家族信託という方法

| 家族信託ってなに?

 

家族信託は信頼できる家族に財産を託して管理や処分を任せる制度です。平成19年から始まりました。家族信託を利用する具体例を挙げてみましょう。

たとえば、マンションの大家さんAの場合。大家さんAには家賃収入があります。家族信託をしても家賃収入自体は大家さんAが受け取ります。このマンションの管理を家族信託を使って長男Bに任せると、マンションの管理は長男Bが行います。大家さんAが認知症になってしまったときには、長男Bは信託を受けた範囲でマンションを修繕したり建替えたり売ったりすることができます。これが家族信託です。任意後見と似ていますね。

 

 

| 家族信託と任意後見の違い

 

任意後見制度は、判断能力が低下する場合に備えて、誰にどのような支援をしてもらうかを事前に決めて、それを実行する後見人を前もって決めておく制度です。移行型、即効型、将来型と3種類あります。詳しくは“認知症で迷惑をかけたくない!”をご覧ください。

任意後見制度では財産管理と身上監護を代理してもらいます。身上監護は生活や療養看護のことで、施設入所契約や医療契約などの締結をしたり、安否確認や判断能力の低下の確認をしたりします。

任意後見制度のメリットとデメリットには次のようなものがあります。

【メリット】

1 本人の意思で任意後見人を選ぶことができます。

2 本人が任意後見契約の内容を自由に決めることができます。

3 契約内容を法務局で登記するので、任意後見人の地位が公的に証明されます。

4 家庭裁判所の選んだ任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックします。

【デメリット】

1 任意後見人には法定後見制度のような取消権がありません。

2 本人の判断能力が低下した後には任意後見契約はできません。

3 本人の財産を守ることが目的ですので、任意後見人は財産を売却したり購入したりすることが難しいです。

家族信託のメリットとデメリットには次のようなものがあります。

【メリット】

1 生きている間の財産管理の方法を自由に決められます。

2 亡くなった後の財産を受け継ぐ人を自由に決められます。

3 信託を受けた人は信託された財産を売却したり購入したりすることができます。

【デメリット】

1 身上監護ができません。

2 信託を受ける人を決めるのが難しいです。

3 信託を受ける人に財産を渡すことに不安を感じる人がいます。

 

 

| 家族信託と任意後見の併用

 

上で書いたように、任意後見制度にも家族信託にもメリットとデメリットがあります。一番大きなポイントは、家族信託は財産管理がスムーズにできること、任意後見制度は身上監護ができることです。

これらをうまく活用して、財産管理は家族信託で行い、身上監護は任意後見制度を使うという方法があります。家族信託でどこまで財産管理を任せるのか、家族信託と任意後見制度での財産管理のバランスをどうやってとるのかなど難しい判断が必要ですので、専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

| まとめ

 

1 家族信託は家族に財産管理を任せる制度!

2 家族信託では身上監護ができません!

3 家族信託と任意後見制度の併用ができます!



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遺言でしかできないこと!

| 遺言の方式は厳しい

 

遺言は、遺言者の亡くなった後に効力が生じるものですので、遺言者の意思はハッキリと明確しておかなければいけません。なにしろ、亡くなった後のことですから、分かりにくいところを本人に尋ねて正しく理解することができません。

また、他人による偽造や変造を防止しなければいけません。遺言はいつでも撤回できますので、新しい遺言をすれば以前の遺言は効力を生じません。しかし、亡くなった後は新たに遺言をすることはできませんので、遺言を偽造されたり変造されたりすると偽造・変造された遺言が有効になってしまいます。

ですから遺言はかなり厳しい方式を要求されていて、少しでも不備があると無効になってしまいます。特に自筆証書遺言は遺言者一人で作りますから間違いがあっても訂正してくれる人がいません。せっかく遺言を書いたのに無効になってしまうともったいないですよね。書き方に不安がある場合は専門家に相談するか、公正証書遺言を作るようにしてください。

 

 

| 遺言でしかできないこと

 

“遺言はお金持ちがするもので、一般人の私には関係がない”と思われる方は多いと思います。しかし、実は遺言でしかできないことがあります。次のようなことは遺言でしかできません。

1 後見人・後見監督人の指定

2 相続分の指定、指定の委託

3 遺産分割方法の指定、指定の委託

4 遺産分割の禁止

5 相続人相互の担保責任の指定

6 遺言執行者の指定、指定の委託

7 遺留分減殺方法の指定

この中で重要なのは、“相続分の指定”、“遺産分割方法の指定”、“遺産分割の禁止”、“遺留分減殺方法の指定”の4つです。

相続分の指定は、誰にどれだけの“割合”で相続させるかを決めることです。遺産分割の方法の指定は、誰に何を相続させるかを決めることです。

この2つはよく似ていますが、まったく違うものです。

相続分の指定は、妻に1/3、長男に1/5、長女に1/5、○○基金に4/15を相続させるというような場合です。相続させる割合だけを決めます。

遺産分割の方法の指定は、妻に土地と家屋と現金、長男に○○銀行の預金、長女に全ての株式、○○基金に残りの財産を相続させるというような場合です。相続させるモノを決めます。このような遺言をすると遺産分割手続をしなくても各人に指定された財産が相続されます。

