高齢者の健康保険は独立した制度

| 老人保健法を改正

 

現在は医療費総額の高騰が問題になっていますね。ジェネリック医薬品を使いましょう!という宣伝をよく見かけるようになりました。少子高齢化で高齢者が増加していて、高齢者の医療費が増えています。平成28年の厚生労働省の資料では、法改正で老人医療の対象者が70歳から75歳に引き上げられたにもかかわらず、1995年の8.9兆円から2017年(見込み)の16.1兆円まで急増しています。

法改正はこのような状況を見据えて平成18年になされました。従前の老人保健制度では、高齢者は通常の医療保険に加入してそれぞれの医療保険が医療費を負担していました。これでは、現役世代と高齢世代の負担状況が不明確などの問題があったために、老人保健制度に代わる“後期高齢者医療制度”が創設されました。高齢者は後期高齢者医療制度に加入して保険料を負担しています。

 

| 高齢者の医療の確保に関する法律

 

後期高齢者医療制度は高齢者の医療の確保に関する法律で定められています。高齢者の適切な医療の確保、医療費の適正化などが目的になっていますが、その他にも国民の共同連帯の理念などに基づいて前期高齢者の費用負担の調整なども行われています。

1 医療費適正化計画の作成と評価

医療費を適正にするために、厚生労働大臣や都道府県は6年ごとに医療費適正化計画を作成しています。厚生労働大臣が作成した全国医療費適正化計画は公表されています。都道府県が作成した医療費適正化計画の公表は努力義務ですが、厚生労働大臣に提出することになっています。大阪府の全国医療費適正化計画はこちらでご覧ください。また、医療費適正化計画の終了年度の翌年度には実績の評価が行われて公表されます。

2 特定健康診査など

特定健康診査や特定保健指導は加入した健康保険が行いますが、厚生労働大臣が作成した基本的な指針をもとに5年ごとに実施のための計画を作成して行われます。対象は40歳以上の加入者です。
実際に実施する健康保険(保険者)には、全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合、市町村、国民健康保険組合、共済組合、日本私立学校振興・共済事業団があります。

 

| 前期高齢者と後期高齢者

 

先ほど上で“前期高齢者の費用負担の調整が行われる”と書きましたが、社会保険診療報酬支払基金という組織が前期高齢者の割合が低い保険者から納付金や拠出金を徴収して前期高齢者の割合が高い保険者に交付金を支払っています。前期高齢者は65歳から74歳までの方です。

後期高齢者医療制度の対象は75歳以上の方や一定の障害状態にある65歳以上74歳までの方です。市町村の後期高齢者医療制度に加入し、保険者である市町村は都道府県ごとにある後期高齢者医療広域連合に加入します。

後期高齢者の医療給付は一般の国民健康保険加入者と同じように法定給付や任意給付がなされます。医療費は原則として患者が10%、保険料が45%、公費が45%を負担します。現役並みの収入のある後期高齢者(住民税課税所得額が145万円以上など)は30%負担、保険料が35%負担、公費が35%負担です。

 

| まとめ

 

1 高齢者の医療費総額は増加中!

2 後期高齢者の医療費は独立した制度!

3 75歳以上の方は医療費1割負担に!



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国民健康保険で支払われない場合って?

| 自営業やフリーの人の健康保険

 

皆さんご存知のように、健康保険には国民健康保険と全国健康保険協会・健康保険組合の2種類があります。全国健康保険協会は協会けんぽと呼ばれるもので中小企業が主な対象です。健康保険組合は大企業などで独自の組合を作って運営されているものです。

これらの一般的な健康保険に比べて、国民健康保険は農業従事者や自営業者などを対象とした医療保険です。市町村運営方式が昭和36年に導入されて国民皆保険体制が実現したそうです。

国民健康保険が市町村運営方式になる前は組合方式が採用されていて、その関係で今でも国民健康保険組合があります。医師、弁護士、土木建築業者などがそれぞれの組合の構成員になっています。

 

| 国保はこんなときに支払われる

 

