前回まで4回にわたって中小企業の安全や衛生の管理者などについてまとめました。一般的な業種を念頭に置いていましたが、建設業などは別の仕組みがあります。今回は建設業の安全と衛生についてまとめました。
| 建設業の安全・衛生の仕組み
建設などの現場の多くには元請業者と請負業者がいます。元請業者が仕事を取ってきて下請業者に仕事をしてもらいます。実際に建設するのは下請業者です。
安全や衛生の管理は、元請業者と下請業者では管理者が異なっています。一人親方などの個人事業主が多い下請業者に安全や衛生の義務や責任を多く押し付けても、実際にはできそうにありません。
そこで、比較的大きな会社である元請業者に多くの義務や責任を負わせて下請業者の義務や責任を軽減しています。選任義務や資格などをまとめます。
| 請負業者の選任義務
下請業者は安全衛生管理者を選任します。元請業者が統括安全衛生責任者を選任している場合だけです。安全衛生管理者に資格は必要ありません。専属や専任でなくてもかまいません。
業務内容は、統括安全衛生責任者との連絡、統括安全衛生責任者からの連絡を関係者へ連絡、他の下請業者の安全衛生責任者との作業連絡・調整などです。
| 元請業者の選任義務
元請業者が常時30人以上または常時50人以上の労働者を使用している場合には統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者を、常時20人以上30人未満または常時20人以上50人未満の場合には店社安全衛生管理者を選任します。
30人と50人の違いは次のとおりです。
・30人で区分される業種
隧道などの建設、橋梁の建設、圧気工法による作業
・50人で区分される業種
その他の建設業、造船業
1 統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者は、元請安全衛生管理者の指揮のほか、次の事項の統括を主な業務とします。
・協議組織の設置と運営
・作業連絡と調整
・作業場所の巡視
・下請業者が行う安全衛生教育への指導や援助など
統括安全衛生責任者は免許や経験などの資格は必要ありません。専属や専任でなくてもかまいません。
2 元方安全衛生管理者
元請安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者を選任した場合でかつ建設業の場合に選任されます。統括安全衛生責任者の業務内容のうち技術的事項を管理します。“技術的事項”ですから資格が必要です。
・理系大学卒または高等専門学校卒で、3年以上の建設工事の施工での安全衛生の実務経験者
・理系高校卒で、5年以上の建設工事の施工での安全衛生の実務経験者
・その他、厚生労働大臣が認める者
さらに、事業場に専属でなければいいけません。専任である必要はありません。
3 店社安全衛生管理者
比較的小さな元請業者で、統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者の代わりをするのが店社安全衛生管理者です。業務内容は主に次のとおりです。
・労働災害の防止のための措置に関する事項を担当する者への指導
・毎月1回以上の作業場の巡視
・作業の実施状況の把握
・協議組織の会議への随時参加
安全衛生の管理者として次の資格が必要です。
・大卒または高専卒で、3年以上の建設工事の施工での安全衛生の実務経験者
・高卒で、5年以上の建設工事の施工での安全衛生の実務経験者
・8年以上の建設工事の施工での安全衛生の実務経験者
・その他、厚生労働大臣が定める者
店社安全衛生管理者は専属や専任でなくてもかまいません。
| まとめ
1 一般の業種と建設業などでは安全・衛生体制が異なります!
2 請負業者の義務や責任は小!
3 元請業者の義務や責任は大!