ただし、遺言執行者がいない場合には相続人全員で遺言とは異なる分割をすることができます。一般に遺言といえばこの内容を思い浮かべるくらいメジャーな制度です。

遺産分割の禁止は、遺産の分割をしないようにすることです。ただし5年以内に限定されます。たとえば、遺産である田畑を全ての相続人で分割して相続されてしまうと、農家として後を継ぐ長男が困ってしまいます。このようなときに長男が田畑を手に入れる手段を講じる時間的猶予を与えることができます。長男はお金を調達して他の相続人から田畑の持分を買い取ることもできます。

遺留分減殺方法の指定は、遺留分減殺の方法を“価格の割合”以外の方法に決めることです。価格の割合は相続分の割合と同じと思ってかまいません。遺言でここまでする方は少ないと思いますが、遺言書に遺留分減殺方法が書かれていても文句を言えませんのでご注意ください。

 

 

| まとめ

 

1 遺言の方式は厳格!

2 遺言でしかできないことがあります!

3 相続分の指定もできます!



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結婚してないけど財産を残したい!

| 内縁ってなに?

 

一緒に暮らしているけれど結婚をしていない方が最近増えています。若い方なら“恋人”かもしれません。しかし何年も同居生活をしていると周りの人からは夫婦だと思われていませんか?結婚はしていないけれど、夫婦のように暮らす意思があって、実際にも夫婦のように暮らしている状態を“内縁”といいます。男性を“内縁の夫”、女性を“内縁の妻”と呼びます。

単に同居しているだけの恋人とはどこが違うのでしょうか?

一番の違いはお互いに夫婦として暮らす意思です。いくら周囲から若い夫婦と思われていても、ご本人に夫婦としての意思がなければ内縁ではありません。

 

 

| 内縁と夫婦との違い

 

法律上の夫婦は婚姻届を提出した方です。常識からすると当たり前ですね。婚姻届を提出するときには婚姻の意思が必要ですし、結婚すると周りの人からも夫婦として扱われるでしょう。もちろん、法律上も夫婦として扱われます。

では、内縁関係と何が違うのでしょうか?

内縁関係は、先ほども書きましたとおり、夫婦として暮らす意思があって実際に夫婦として暮らしている状態です。事実としては婚姻届を提出しているかどうかの違いだけです。しかし、法律上は夫婦として扱われません。

婚姻届を提出するかどうかはご本人の自由です。同居している男女が必ず婚姻届を出さなければいけないということはありません。自由を享受して婚姻届を提出しなかったということだけで、法律上夫婦として扱われないのは不満があるのではないでしょうか?

そこで、現在では婚姻に準ずる関係として保護されています。夫婦と同等とみなされていることには次のようなものがあります。

1 夫婦と同じ権利や義務

・貞操義務

・同居・協力・扶助の義務

・婚姻費用分担の義務

・日常家事の連帯責任の義務

・帰属不明の財産の共有推定

・財産分与

・嫡出の推定

2 社会保障上の権利

・配偶者として遺族補償年金を受け取る権利

・配偶者として労働災害の遺族補償を受け取る権利

・配偶者として退職手当を受け取る権利

他方で、夫婦に認められるけれども内縁関係には認められないこともあります。

1 夫婦同姓

2 成年擬制(未成年が婚姻することで成人となる制度)

3 準正(父母の婚姻によって非嫡出子が嫡出子になる制度)

4 配偶者としての相続

同性や成年擬制、準正はまだ納得できるでしょう。婚姻が前提となる制度だからです。ところが相続はどうでしょうか?内縁関係だと相続権がありません。唯一承継できるのが、同居していた家の賃借権です。

内縁の夫が亡くなったというだけで一緒に暮らしてきた場所が奪われるのはあまりにもひどい仕打ちだという価値観から、同居していた家に住み続けることができることがほとんどです。正確には相続ではなく、被相続人の賃借権の援用と呼ばれます。

 

 

| 内縁者が相続する方法

 

賃借権は相続というより権利の援用です。では、本当に“相続”するにはどうすればいいのでしょうか?

1 遺言

もっとも一般的な方法は遺言をしてもらうことです。遺言で相続財産を分ける相手として指定してもらえば相続ができます。

しかし、法定相続人(親や子)の遺留分を侵害することはできません。遺留分を持っている法定相続人(親や子)がいる場合、内縁者は多くても相続財産の半分までしか相続できませんのでご注意ください。

2 特別縁故者

特別縁故者は亡くなった人の身の回りの世話をしていた人です。内縁関係にある人も特別縁故者になることができます。しかし、どのような場合でも相続できるというわけではなく、法定相続人が一人もいない場合に限られます。

特別縁故者になるには家庭裁判所に申請をして認められなければいけません。また、相続税の申告は相続を知ったときから10カ月以内にしなければいけません。さらに、相続税が加算されて通常よりも20%増えてしまいます。

このようにいろいろと不利なことがありますが、それでも遺産を受け取ることができるのは大きな利点ではないでしょうか?

