| 成年後見制度ってなに?
成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な人のために財産を管理したり契約をしたりする後見人を選任して判断能力が不十分な人を保護する制度です。
法定後見制度と任意後見制度があり、違いは裁判所が後見人を選ぶのか本人が事前に後見人を選ぶのかの違いです。法定後見制度には“後見”“保佐”“補助”の3つがあります。
大きな問題が起こるのは“後見”ですので、ここでは“後見”に絞って書きたいと思います。
裁判所から成年後見人が選任されると、本人の財産はすべて成年後見人が管理します。裁判所は成年後見人の提出した書類をチェックするだけです。このような大きな権限が問題を起こしてしまう原因になっています。
| 後見人による横領事件
後見人になる人で一番多いのが親族です。最高裁判所の資料によると約28%(約9700件)です。次に、司法書士(27%、約9400件)、弁護士(23%、約8000件)、社会福祉士(約11%、約4000件)と続きます。行政書士は799件でわずかに約2%です。
10年ほど前は90%近くが親族だったことに比べると、司法書士や弁護士が担い手になってきていることがわかります。
それに対して、後見人の不正事件は増加傾向にあります(内閣府資料による)。平成23年には約300件だったのが、平成26年には800件を超えました。平成27年には減少して約500件になっています。
その9割以上が親族などの専門職以外が後見人になっているケースです。後見人としての認識の甘さが事件を引き起こしているようです。被害総額は50億円程度(平成27年は約30億円)ですからちょっと魔が差したという範疇を超えています。
ただ、全体の1割に満たないにしても士業などの専門家による事件が起きていることが問題です。信頼が命綱の法律のプロによる犯罪ですからね。士業全体の信用にもかかわってきます。業務上横領罪で捕まることがわかっていて、それでも犯行に及ぶのですからかなり強い誘惑のようです。
自分の財産管理ができない人間が他人の財産管理をするなんてありえません!
| トラブル防止方法
不正事件を防ぐ方法としての1つ目は、信頼できる人を任意後見人として選任しておくことです。
判断能力が衰えた後、後見人にどのような支援をしてもらうのかは自由に決められます。ただし、判断能力がしっかりしているうちに契約をしておかなければなりません。
2つ目としては、後見監督人を選任してもらう方法です。
後見監督人は後見人を監督する役目を担っていますので、何かおかしいと思ったときに後見人に事務の報告をさせることができます。チェック機関として働きますのでトラブルの回避に役立ちます。
3つ目としては、確率の問題になりますが、家庭裁判所に士業の後見人を選任してもらうことです。
それだけで事件の9割を防げると思っていいでしょう。ごく一部の士業が事件を起こしていますが、ほとんどの士業は依頼者の利益のために頑張っています。
| まとめ
1 成年後見制度は判断能力の不十分な人を支援する制度
2 後見人の横領事件は年に数百件!
3 不正事件を防ぐためには士業を選任するのもあり!