国民健康保険が支払われるときは大きく分けて2つあります。一つは法定給付で、もう一つは任意給付です。

1 法定給付

法定給付には絶対的必要給付と相対的必要給付があります。

・絶対的必要給付

療養の給付や特別療養費の給付があります。それ以外には、入院時の食事療養費・生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、移送費、高額療養費などです。

ただし注意が必要なことがあります。一つめは、家族も被保険者として保険料を納めていますので、家族療養費などの家族給付がないことです。二つめは、保険料を滞納して被保険者資格証明書をもらっているときには療養の給付等はありませんが、被保険者資格証明書を提示して療養を受けたときには償還払いされます。特別療養費といわれています。

・相対的必要給付

出産や死亡について、出産育児一時金や葬祭費の支給などを行うものです。各市町村で条例や規則で定められていて、特別の理由があるときは減額されたり支給されないことがあります。

2 任意給付

こちらも条例や規則で定められていて、傷病手当金の支給などを行うことができます。

 

| 国保が支払われない場面

 

国民健康保険に加入していても支払いがされない場合が法律に書かれています。6つあります。

1 少年院への収容、刑事施設・労役場への拘禁

療養の給付などが支払われません。

2 故意の犯罪行為や故意の疾病・負傷

療養の給付などが支払われません。

3 闘争・泥酔・著しい不行跡による疾病・負傷

療養の給付などが減額されたり支払われなかったりすることがあります。

4 正当な理由なく療養に関する指示に従わなかったとき

療養の給付などが減額されることがあります。

5 正当な理由なく強制診断等の命令に従わなかったり、答弁・受診を拒んだとき

療養の給付などが減額されたり支払われなかったりすることがあります。

6 保険料を滞納し納付期限から1年6か月経過したとき

保険給付を一時差し止められます。滞納が1年6か月未満でも保険給付を一時差し止められることがあります。

 

| まとめ

 

1 国民健康保険には組合方式もあります!

2 国民健康保険では家族療養費などはありません!

3 喧嘩や犯罪での病気やケガには支払われないことも!



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労働市場のルールは多種多様 ~その9~

今回のシリーズは労働市場のルールをまとめています。。基本法である雇用対策法から始めて職業能力開発促進法までをまとめました。このシリーズは今回が最終回です

今回は求職者への支援についてまとめたいと思います。

 

| 求職者支援法

 

職業訓練を実施するときに一定の求職者には給付金が支給されます。職業訓練を容易にして就職を促進し、求職者の職業や生活の安定を図ることが目的です。

どのような人が給付金をもらえるのでしょうか。法律では、ハローワークで求職の申込をしていて労働の意思と能力があり、職業訓練などが必要だとハローワークに認められた人です。特定求職者と呼ばれているようです。このような方が認定された職業訓練を受講すると給付金がもらえるのです。

職業訓練をしようとする事業者は厚生労働大臣に申請をして認定をもらうことができます。認定をもらうには次の3つの条件のどれかをクリアしなければいけません。

・職業訓練実施計画に照らして適切なものであること

・就職に必要な技能や知識を十分に有していない者に対して効果的なものであること

・その他一定の基準に適合するものであること

認定職業訓練を行う事業者には、予算の範囲内で必要な助成や援助がされます。奨励金が出るかもしれません。

また、ハローワークは特定求職者に対して次のような就職支援計画を作成して、就職支援措置を受けることを指導します。

・職業指導と職業紹介

・特定職業訓練または公共職業訓練など

・その他厚生労働省令で定めるもの

ハローワークが色々と支援をしてくれますが、求職者自らが進んで速やかに職業に就くように努めなければいけないのは言うまでもありませんね。

 

| 労働市場のルールのまとめ

 

