建設業の許可を取るポイント! ~その他~

| その他の要件

 

建設業の許可のポイントとして、4回に分けて4つ書いてきました。

1 経営業務の管理責任者(経管)

経験年数(4種類)、実態・実績・常勤・期間の証明が必要です。

2 専任の技術者(専技)

国家資格や実務経験、実績・専任・期間の証明が必要です。

3 財産的基礎

一般建設業は500万円、特定建設業は自己資本4000万円+経営の健全性が必要です。

4 事務所

いつでも使えて看板があって什器・備品を揃える必要があります。

 

男性の経営者や会社員が、仕事の戦略(策略)を練っている様子を描いたイラスト

 

経管、専技、財産、事務所以外にも建設業の許可に必要なものがあります。欠格要件に該当しないこと、誠実であること、常勤性の証明があることです。

これらについて簡単に書きます。

 

 

| 欠格要件に該当しないこと

 

欠格要件はいろいろありますが、大きく分けて4種類あります。

1 営業上の処分

たとえば、一定の事由で建設業の許可を取り消されてから5年が経っていなかったり、一定の事由で営業の停止処分を受けて期間が経過していなかったりすると許認可を受けることができません。

2 制限能力者

成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者は建設業許可の申請者にはなれません。証明書として“登記されていないことの証明書”と“身分証明書”を提出します。

3 個人的に刑罰を受けたこと

申請者が禁固以上の刑罰を受けたり一定の罪で罰金以上の刑罰を受けたりしてから5年が経っていないときは、建設業の許可申請ができません。

暴行罪(刑法208条)で罰金を支払っときも該当しますので注意してください。他にはあまり見かけない建設業許可の厳しいところです。

4 暴力団員

暴力団関係者は申請者になれません。

 

弱そうな人の胸ぐらを掴んで喧嘩を売っている(暴力を振るっている)ガラの悪い男性(ヤクザ)のイラスト

 

 

 

| 誠実であること

 

法人自身や個人事業主自身だけでなく、役員、支店長などが請負契約に関して不正な行為をするおそれが明らかでないこと、請負契約に反する行為をするおそれが明らかでないことが必要です。

“おそれが明らかでない”という可能性のようなことは第三者が証明するのは難しいですね。実際には誓約書を提出します。

 

 

| 常勤性の証明

 

経営業務の管理責任者、専任技術者、支店長などは常勤でなければなりません。その証明として、10種類の書類のうちいくつかを組み合わせて提出します。

1 法人の役員、従業員(専任技術者、支店長など)

原則として、①健康保険被保険者証+標準報酬決定通知書、②住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用+納税義務者用)の2種類のうちどちらかです。

ただ、役員就任直後や雇用直後の場合には①や②はありませんので提出できません。この場合には例外として違う書類を提出します。

(1)法人の役員

③直前3か月分の賃金台帳など、④住民税特別徴収切替申請書(市町村の受付印必須)の2種類が必要です。3か月目までの報酬が支払われていないときは、③を提出できませんので③に代えて、⑤役員報酬に関する役員会議事録を提出します。

代表者の役員報酬が10万円未満の方や、代表者と生計を一にしていて役員報酬が10万円未満の方は、健康保険証住民税課税証明書申請者の確定申告書類が別途必要になります。

(2)従業員

基本的に同じものですが、雇用後3か月目までの給与が支払われていないときは、③の賃金台帳に代えて⑥給与額が書かれている雇用契約書または労働条件明示書を提出します。

代表者と生計を一にしていて大阪府の最低賃金(月額10万円が目安)を下回る方は、健康保険証住民税課税証明書申請者の確定申告書類が別途必要になります。

 

山積みの書類を整理しながら、一生懸命働く残業中の男性会社員(サラリーマン)のイラスト

 

2 個人事業主

⑦申請時に有効な国民健康保険被保険者証のみでOKです。

3 個人事業の専従者

⑦健康保険証と⑧個人事業主の確定申告書(第一表+事業専従者の賃金の分かる書類)が必要です。

4 個人事業の従業員

法人の従業員と同じく①と②が原則です。例外として③と④、③がない場合は④と⑥を提出します。

表にまとめておきます。

 

建設業許可_常勤性の証明必要書類一覧表

 

これ以外にも、後期高齢者医療制度の被保険者である場合、外国籍の方の場合、出向者の場合に上記とは異なる書類の提出が必要です。細かい事柄ですのでシリーズの最後にQ&Aで書きたいと思います。

 

過酷な労働環境でコンピューターに向かいながら働く、俗に「IT土方(デジタル土方)」と呼ばれる男性のイラスト

 

 

 

| まとめ

 

1 経管、専技、財産、事務所以外にも要件があります!

