行政書士試験の振り返り 問題21・22

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)でした。

合格された方、おめでとうございます!登録をして行政書士としてがんばろう!と思われる方もいらっしゃると思います。よろしくお願いします。

惜しくも不合格の方、お疲れ様でした。2021年の試験も受験しようと思われる方は、どうぞこのブログの試験問題検討ページをご覧になってください。試験合格にお役に立てると嬉しいです。

さて、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回は国家賠償法と地方自治法です。

 

 

| 問題21 正解肢5

 

国家賠償法に関する問題です。判例の内容を問うています。

肢1 宅地建物取引業法(最判H元.11.24)

宅建業者(不動産屋)に宅建業免許を許可した行政庁(知事や国交省大臣)には宅建業者を監督する義務があります。また、不正な行為をした宅建業者に対して何らかの処分をする権限があります。そうだとしても、宅建業者が不正をしたにもかかわらず、行政庁が業務停止処分や免許取消処分などの処分を行わなかった場合、行政庁の権限不行使が著しく不合理でない限り、被害者との関係で国家賠償法1条1項の“違法”にはならないとされています。

肢2 建築基準法(最判H17.6.24)

建築基準法上の建築確認は、以前は都道府県や政令指定都市の建築主事が行っていましたが、最近はもっぱら民間の指定確認検査機関が行っています。指定確認検査機関は行政庁の監督に服します。ですから、指定確認検査機関が行う建築確認は地方公共団体の事務だとされています。そうだとすれば、国家賠償法1条1項の“公権力の行使”にあたります。

肢3 公害健康被害補償法(最判H3.4.26)

水俣病患者の認定申請があった場合、行政庁には申請に対する処分をする義務があります。この義務に違反したというためには、期間内に処分をしなかったことに加えて、さらに長期にわたって処分がなく、その間に遅延を解消できたにもかかわらず遅延を回避するための努力をしなかったことが必要だとされています。ですので、期間内に処分がなかったというだけでは直ちに国家賠償法1条1項の“違法”になるわけではありません。

肢4 裁判官の裁判(最判S57.3.12)

裁判官の裁判で瑕疵があったとしても、通常、裁判官の裁判は国家賠償法1条1項の“違法”にはあたりません。ただし、裁判官の権限の趣旨に明らかに背いて行使したと認められる事情がある場合には、国家賠償法1条1項の“違法”の評価を受けることがあります。

肢5 検察官の公訴提起(最判S53.10.20)

検察官の公訴提起も、裁判官の裁判と同様に、無罪の判決が確定したとしても直ちに国家賠償法1条1項の“違法”の評価を受けるわけではありません。起訴前に行った逮捕や勾留についても同じです。

 

 

| 問題22 正解肢1

 

地方自治法の住民に関する問題です。組合せ問題になっています。

肢ア 市町村と都道府県の住民

ある市町村の住民は、その市町村がある都道府県の住民になります(地方自治法10条1項)。たとえば、大阪府門真市の住民は、門真市の住民であると同時に大阪府の住民でもあります。当然と言えば当然ですね。

肢イ 外国人の参政権

普通地方公共団体の選挙権は日本国民にあります(地方自治法11条)。地方自治法上では外国人に参政権はありません。

肢ウ 住民の権利と義務

住民には行政サービスを受ける権利と費用を分担する義務があります(地方自治法10条2項)。無料でゴミの回収をしてもらう代わりに市民税を納付するようなものです。

肢エ 住民の条例制定・改廃請求権

住民には条例を制定したり改廃したりするための請求権があります。ただし、請求権者は選挙権を持っている人だけです。ですから、17歳未満の住民には条例制定・改廃請求権はありません。また、税金の賦課に係る条例などには制定・改廃請求できないものもあります。

肢オ 住民の記録の整備義務

住民の記録を正確に整備する義務があるのは市町村です(地方自治法13条2項)。都道府県ではありません。いわゆる住民票(住民基本台帳)です。住民票の写しは市町村役場で発行してもらいますよね。

 

 

| まとめ

 

1 裁判で無罪でも裁判官や検察官は“違法”じゃない!?

2 外国人には地方自治の参政権はない!?

3 選挙権がなければ条例制定請求は不可!



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