前回から財政についてのお話を始めました。国が集めるお金に関しては国会による民主的コントロールが及んでいて、課税や徴収には法律が必要でした。宗教団体や公の支配に属しない団体への支出についても原則として禁止されています。
今回は財政の中でも予算について書きたいと思います。昨今はコロナ関連での予算について色々と話題になっていますね。興味を持って読んでいただけると嬉しいです。
| 予算はどうやって決まるの?
予算は国会で決められます(財政民主主義)。毎年4月1日から3月31日までの国の財政を決めるのが予算です。
予算は絶対に変えられないものではありません。少しお金が足りなくなったときにはつぎ足したりする修正を行うことができます。予算を修正するのは国会です。
予算を作成するのは内閣です。国会へ提出するのも内閣です。
憲法 73条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
五 予算を作成して国会に提出すること。
憲法 86条
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
提出された予算は最初に衆議院で議決されます。衆議院の優越も認められています。
憲法 60条
予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
| 予算は法律?
予算は国会で決められる財政のルールです。内閣は予算に従ってお金を使わなければいけません。内閣の行為を拘束しますから“法”だと考えるのが通常です。
ただし、予算は内閣を拘束しますが国民は拘束しません。ですから、予算は法律ではないけれども法律のようなものだと考えられています(予算法形式説)。
| 予算の修正方法
予算を修正するのは国会です。修正とはいっても、実際にお金を使う場面では予算が余る場合だけでなく予算が足りない場合も生じます。
予算が余る場合(減額修正)は特に問題はないのではないでしょうか。一度国会で決めた予算が余ったので次年度に繰り越そうというのを反対する人は少ないでしょう。
逆に予算が足りない場合(増額修正)は問題です。足りないお金をどのようにして調達するのか、どのような事に使うのかなど問題が山積みです。このような場合には、予算の同一性を損なうような修正は禁止されています。全く関連性のない余っているところからちょっと拝借するということはできないようになっています。
では、予算を決めたときには予想できなかった事態が生じた場合はどうすればいいでしょうか。たとえば2020年の春に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症への対策があります。
このようなときのために、国会の議決に基づいて予備費を設けることができます。予備費は内閣の責任で支出されますが、後から国会の承諾が必要です。国会の少額を得られない場合には、内閣の政治責任が生じます。
憲法 87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
| 暫定予算ってなに?
3月の半ばも過ぎると国会での予算審議も大詰めです。議論が煮詰まっていればいいのですが、議論が紛糾して3月中に予算が成立しそうにない場合には4月からのお金の使い方が決まりません。そうするとお金を使うことができず公共事業が滞ったり公務員の給料が出なかったりします。
そうなるのを防ぐために、予算が成立するまでの間、一時的に実行される予算が組まれます。それが暫定予算です。暫定予算は正式な予算が成立すると執行します。
| 決算は何をするの?
4月1日から3月31日までの一会計年度が終わると、実際の収入(歳入)や支出(歳出)を計算することができます。予算で決めた使い方のとおりに使われているか、無駄な支出がないかなどの検査を決算といいます。
決算はまず会計検査院が検査します。会計検査院は独立行政法人で、検査が終わると内閣が国会に検査報告と決算を提出します。
憲法 90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
| まとめ
1 予算は内閣が作成・提出して国会が審議・決定!
2 予算には緊急事態用の予備費がある!
3 会計検査院の決算で一会計年度の締めくくり!