2 欠格要件は暴行罪に注意!

3 誠実性は誓約書で担保!

4 常勤性の証明は書類の種類に注意!



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建設業の許可を取るポイント! ~事務所(営業所)~

| 事務所(営業所)って何をするところ?

 

建設業の事務所(営業所)は、請負契約を締結したり、請負契約の見積りや入札をしたり、その他請負契約の締結に係る様々な事務処理を行う場所です。

建設業を営んでいない本店や支店はここでの“事務所”ではありません。また、単なる連絡事務所のようなものもここでの“事務所”ではありません。

建設業の許可を受けるためには営業所が最低1ヶ所必要です。いわゆる本社、本店です。“主たる営業所”も同じ意味です。

もちろん本店以外に支店を作ることもできます。支店を作ると、支店ごとに支店長や専任技術者をそれぞれ配置する必要がありますから負担が大きくなりますね。支店が本店と異なる都道府県にある場合には“知事許可”ではなく“大臣許可”になりますのでご注意ください。

 

 

| 事務所の要件は6つ!

 

一般建設業、特定建設業のどちらも、原則として次の6つの要件を満たさなければいけません。建物全体でもいいですし、建物の一室でもかまいません。

1 事務所をいつでも使える権原があること

自社の所有する物件でもいいですし、賃貸借をしている物件でもOKです。

2 建物の外観または入口などで、商号や名称が確認できること

看板などを掲げておけば大丈夫です。建設業の許可申請のときに写真の提出を求められます。

3 固定電話、事務機器、机などの什器や備品が備えられていること

電話、FAX、机などがあれば問題ありません。こちらも写真の提出を求められます。

4 許可を受けたあと営業所ごとに建設業の許可票を掲げていること

建設業の許可を受けたら許可票を用意してください。樹脂やアルミのしっかりしたものを購入される方が多いと思います。とりあえずということで手書きのものを用意されても構いません。下のような雛形を使います。

建設業の許可票_見本

 

5 支店などの代表者が常勤しており、契約締結等の権限を委任されていること

支店がある場合には支店長を配置しなければいけません。この支店長は、常勤で契約締結などの権限がなければなりません。名ばかりで権限のない支店長はダメですし、名義貸しのような非常勤の支店長も認められません。

6 専任技術者が常勤してもっぱらその職務に従事していること

本店と支店には専任技術者を配置しなければいけません。専任の技術者は常勤でなければいけませんし、勤務時間は専任技術者として仕事をしていなければいけません。

 

「事務所」と大きく看板が掲げられた2階建ての建物のイラスト

 

 

 

| 事務所の要件確認のための必要書類

 

1 事務所の権利関係を証明する書類

建設業の許可を取るときには、事務所を使える権原を確認するための書類が必要です。

(1)自己所有の場合

次のどれか1つを提出します。自己所有と言えるのは、申請者、法人の役員、個人事業主、個人の支配人が、建物の1/2以上を所有している必要があります。

(あ)建物の登記簿謄本(発行日から3か月以内)

(い)固定資産税評価証明書(発行日から3か月以内)

(う)固定資産税・都市計画税の納税通知書(直近のもの)(原本提示、写し提出)

(え)登記済証(権利証)(原本提示、写し提出)

(お)登記識別情報通知(原本提示、写し提出)(今は登記済証ではなくこちらです)

(か)建物の売買契約書(原本提示、写し提出)

(か)の建物の売買契約書は、登記が確認できない場合などに提出する補完的な書類です。

 

不動産の登記名義人へ通知される12桁の英数字が書かれた登記識別情報のイラスト

 

