宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回は宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。
下線は過去問に問われたところです。
| 本人への責任追及方法は?
前回の記事で、無権代理人が相手方から責任を追及される可能性があると書きました。無権代理人は代理権がないのに勝手に本人を代理したのですから、責任を追及されて当然です。
では、相手方は本人に責任を追及できないのでしょうか?
代理の基本図を再掲します。
実は、本人への責任を追及する方法があります。代理権が存在すると相手方が信じるような外観を作って、相手方が代理権のないことに善意かつ無過失の場合です。この場合には、無権代理人の代理行為でも本人に効果が帰属します。つまり、無権代理人の行為をあたかも代理権がある通常の代理と同じように扱うという制度です。
この制度は表見代理と呼ばれていて、パターンとして3つあります。
1 代理権授与表示(民法109条)
本人が相手方に、代理権を与えたと言ったり書面を送ったりして表示したけれども、本当は代理権を与えていなかった場合です。相手方は本人の言葉や文言を信用しますから、本人に責任を追及しても酷ではありません。
たとえば、本人が自己所有の土地にAの抵当権を設定する代理権を代理人に与えて白紙委任状を交付したけれども、代理人はAではなくBの抵当権を設定した場合です。次の権限踰越の場合のようにも思えますが、裁判所は代理権授与表示による表見代理としました。
2 権限踰越(民法110条)
本人から代理権を与えられている代理人が、与えられた代理権の範囲を超えて代理行為をした場合です。元々与えられていた代理権(基本代理権)は、土地の売却や登記申請手続きなどの代理権でなければいけません。夫婦間での日常家事の代理権(民法751条)や投資契約の勧誘委託は基本代理権になりません。
たとえば、本人から融資と自己所有の土地への抵当権の設定を委任された代理人が、土地を売却した場合です。
3 代理権消滅(民法112条)
本人から代理権を与えられましたがすでに代理権が消滅した後にもかかわらず、代理人として行為をした場合です。代理権が消滅した後でもまだ代理権があるかのような外観を放置していたことに本人の責任があります。
たとえば、元店長を解雇したけれども取引先に解雇を通知しない間に、元店長が取引先との間で自分のためにモノを購入していた場合です。
| 代理権がなくなる原因
上で代理権が消滅した後の無権代理人の行為が表見代理になりうると書きました。では、どのような場合に代理権が消滅したことになるのでしょうか?
民法では代理権がなくなったことになる原因を規定しています。
1 法定代理人(親権者や後見人など)の場合
・本人の死亡
・代理人の死亡
・代理人の後見開始の審判
・代理人の破産手続開始の決定
2 任意代理人(委任状があるなど)の場合
・本人の死亡
・本人の破産手続開始の決定
・代理人の死亡
・代理人の後見開始の審判
・代理人の破産手続開始の決定
・委任契約の解約
ややこしいので表にまとめます。
| まとめ
1 表見代理だと本人に効果帰属!
2 相手方が善意・無過失の場合のみ!
3 表見代理は3種類!
4 死亡すると代理権が消滅!