 

 

| まとめ

 

1 内縁関係は事実上の夫婦!

2 法律上不利に扱われることも!

3 相続するなら遺言か特別縁故者で!



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遺言に条件や負担をつける

| 遺言の効力って?

 

遺言があれば書かれている通りに遺産が分配されます。特に事情がない限り、相続人は何もしなくても相続します。

ただし、遺言に条件が付けられていた時は別です。この場合には、遺言に書かれた条件が満たされた時に相続します。たとえば“会社を継ぐなら会社の株を全て相続させる”という具合です。

その他にも、相続人に負担を強いてその義務が履行された時に相続させることもできます。ただし、その義務が相続する利益よりも大きい場合には、相続する利益の範囲内で義務を履行するだけですみます。義務を履行しないときには、他の相続人は遺言の取り消しを家庭裁判所に請求することもできます。

このように、遺言で条件や負担を付けて亡くなった方の意思を実現する方法があります。

 

 

| 遺言は無効になるの?

 

遺言も法律行為ですから、無効になったり取り消されたりすることがあります。いくつか例を挙げてみましょう。

1 意思能力がないときは無効

2 満15歳未満の方の遺言は無効

3 公序良俗違反になる遺言は無効

4 錯誤による遺言は無効

5 詐欺による遺言は取り消すことができる

6 遺言の方式に違反したときは無効

7 複数人が1つの遺言書で遺言したときは無効

8 遺言の目的物が存在しない遺言は無効

9 遺言を撤回したとき

10 負担の付いた遺贈で義務を履行しないときの取消

このように遺言にはいくつもの無効原因や取消原因があります。特に注意しなければいけないのは、遺言の方式に違反する場合です。自筆証書遺言をワープロで書いていたり日付が平成30年4月吉日になっていたりすると無効になります。不安な時には専門家に相談してください。

 

 

| まとめ

 

1 遺言には条件や負担をつけることができます!

2 遺言が無効になる場面は多いです!

3 負担付の遺贈は義務を履行しなければ取り消される可能性あり!



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遺言って何を書くの?

| 遺言に書けること

遺言には相続の分配方法を書くことが多いですが、もちろんそれ以外のことを書いてもかまいません。たとえば“家族仲良く暮らすように”とか“遺言書のとおりに相続して争わわないように”などと書かれることがあります。

相続は亡くなられることによって始まります。亡くなられた方の最終的な意思に基づいて相続されます。ですから、金銭的なことや法律的なことだけでなく、今後の家族を心配する最期の言葉が書かれるのですね。

| 遺言ができる年齢

遺言は未成年でもできます。満15歳以上の方であれば有効な遺言になります。法定代理人、つまり父母などの同意は必要ありません。

前回の“遺言を書くほど財産がない!”で書きました遺言の種類のうち、“普通の方式”で遺言をする場面は少ないでしょう。しかし、15歳以上の未成年者であっても“特別の方式”で遺言する可能性はあります。病気や事故などで命の危険にさらされるのに年齢は関係ありませんから、高校生になったら遺言の書き方を知っておくといいかもしれません。

| 相続させる方法

相続人に相続させる方法としては2つあります。“包括遺贈”と“特定遺贈”です。

1 包括遺贈

包括遺贈は、相続財産の全部を一人に与える場合と一部を一定の割合で相続人に分ける場合があります。

たとえば、妻に相続財産の12、長男に相続財産の18、長女に相続財産の18、次男に相続財産の18、残りを〇〇基金に寄付するといった具合です。

相続人と相続する割合を指定する方法ですね。遺産の一部を受け取った〇〇基金は相続人と同じ権利義務を持ちます。後に誰が何を相続するかを改めて決める必要があります。

2 特定遺贈

特定遺贈は、具体的な財産を指定して相続させる方法です。

たとえば、妻に〇〇市△△町□番□号の土地と建物、長男に〇〇銀行△△支店口座番号×××××××の預金、長女に〇〇名義の株を全て、次男に〇〇名義の車と△△銀行××支店口座番号・・・・・の預金、残りの財産を妻に相続させるという具合です。

遺言といえばこちらを思い浮かべられる方が多いでしょう。法定相続人だけを指定している場合には、相続財産の分け方を指定したと考えられます。もちろん、第三者に相続させることもできます。

| 相続させる相手

遺言で相続させる相手は法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)だけではありません。〇〇基金のような第三者でもいいですし、“廃除”した法定相続人に相続させることもできます。

“廃除”は、配偶者や親や子が、被相続人の生きている間に虐待したりきつく侮辱したり著しい非行があったときに家庭裁判所に対して請求する制度で、廃除が認められると相続する権利がなくなります。この廃除も遺言によって覆すことができるのです。

| まとめ

1 遺言には最後の言葉を!

2 遺言は15歳から!

3 遺産の分け方は2通り!

4 遺言で第三者も排除した相続人も相続可能!



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