(2)賃貸借の場合

賃貸借の場合は、賃貸借契約書の原本を提示して写しを提出します。

追加で使用承諾書が必要になる場合もあります。例としては次のような場合です。

(あ)使用目的が居住用になっているとき

使用目的が“倉庫”になっているときは、写真で事務所として使用することが分かるようであれば使用承諾書の提示は不要です。

(い)事務所としての使用が禁止されているとき

(う)申請者と借主が異なるとき

(え)申請者が個人で、個人事業主の親族などが建物を所有しているとき

この場合は、賃貸借契約書と使用承諾書だけでなく、親族などが所有してることの確認書類として“(1)の(あ)~(か)のどれか1つ”が必要です。

(お)申請者の関係企業などとの間で賃貸借契約をしているとき

関係企業が所有する建物の場合は、賃貸借契約書と使用承諾書だけでなく、関係企業が所有していることの確認書類として“(1)の(あ)~(か)のどれか1つ”が必要です。

関係企業が賃借している建物の場合は、賃貸借契約書と使用承諾書だけでなく、転貸禁止になっていないかを確認するために、“関係企業などが所有者と締結している賃貸借契約書”も必要です。

 

契約書に判子(印鑑)を押している様子を描いたイラスト

 

2 支店長などの権限委任の確認書類

支店長などに権限を委任していることが分かる委任状が必要です。

委任状は、法人の取締役会などや代表取締役、個人事業主から支店長などに建設業に係る請負契約の締結などが委任されていることが分からなければいけません。

ただし、支店長などが法人の役員であったり個人の事業専従者であったりする場合には不要です。

 

 

| まとめ

 

1 事務所は契約締結したりするための場所!

2 事務所は見た目だけでなく常勤しているなど実態も重要!

3 事務所として使うための権原は所有でも賃貸借でもOK!

4 支店があるときは支店長への権限委任の確認書類が必要!



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建設業の許可を取るポイント! ~財産的基礎など~

| 財産的基礎が必要なワケ

 

建設の仕事を請け負うときには材料・原料を仕入れたり、必要に応じて新たに道具などを購入したりしてから工事をすることになります。仕入れたり道具を買ったりする資金がなければ工事に取り掛かることはできませんし、工事を完成させることもできません。工事を請け負ってすぐに倒産されると困るわけです。

 

会社が倒産して困り果てている社長(会社員)のイラスト

 

ですから、建設業の許可を取るためには、工事をするための“一定の資金”が要求されています。“一定の資金”といっても、工事の規模によってかなり差がありますよね?実際に、一般建設業と特定建設業では財産的基礎の要件が異なっています。

 

 

| 一般建設業の財産的基礎の要件

 

建設業の許可を申請する時点で、次のどれかに該当していなければなりません。ただし、倒産することが明白であるときは許可を取れませんので注意してください。

1 直前の決算で、自己資本の額が500万円以上であること

直前の決算で貸借対照表の純資産の部の合計が500万円以上であればOKです。

2 金融機関の預金残高証明書で、500万円以上の資金調達能力を証明できること

個人事業主の場合で、取引している銀行から500万円以上の残高証明書を発行してもらいます。

法人の場合で決算書の純資産の部が500万円以下の場合にも、取引している銀行から500万円以上の残高のある証明書を発行してもらいます。

残高の日が申請日の4週間以内でなければいけません。許可の書類の内容に不備がなく許可の申請が受理されることが分かってから、残高証明書を発行してもらうのが安全です。ご自身で申請される場合には特に注意してください。

 

真面目そうにビチッとスーツを着て七三分けにしている、半沢直樹のような銀行員のイラスト

 

3 建設業の許可を申請する過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績があること

これは更新の時の要件だと思ってください。5年目の更新をするときには財産的基礎の証明が必要ありません。

 

 

| 特定建設業の財産的基礎の要件

 

こちらはかなり厳しく、請負代金の額が8000万円以上の工事をするのに足りる財産がなければなりません。原則として、次の“すべて”に該当する必要があります。倒産することが明白な場合には許可が取れないことは一般建設業と同じです。

許可の申請時の直前の決算期の決算書で判断されます。

1 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

欠損はいわゆる赤字です。ここでは決算書の数字を使って計算します。

法人の場合、貸借対照表の“繰越利益剰余金”から“資本剰余金”と“利益準備金”と“任意積立金”の合計額を引きます。出てきた数字を“資本金”で割って100をかけた数字が20%未満でなければなりません。

