| チバニアンをご存知ですか?
地球が誕生してから約45億年が経ったと言われています。「いきなり何のこっちゃ?」と思われるかもしれませんが、チバニアンは地球の磁気(地磁気)と関係しています。今の地磁気は、北極がN極、南極がS極ですよね。実は、地磁気のN極とS極は地球が誕生してから何度も逆転しています。少なくとも過去360万年間で11回逆転したと考えられています。
“チバニアン”は約77万年前~約12万6千年前の時代の地質です。千葉の市原市にある地層です。この地層の中に最後に地磁気が逆転したとされる証拠があるのです。約78万年前の出来事です。“チバニアン”が地磁気逆転の代表的な地層と正式に認められるかどうかはまだ決まっていません。
地磁気の逆転現象は、富士の樹海で方位磁石が狂ってしまうことの原因とされています。地磁気が逆転するなんて不思議ですね。
| チバニアンで商売!
最後に地磁気が逆転した証拠がある地層“チバニアン”。この名前で商売をしようとする人が現れました。千葉県市原市の個人が“チバニアン”を商標登録したのです。
商標権は知的財産権の一つです。知的財産権には、商標権の他に特許権、実用新案権、意匠権、著作(隣接)権、育成者権、回路配置利用権などがあります。著作(隣接)権以外の産業財産権は登録をすることによって権利が発生します。著作権は創作した時点、著作隣接権は実演などを行った時点で自然に発生します。
商標権は、自己の商品やサービスに使用するマークに対する権利です。原則として、他人が勝手に商標登録されたマークを使うことはできません。そこで、“チバニアン”を商標登録して、他人が勝手に“チバニアン”という名前を使ったなら損害賠償をしてやろうというのが、今回の“チバニアン”商標登録騒動です。商標登録は早い者勝ちですから!
| “チバニアン”って使えないの?
“チバニアン”は商標登録されました。どんなものに使うと商標権侵害になるのかですが、貴金属やおもちゃ、紙類などです。
ここで問題になったのが紙の印刷物です。困るのは研究した成果を出版する機関です。商標権に待ったをかけたのは情報・システム研究機構でした。印刷物に“チバニアン”を使えなくなると本の題名や説明に“チバニアン”という言葉を使えなくなる!と思ったのでしょう。
この騒動で参考になるのが「がん治療最前線事件(東京高裁平16.3.24)」の裁判例です。“がん治療最前線”という商標を持っていた人が、ある雑誌の別冊に“がん治療の最前線”という文句を見つけてその使用の差し止めを求めました。裁判所は“がん治療の最前線”は最新のがん治療法を紹介する記事を掲載した雑誌を表す表示だから、商標権侵害にはならないと判断しました。つまり、表示と内容が合っているならば商標権侵害にならないということです。
これを“チバニアン”商標登録騒動に当てはめてみますと、“チバニアン”を紹介したり説明したり研究成果を発表したりする印刷物であれば、その題名に“チバニアン”と表示されていても表示と内容が合っていますから、商標権侵害にならないことになります。
商標権は“他人の看板”で勝手に商売をすることを防ぐための権利です。“チバニアン”に関係のない商品やサービスに“チバニアン”と名前を付けて商売をするのはダメです。商標権を侵害したことになります。
しかし、“チバニアン”を内容とする商品に“チバニアン”と名前を付けて商売をしても、それは商品の内容を説明するためのものですから“他人の看板”で勝手に商売をしたことにはなりません。“チバニアン”を説明するために使っているだけですからね。“タカラ本みりん”の入った商品に“タカラ本みりん入り”と表示しても何も問題がないのと同じです(タカラ本みりん事件、東京地裁平13.1.22)。
このように考えると、情報・システム研究機構の異議申し立てはあまり意味がないのかもしれません。商標登録を取り消すための異議申し立てには商標法で決められた理由が必要ですので、今回の異議申し立てが認められるかどうかはまた別問題です。
| まとめ
1 チバニアンは地層の名前!
2 商標権は知的財産権!
3 チバニアンは商標登録されてます!
4 チバニアンという表示を正しく使えば問題なし!?