町村が施設を建築する場合、土地収用される場合、農業経営基盤強化促進法に基づく場合、市町村が土地収用法対象事業のために転用する場合です。
少し特殊な例としては、国・都道府県・指定市町村が、学校や社会福祉施設、病院、庁舎などを建設しようとする場合には、転用許可権者と協議が成立するだけで農地転用の許可があったものとされます。
| まとめ
1 街中の農地は宅地への転用が簡単!
2 小さな農地も比較的宅地へ転用可能!
3 市街化区域内の農地は農業委員会への届出だけ!