“繰越利益剰余金”-(“資本剰余金”+“利益準備金”+“任意積立金”)÷“資本金”×100 ≦ 20

個人事業主の場合ですが、言葉で説明してもややこしくなりますので、計算式を挙げておきます。

“事業主損失”-(“事業主借勘定”-“事業主貸勘定”+“利益留保性の引当金”+“準備金”)÷“期首資本金”×100 ≦ 20

2 流動比率が75%以上であること

法人でも個人でも共通です。計算式だけを挙げておきます。

“流動資産合計”÷“流動負債”×100 ≧ 75

3 資本金の額が2000万円以上であること

法人の場合は資本金の額、個人事業主の場合は期首資本金の額が2000万円以上必要です。

4 自己資本の額が4000万円以上であること

法人の場合は、純資産の合計が4000万円以上であればOKです。

個人事業主の場合の計算式を挙げておきます。

(“期首資本金”+“事業主借勘定”+“事業主利益”)-“事業主貸勘定”+”利益留保性の引当金”+“準備金” ≧ 4000万円

 

パソコンを使って、オンラインで確定申告(e-Tax)をしている男性のイラスト

 

 

| 一般建設業の財産的基礎の確認に必要な書類

 

1 自己資本の額が500万円以上の場合

新規設立の法人の場合、開始貸借対照表があればOKです。

新規設立の個人事業主の場合、開始貸借対照表と500万円以上の預金残高証明書が必要です。

確定申告をしている法人の場合は、確定申告書の別表一、決算報告書が必須です。場合によっては別表五(一)も必要になります。

確定申告をしている個人事業主の場合は、確定申告書の第一表、第二表、青色申告決算書か収支内訳書、貸借対照表が必要です。

確定申告書には税務署の受付印か税務署の受信通知がないとダメです。ご注意ください。

2 500万円以上の資金調達能力を証明する場合

金融機関が発行する500万円以上の残高証明書を提出します。残高証明の日付が申請日の4週間以内でなければなりません。発行日ではありませんのでご注意ください。

3 許可を受けてから5年間継続して営業していた場合

証明する書類は必要ありません。

 

脱税や粉飾決算のために、収支を偽装して記録した裏帳簿のイラスト

 

 

| 特定建設業の財産的基盤の確認に必要な書類

1 新規設立の法人の場合

開始貸借対照表だけでOKです。

2 確定申告をしている法人・個人事業主

法人と個人事業主のどちらであっても、財務諸表は必須です。

法人の場合、確定申告書の別表一、決算報告書に加え、場合によっては別表五(一)も必要になります。

個人事業主の場合、確定申告書の第一表、第二表、青色申告決算書、貸借対照表が必要です。

こちらの確定申告書にも税務署の受付印か税務署の受信通知が要ります。

 

 

| まとめ

 

1 工事が完成できるだけの財産があるか確認されます!

2 一般建設業よりも特定建設業の方が要件は厳しいです!

3 確定申告書には税務署の受付印か受信通知が必須!

4 残高証明書を提出する場合は日付に注意!



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建設業の許可を取るポイント! ~専任技術者~

| 専任技術者になるための要件

 

専任技術者は現場のリーダー的存在です。経営業務の管理責任者と兼任ができます。ただし、1つの営業所内に限られます。たとえば、営業所が一つしかない小さな会社では、社長さんが経営業務の権利責任者と専任技術者を兼任しているケースが多いです。

 

スーツを着た男性リーダーを先頭に、部下の会社員たちが後ろに並んでいるイラスト

 

専任技術者になるための要件は、“一般建設業”と“特定建設業”では異なります。“特定建設業”の方が厳しい要件になっています。“特定建設業”では大きな工事を請け負いますので、下請け業者さんを保護する必要があるからだと言われています。

1 “専任”であること

“専任”というのは、働いている営業所に常勤して勤務時間のすべてをその仕事に費やしていることです。勤務状況や給与の支払い状況、人事権の状況などで判断されます。所属は関係ありませんので、よその会社から出向してきた社員でもOKです。

原則として“専任”ではないとされる場合は次のとおりです。

(1)住所が営業所から遠すぎて、常識的に通勤できないと思われる場合

(2)他の営業所の“専任”が必要な職種についている場合

(3)建築事務所で専任が求められる建築士、専任の宅地建物取引士などになっている場合

(4)個人事業主、他の法人の常勤役員などをしている場合

(5)給与の額が月額10万円未満の場合(大阪府の目安)