労働市場のルールの基本は雇用対策法です。個別の法律は次のようなものがありました。

・職業安定法に基づいてハローワークなどの職業紹介事業者が様々な支援をする

・労働者派遣法で派遣さんのルールを規定する

・高年齢者雇用安定法でシルバー人材センターを作ったり高齢者の雇用の安定を図ったりする

・障害者雇用促進法で障害者の雇用の安定を図る

・職業能力開発促進法で職業の安定と労働者地位向上のために職業訓練を進める

・求職者支援法で一定の求職者に給付金を支給する

紛争解決手段も一般法で定めるほか複数の法律で個別に定められています。

・男女雇用機会均等法:性別差別やマタニティハラスメントなどを紛争調停委員会が調停する

・育児・介護休業法 :育児休業や介護休業などでの紛争を紛争調停委員会が調停する

・パートタイム労働法:短時間労働者に関する紛争を紛争調停委員会が調停する

・障害者雇用促進法 :障害者への差別などの紛争を紛争調停委員会が調停する

男女雇用機会均等法や障害者雇用促進法の調停では、募集や採用についての紛争は解決してくれません。一般法である個別労働関係紛争解決促進法でも募集や採用についての紛争は扱っていません。採用の段階では会社の自由が大きいからでしょうか。

 

| まとめ

 

1 ハローワークで職業訓練を受けると給付金がもらえるかも!

2 派遣・高齢者・障害者などのルールは個別法で!

3 紛争がこじれた場合の解決は紛争調停委員会の調停で!



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労働市場のルールは多種多様 ~その8~

今回のシリーズは労働市場のルールをまとめています。基本法である雇用対策法から始めて障害者雇用促進法までをまとめました。

本日は職業訓練などのルールについてまとめたいと思います。

| 職業能力開発促進法

 

職業訓練はハローワークなどで行われている離職者向けの講習を思い浮かべますが、会社で行われる職業訓練もあります。

職業能力開発促進法は、職業に必要な労働者の能力を開発したり向上させたりすることで、職業の安定と労働者の地位の向上を図っています。経済や社会の発展まで法律の目的になっています。

ハローワークや会社以外でも、労働者が自ら職業に関する教育訓練や職業能力検定を受ける機会もあります。このような施策などを総合的かつ計画的に講ずることが求められています。

 

| 会社内での職業能力開発

 

会社は、労働者が職業能力の開発や向上を図るための機会を確保できるように配慮することになっています。努力義務です。

次のような措置を取ることができます。

・職業訓練を会社または共同して行うほか、他社の設置する施設で行われる職業訓練を受けさせること

・他者の設置する施設で行われる教育訓練を受けさせること

・一定の職業能力検定を受けさせること

・必要に応じて実習併用職業訓練を実施して労働者の職業能力の開発・向上を促進すること

・労働者が目標を定めることを容易にするための情報提供や相談の機会の確保などを行うこと

・労働者の配置その他の雇用管理について配慮すること

・有給教育訓練休暇などの休暇を付与すること

・教育訓練や職業能力検定を受ける時間を確保するために勤務時間の変更・短縮などをすること

“有給教育訓練休暇”と出てきましたが、年次有給休暇として与えられるものは含まれません。有休とは別に与えることになります。

 

| 会社内での職業能力開発計画の作成

 

事業主は、会社内での職業能力開発の措置に関する計画を作成するように努めなければいけません。努力義務です。計画を作成したときは労働者に周知させて円滑な実施に努めなければいけません。こちらも努力義務です。

この契約の作成は会社の規模に関係なく努力義務とされています。

| 職業能力開発推進者の選任

 

会社内での職業能力開発の措置に関する計画の作成や実施、相談、指導などの業務などを担当する“職業能力開発推進者”を選任するように努めなければいけません。これも努力義務です。

 

| まとめ

1 会社内で職業訓練をする場合があります!

2 職業能力開発・向上のためにいくつかの努力義務があります!

3 会社は計画を作成したり責任者を選任したりします!



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労働市場のルールは多種多様 ~その7~

今回のシリーズは労働市場のルールをまとめています。基本法である雇用対策法から始めて高年齢者雇用安定法までをまとめました。

今回は障害者の雇用のルールについてまとめたいと思います。

 

| 障害者雇用促進法

 

近年“障害者”の表記を“障碍者”や“障がい者”とすることがあります。内閣府で検討が行われたりしていろいろな意見があるかと思いますが、障害者雇用促進法では“障害者”となっていますので、この記事では“障害者”と表記します。

さて、障害者雇用促進法は昭和35年に制定された“身体障害者雇用促進法”が元になっています。身体障害者だけでなく障害者全般に雇用の促進政策を拡大することになり、障害者雇用促進法と名前を変えたそうです。

