2019年の行政書士試験が11月10日(日)に行われてから1か月以上が経ちました。受験生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。合格の発表は2020年1月29日(水)です。待ち遠しいですね。
合格発表までの間に2019年度の行政書士試験の択一の検討をしたいと思います。
今回は、2019年の問題4、問題5です。
| 行政書士試験の憲法検討(問題4~問題5)
問題1~2は基礎法学ですので割愛します。憲法の択一は問題3~7の5問、多肢選択は問題41の1問です。
【問題 4】
家族・婚姻についての問題です。判例問題です。妥当な肢を選びます。
1 法律婚の保護という立法目的を重視すると、非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする民法の規定は合憲に傾きます。法律婚を保護するからこそ嫡出子を非嫡出子よりも優遇していたのです。民法900条4号の違憲判決が出されたのは、家族形態の変遷、個人の尊重という観点を重視したからです。
2 判例によれば、国籍法の立法目的は問題文のとおりです。また、立法当時に認知と準正を日本国籍取得の要件としたことは立法目的との間に一定の合理的関連性があったとされています。ただ、社会的環境の変化等によって目的と手段との合理的関連性は失われており、不合理な差別を生じさせていると判断されました。
3 出生届への嫡出子か非嫡出子かの区別の記載は、不可欠とまでは言えないとしながらも戸籍法の規定に合理性がないとは言えないとし、また戸籍法の規定自体によって親子の法的地位に差をもたらすものではないことから、戸籍法の規定を合憲としました。
4 判例によれば、再婚禁止期間は100日を超える部分については違憲とされています。ただ、100日までの部分について憲法判断はされていません。判旨では、100日の再婚禁止期間によって父性の推定の重複が回避されると述べられています。再婚禁止規定のすべてを違憲としたのではありません。
5 判例では、近年の晩婚化による不利益を被る者が増加してきていることを認めています。しかし、夫婦がいずれの氏を称するかは夫婦になろうとする者の間の協議に委ねられているので、法の文言上性別に基づく法的な差別的取り扱いを定めているわけではないともされています。結論としては憲法14条1項に違反しないとされました。
【問題 5】
選挙権・選挙制度についての問題です。判例問題です。妥当でない肢を選びます。
1 選挙権自体の制約はやむを得ない事由がなければできないとされています。また、選挙権の行使に対する制約についてもやむを得ない事由がなければできません。国会の広い裁量が認められるのは選挙制度の選択についてです。
2 立候補の自由は選挙権の自由と表裏の関係にあります。ですから、選挙権の自由への制約と同じように、立候補の自由に対する制約も特に慎重になされなければいけません。
3 選挙運動の認められる政党に属する候補者とそれ以外の候補者との間に選挙運動での差異が生じたとしても、その差異が一般的に到底考えられないほどの非合理性に達してはじめて平等原則違反になるとされています。
4 小選挙区制は、死票が多く出たとしても、特定の政党のみを優遇する制度とはいえません。小選挙区制の採用は国会の広い裁量の範囲内があり、合理的な方法の一つだとされています。選挙制度はメリットとデメリットをまとめておくと勉強がはかどります。
5 比例代表選挙制度はたとえ単純拘束名簿式であったとしても、当選人の決定方法として候補者個人に投票する方式と異ならず直接選挙といえるとされています。
| まとめ
1 嫡出子と非嫡出子に関する判例は重要!
2 選挙権自体の制約と選挙権の行使に対する制約は区別して!
3 選挙制度はメリット・デメリットをまとめておきましょう!