2 “技術者”であること

“技術者”になるにはいくつかのパターンがあります。大きく分けると次の3つです。

(1)国家資格を持っている場合

この資格はいろいろあります。資格があれば証明が簡単ですので、“学歴が合わない”“実務経験がまったく足りない”という方は、一念奮起をして資格を取得されるのがおすすめです。

資格としては、1級・2級土木施工管理士、1級・2級建築士、建設・総合技術監理、第1種電気工事士、甲種・乙種消防設備士、建築大工の1級など多岐にわたります。

これらの資格があればどの建設業の許可も取れるのかというと、そうではありません。電気工事士は電気工事業だけしか取れませんし、消防設備士は消防施設工事業だけしか取れません。土木施工管理士や建築士など他の資格も、同じように取れる許可の種類は限定されます。

許可を取りたい業種の資格なのかどうかは検討が必要です。

 

スーツを着た大人(社会人)の女性が会社の入社試験や資格などのテストを受けているイラスト

 

(2)実務経験がある場合

許可を取る業種で10年以上の実務経験が必要です。見習いとしての経験を加えてもOKです。ただし、現場の掃除をするなどの雑務のみでは経験として認められませんので注意してください。

この10年間で2つ以上の業種を経験していたとしても、許可で使えるのは10年間で1つだけです。たとえば、塗装工事と防水工事を10年間経験したとしても、許可が取れるのは塗装工事か防水工事のどちらか1つだけです。“10年1業種”が専任技術者の実務経験のポイントです。

中には例外として2業種以上の専任技術者になる場合に期間が短くなる組み合わせもあります。シリーズの最後にQ&A形式でまとめたいと思います。

(3)学歴があって実務経験がある場合

実は、実務経験が10年より短くてすむこともあります。それが指定学科の学歴です。通常は10年の実務経験が必要でも、指定された学科を卒業した人は高卒で5年、大卒で3年に短縮されます。

たとえば、大学の土木工学科を卒業した人は土木工事業や左官工事業、しゅんせつ工事業などの許可を取るときに実務経験が3年ですみます。

学科の一覧表が公表されていますがかなり大雑把な分け方ですので、実際には同じ内容を学習する学科でも名前が異なる場合があります。こればっかりは役所に問い合わせないとはっきりしません。

 

外見や経済力や学歴など男性社会の中に暗黙の了解的に存在する順位をピラミッドで表したイラスト

 

(4)指導監督的実務経験がある場合(特定建設業のみ)

一定の資格を持っていて指導監督的実務経験があれば、特定建設業の専任技術者になることができます。

しかし、“指定建設業”の許可を取るときにはこのパターンは使えません。“指定建設業”は7つありまして、“土木工事業”、“建築工事業”、“電気工事業”、“管工事業”、“鋼構造物工事業”、“舗装工事業”、“造園工事業”です。

指導監督的実務経験は、元請で受けた工事の監督経験、請負金額が4500万円以上、通算で2年以上の3つの要件をすべて満たさないといけません。

 

 

| 実務経験の確認に必要な書類

 

1 実務経験が必要な場合
(1)工事の実績確認書と工期・工事名・工事内容・請負金額が確認できる書類

具体的には工事の契約書・注文書・請求書・内訳書などの書類です。

証明したい業種について12カ月以上空白期間がないように書類を集めます。必要書類で収集が最も大変な書類の一つです。10年の実務経験で許可を取るなら10年分、3年の実務経験で許可を取るなら3年分の書類が必要です。

(2)実務経験の経験期間に在籍していたことが分かる書類

年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票、確定申告書の第一表と専従者給与欄の氏名・金額の記載書面(証明者が個人事業主の場合)のどれか1つが必要です。

 

シンプルな、青い年金手帳のイラスト

 

2 指導監督的実務経験が必要な場合(特定建設業のみ)
(1)元請・工期・工事名・工事内容・請負金額(4500万円以上)を確認できる書類

具体的には工事の契約書・注文書・請求書・内訳書などの書類になります。“元請”の確認が必要になりますので注意してください。

証明する2年間で12カ月以上空白期間がないように書類を集めます。これも集めるのが大変な書類の一つです。

(2)実務経験の経験期間に在籍していたことが分かる書類

年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票、確定申告書の第一表と専従者給与欄の氏名・金額の記載書面(証明者が個人事業主の場合)のどれか1つが必要です。

 

机の上でレシート等の書類と電卓を並べて、確定申告の申告書に収入金額などを記入している男性のイラスト

 

 

 

| まとめ

 

1 専任技術者になるパターンは3種類+1!