障害者雇用促進法は身体障害者や知的障害者の職業の安定を図っています。たとえば、最近地方自治体などで話題になっている雇用義務、均等な機会と待遇の確保、職業リハビリテーションの措置などがあります。会社などの事業主は身体障害者や知的障碍者の雇入れに努めることになっています。

 

| 障害者の雇用義務

 

労働者を常時雇用する事業所では、身体障害者や知的障害者の数の割合が一定以上でなければなりません。民間事業主の場合には常時50人 45.5人以上の労働者を雇用している場合に限ります。割合は大きく3つに分けられています。特例もあります。(平成30年4月1日に変更になりました。)

・一般の民間事業主      : 2.0% 2.2%

・特殊法人、国、地方公共団体 : 2.3% 2.5%

・教育委員会など       : 2.2% 2.4%

精神障害者については雇用義務が課せられていません。精神障害者保健福祉手帳を持っている精神障害者を雇用すると、身体障害者や知的障害者を雇用しているものとみなされます。

また、労働者の総数を数えるときの短時間労働者は0.5人とします。障害者の数を数えるときは次のように数えます。

・重度身体障害者、重度知的障害者          : 2人

・重度身体障害者、重度知的障害者で短時間労働者   : 1人

・精神障害者                    : 1人

・身体障害者、知的障害者、精神障害者で短時間労働者 : 0.5人

 

| 障害者に対する差別の禁止

 

1 募集・採用での差別の禁止

労働者を募集・採用するときに、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければいけません。

2 賃金・教育訓練などでの差別の禁止

賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などの待遇で、障害者であることを理由として不当な差別的取り扱いをしてはいけません。

3 雇用の分野での均等な機会の確保など

募集や採用の場面で均等な機会の支障となっている事情がある場合に、障害者から申し出があるとその支障となる事情を改善するために障害の特性を配慮しなければいけません。また、障害者の能力の有効な発揮に支障となっている事情がある場合には、障害の特性に配慮した措置をしなければいけません。

もちろん、事業主に過度の負担がかかっていては経済的にもマイナスになります。その場合には免除されます。

4 障害者の意向の尊重など

障害の特性に配慮した措置をする場合には、障害者の意向を十分に尊重しなければいけません。相談や対応のために必要な措置も講じなければいけません。

5 助言や勧告など

上の1~4の規定に必要があるときは、厚生労働大臣が事業主に対して助言や指導、勧告をすることができます。

 

| 調整金の支給と納付金の徴収

 

1 障害者雇用調整金の支給

障害者の雇用での経済的負担の調整や雇用促進・継続のために障害者雇用調整金が支払われます。当分の間、常時100人以下の労働者を雇用している場合には適用されません。

2 障害者雇用納付金の徴収

障害者雇用調整金の支給に必要な費用や事務の費用に充てるために障害者雇用納付金が毎年徴収されます。当分の間、常時100人以下の労働者を雇用している場合には適用されません。

 

| 報告など

 

1 障害者の雇用状況の報告

常時50人以上の労働者を雇用している場合には、毎年6月1日現在の障害者の雇用状況を7月15日までにハローワークへ報告します。

2 障害者の雇入れの計画

厚生労働大臣が必要だと認めるときは、法定雇用率を達成していない事業主に対して、障害者の雇入れに関する計画を作成させて実施に関して勧告ができます。正当な理由なく勧告に従わないときは公表されます。

 

| 紛争の解決

 

1 苦情の自主解決

賃金などの待遇で不当な差別があって障害者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に苦情の処理を委ねるなどして自主的な解決を図るように努めなければいけません。これは努力義務です。

2 紛争の解決の援助

障害者への差別についての紛争について、都道府県労働局長が当事者から援助を求められたときは、必要な助言や指導、勧告をすることができます。

3 調停

賃金などの待遇についての障害者への差別があって、都道府県労働局長の援助の対象になる紛争については、当事者から調停の申請があったときは、都道府県労働局長は紛争調整委員会に調停をさせます。

 

| まとめ

 

1 障害者雇用促進法では全ての障害者が対象!

2 差別の禁止や意向の尊重が主なルール!

3 障害者を雇用するとハローワークへの報告義務があります!



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