行政書士試験(平成30年度)の記述問題

| 平成30年度の行政書士試験

 

平成30年11月11日(日)に行政書士試験が行われ、5万人余の方が申し込まれました。平成29年度よりも1300人くらい減っています。受験者数は4万人弱、3万8000人くらいでしょうか。

近年の合格者数は約5000人程度ですので、合格率は10~15%くらいかもしれません。こちらも例年通りになりそうです。試験問題はほとんど見ていませんので、今年の難易度は分かりません。

受験をされた皆さん、お疲れさまでした。

 

 

| 記述式問題の考え方

 

記述式の考え方で悩まれる受験生は多いと思います。また、配点が60点もありますのでできるだけ高得点を狙いたいのではないでしょうか。

行政書士試験の全問をここで考えるのは不可能ですし正答を導く自信もありませんので、記述式だけでも私なりの解答への道筋を書きたいと思います。“私アシュラが解答を書くならこうする”程度の解答例で必ずしも各問20点を取れるわけではありませんが、私の思考回路で書きやすい言葉を使って高得点を狙えるように考えました。

残念ながら著作権の関係で問題文を記載することができません。問題文は行政書士試験センターのサイトをご覧ください。ただ、問題が分からないと何が何だか分からないですから要約だけを書きます。かなり端折っていますのでご了承ください。

(知識)と書かれているところは知識が必要なところです。(思考)と書かれている部分は試験の現場で考えるところです。

1 問題44

【問題文】(要約)

A県で農地転用許可を求めたXが申請書を提出しましたが役所は受理しませんでした。農地転用の許可をもらうために誰を被告にしてどのような訴訟を提起すべきか、40字程度で答えなさい。

【考え方】(難)

“誰を被告にするか”から考えたくなりますが、行政法は訴訟の類型によって被告が変わります(知識)ので、まずはどのような訴訟をするのかを考えます。

Aは申請書が受理されませんでしたので、許可や不許可という知事の処分がなされる前段階で門前払いをされています。“許可を求めているのに処分がなされていない”ということですから行政庁の不作為です(思考)。そこで、不作為の違法確認訴訟(行政事件訴訟法第3条第5項)の提起が考えられます。

さらに、Aは申請をしても受理してもらえず相当の期間何も処分がなされないことから、“農地転用の許可をもらうために”訴訟を提起することにしました。ですから、“農地転用の許可処分をせよ”という内容の判決文をもらうための義務付け訴訟が考えられます(知識、思考)。いわゆる申請型の義務付け訴訟(同法第3条第6項第2号)ですね。仮の義務付け訴訟(同法37条の5第1項)までは無理だと思われます。

訴訟類型が決まりましたので、誰に対して訴訟するのかを考えます。不作為の違法確認訴訟と義務付け訴訟はどちらも抗告訴訟(同法第3条第5項、第6項第2号、知識)ですから、被告は原則として行政主体(国や地方公共団体)、つまり本問ではA県になります(同法第38条第1項、第11条、知識)。例外もありますのでご注意ください。

では、不作為の違法確認訴訟と義務付け訴訟の2つの訴訟をどのようにして提起すべきでしょうか。2つの訴訟で原告と被告が同じですから、一度に紛争を解決するために訴えの併合審理をするのが時間も費用も手間も少なくすみそうです(思考)。そこで、申請型の義務付け訴訟を提起する場合には不作為の違法確認訴訟も併せて提起するように法律上定められています(同法37条の3第3項第1号、知識)。

以上を問題文に沿って解答します。

【解答例】

A県を被告にして、不作為の違法確認訴訟と農地転用許可の義務付け訴訟を併合提起する。(41字)

2 問題45

【問題文】(要約)

AはBに絵画を売る契約をしましたが、Bは成年被後見人でした。Bの成年後見人はCです。同じ絵をDからも売ってほしいと打診がありましたので、AはDに売りたいと考えています。Aは、誰に対してどのような催告をしてどのような結果を得る必要があるか、40字程度で答えなさい。

【考え方】(やや易)

成年被後見人のする契約は原則として取り消しうる契約ですから(民法第9条)、AはBとの契約をなかったことにしたいですね(思考)。成年被後見人のような制限能力者を取引相手にする場合には、“追認”という制度を使います(同法第20条、知識)。制限能力者の種類によっては行為ごとに追認権者は変わりますが、成年被後見人には意思受領能力がありませんので追認権者は成年後見人です(同法第20条第2項、知識)。本問では成年後見人のCに対して追認をするかどうかを問い合わせます。

催告の方法は、Cに追認をするかどうかを確答してもらうように促します。確答がなければ追認が擬制されますし、確答があればその内容になります(同法第20条第2項、第1項、知識)。AがDに絵を売るためには追認しない内容の結果をCからもらう必要があります。

以上を問題文に沿って解答します。

【解答例】

Cに対して本件契約を追認するか否かを確答するように催告して追認拒絶の結果を得る。(41字)

3 問題46

【問題文】(要約)

Aは自動車をBに贈与する口約束をしました。ところが、Bに自動車を引き渡す前に、Aは贈与契約をなかったことにしたいと考えなおしました。Aは、どのような理由でどのような法的主張をすべきか、40字程度で答えなさい。

【考え方】(易)

本来、契約は口頭での約束だけでも成立します。争いになった場合に証明できるかは別ですが…。しかし、贈与契約は気軽にしてしまいがちで、本問のように後から気が変わることも多々あります。そこで、贈与契約を書面でしていない場合には撤回することができます(知識)。ただし、既に履行した部分は撤回できません(民法第550条、知識)。

以上を問題文に沿って解答します。

【解答例】

Aは贈与契約が書面によらず未履行であることを理由として撤回すると主張すべきである。(41字)

 

 

| まとめ

 

1 平成30年度の合格率は10~15%くらい!?

2 記述式第44問(行政法)は難しい!

3 記述式第45~46問(民法)は高得点を狙えるかも!



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