2 必要書類は収集が大変な書類の1つ!

3 特定建設業の場合は指導監督的実務経験が必要!



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建設業の許可を取るポイント! ~経営業務の管理責任者~

| 建設業の許可を取るための要件

 

建設業の許可をとるためにはいくつかの要件を充足してなければなりません。特に注意が必要なのは次の4つです。

1 経営業務の管理責任者

建設業の経営に携わった経験を問われます。

2 専任の技術者

国家資格や実務経験のある人が常勤していなければなりません。

3 財産的基礎

きちんとした施工をするという信用のための相応の資金がなければいけません。

4 事務所の有無

見積りや契約などをする事務所がなければなりません。

 

ヘルメットを被ってチェックシートを確認しながら工事現場を指揮している、現場監督(責任者)のイラスト

 

順番にポイントを書きます。今回は“経営業務の管理責任者”の要件についてです。

 

 

| 経営業務の管理責任者になるための要件

 

経営業務の管理責任者は経営者です。法人が許可を取る場合には、常勤の役員のうち1人だけ要件を満たしていればOKです。個人の方が許可を取る場合には、個人事業主か支配人のうち1人が要件を満たしていればOKです。

建設業者の経営者になって許可を取るためには5年以上の経営の経験がなければなりません。特に常勤であったかどうかは重要で、書類で確認されます。

必要な経営経験の年数は4つに分けられています。

 

男性の経営者や会社員が、仕事の戦略(策略)を練っている様子を描いたイラスト

 

1 許可を取る業種に関する経営経験 : 5年

たとえば“とび・土工工事業”の許可を取るときには、“とび・土工工事業”の経営経験が5年以上必要です。

“いやいや、これから許可を取って建設業をするのにその経営経験があるわけないでしょ?”と思われた方!確かにおっしゃる通りです。

ただ、建設業の許可がなくても建設工事ができる場合がありました。“建築一式工事”以外なら500万円未満の工事を請け負う場合です。

一般的な一人親方だと1回の工事で500万円以上になることは少ないと思われます。300万円くらいまでの工事が多いのではないでしょうか?一人親方は経営者であり職人さんです。ですから、小さな工事を請け負って技術を磨いてきた人であれば経営経験の5年を満たすことができます。

問題になるのは、会社の従業員として技術を磨いてきた人です。このような方は経営経験がありませんから、個人で建設業の許可を取ることは難しくなります。しかし、不可能ではありません。次の“経営業務の補佐”の経験があれば許可を取ることが可能です。

2 許可を取る業種に関する、経営者に準ずる地位 : 5年~6年

許可を取る業種に関して建設会社の役員を5年以上していた方は経営業務の管理責任者になれます。難しく言いますと、(1)取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受けていること、(2)移譲された権限に基づいて執行役員などとして経営業務を総合的に管理していること。この二つの要件を満たすことが必要です。

もう一つあります。

許可を取る業種に関して経営業務の補佐を6年以上してきた方は経営業務の管理責任者になれます。この“補佐”って何でしょうか?取締役、理事、支配人、支店長、営業所長など対外的に責任を負う地位にある人です。個人事業主の場合は、青色申告の“青色申告決算書”や白色申告の“収支内訳書”に事業専従者欄に氏名と賃金額が書いてあればOKです。たとえば一緒に事業を営んでいる息子さんが事業専従者である場合などです。これらは提出書類にもなっています。

3 許可を受けようとする業種“以外”に関する経験 : 6年

上に書いた1と2は“許可を取る業種”に関する経験でしたが、3は“許可を取る業種以外”に関する経験です。これには2つあります。経営者としての経験と役員としての経験です。

上に書いた1と2に似ていますが、注意しなければいけないことがあります。それは“経営業務の補佐”です。“補佐”の経験で経営業務の管理責任者になるためには“許可を取る業種”でなければなりません。“許可を取る業種以外”で“補佐”の経験があったとしても経営業務の管理責任者の要件を満たさないのです。“補佐”はその業種だけです。

4 国土交通大臣が1~3と同等以上の能力があると認めた者

 

建設業許可_経験年数まとめ表

 

 

 

電柱に登って工事をしている、電気工事士の男性のイラスト

 

 

| 経営経験の確認に必要な書類

 

1 経営業務の管理責任者としての経験の場合
(1)法人の場合

(あ)法人税の確定申告書のうち、別表一と決算報告書

営業の実態を確認されます。“税務署の受付印”か“税務署の受信通知”が必須です。証明したい期間の分がすべて必要です。5年なら5年分、6年なら6年分です。

(い)工事内容・期間、請負金額を確認できる書類

営業の実績を確認されます。工事の契約書や注文書、請求書などが必要です。12か月以上の空白期間がないように書類を集めなければいけません。必要書類で収集が最も大変な書類の一つです。

(う)商業登記簿謄本・閉鎖謄本

役員が常勤であったかどうかを確認されます。法務局で取得できます。

(え)法人税の確定申告書のうち、役員報酬手当及び人件費等の内訳書

こちらも役員が常勤であったかどうかの確認書類です。役員期間が途切れていなければOKです。

(2)個人の場合

(あ)所得税の確定申告書のうち、第一表

営業の実態を確認されます。“税務署の受付印”か“税務署の受信通知”が必須です。証明したい期間の分がすべて必要です。5年なら5年分、6年なら6年分です。

(い)工事内容・期間、請負金額を確認できる書類

営業の実績を確認されます。工事の契約書や注文書、請求書などが必要です。12か月以上の空白期間がないように書類を集めなければいけません。必要書類で収集が最も大変な書類の一つです。

 

税務署の前で確定申告の申告書が入った封筒を持って立っている男性のイラスト

2 執行役員などの経験の場合
(1)提出書類の中にある“経営業務の管理責任者証明書”に押した印鑑の印鑑証明書

証明者の3か月以内の印鑑証明書が必要です。

(2)地位を証明するための書類

法人組織図などがあればOKです。

(3)担当していた事業部門の確認書類

役員として担当していた事業部門がどのような部署なのかを確認するための書類です。業務分掌規程があればOKです。

(4)役員としての業務執行の確認書類

会社の定款、取締役会規則、執行役員規定、取締役終業規定などがあればOKです。

(5)業務執行の実績を証明する書類

法人税の確定申告書のうち別表一と決算報告書、工事内容・期間、請負金額を確認できる契約書などの3つが必要です。“経営業務の管理責任者としての経験の場合”と同じ書類です。

 

契約前に商品やサービスに掛かる費用を見積もった金額を記載した、見積書のイラスト

 

3 補佐経験の場合
(1)提出書類の中にある“経営業務の管理責任者証明書”に押した印鑑の印鑑証明書

証明者の3か月以内の印鑑証明書が必要です。“執行役員などの経験の場合”と同じ書類です。

(2)地位を証明するための書類

法人組織図などがあればOKです。これも“執行役員などの経験の場合”と同じ書類です。

(3)補佐経験の期間を証明するための書類

法人の役員の補佐経験の場合は、年金の被保険者記録照会回答票雇用保険被保険者証雇用保険被保険者離職票のうちどれか1つが必要です。

個人事業主の補佐経験の場合は、個人事業主の所得税の確定申告書のうち第一表、事業専従者欄などに氏名と賃金額の記載のある書類(青色申告決算書や収支内訳書)の両方が必要です。

(4)経験年数(6年)を確認する書類

証明者が法人の場合、法人税の確定申告書のうち別表一と工事内容などが確認できる契約書などが必要です。証明者が個人事業主の場合、所得税の確定申告書のうち第一表と工事内容などが確認できる契約書などが必要です。

 

短くまとめたつもりでしたが、長くなってしまいました。ごめんなさい。実は、まだまだ細かいルールがたくさんあります。期間の数え方、今はつぶれてしまった会社での経験の証明方法、経営経験の合算方法、解体業の特例などなど、本当に細かいです。シリーズの最後にQ&Aのような形でご紹介できたら・・・と考えています。

今後ともよろしくお願いします。

 

 

| まとめ

 

1 建設業の許可を取るための重要なポイントは4つ!

2 経営者になるための経験年数は4種類!

3 証明するのは実態・実績・地位・常勤・期間です!



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