| 遺言の種類
遺言には大きく分けて“普通方式”と“特別方式”の2つがあります。“特別方式”は事故や伝染病などで生命の危機が迫った緊急時に書くものですから、一般的には“普通方式”になります。
普通方式には、“自筆証書遺言”、“公正証書遺言”、“秘密証書遺言”の3つがあります。
1 自筆証書遺言
遺言者が全文を自筆で書いて、署名と捺印をします。作成した日付の記入を忘れないようにしてください。○○年〇〇月○○日ときちんと書きます。“吉日”はダメですよ。遺言が無効になります。
2 公正証書遺言
2人の証人の立ち合いのもとで、公証人が遺言者の話した内容を書き留めて作る遺言です。形式的な失敗がなくなったり遺言書を紛失したりしないことがメリットですが、費用が数万円かかります。
3 秘密証書遺言
2人の証人の立ち合いのもとで、公証人に書いた遺言書を渡して、遺言書があることを公証人に証明してもらいます。遺言書自体は自筆でなくてもかまいませんが、封印には署名と捺印が必要です。
| 遺言書を書いたらトラブルになる?
自筆証書遺言は手軽に遺言書を残せますが、それはそれでトラブルになることが多いです。その中で最も多いのは“遺留分”です。“遺留分”は法定相続人(兄弟姉妹を除く)に認められた権利です。「最低限、これだけは相続できますよ」と民法(第1028条)に書かれています。ただし、“遺留分”を貰うには“遺留分減殺請求”をしなければなりません。
“遺留分”は、法定相続人が遺言者の父や母などの直系尊属だけの場合には財産の1/3、それ以外の場合は財産の1/2です。6000万円の相続財産があった場合、父と母が法定相続人ならば遺留分は父が1000万円、母が1000万円です(二人あわせて6000万円×1/3)。配偶者と子どもが法定相続人ならば配偶者は1500万円、子ども全員で1500万円です(配偶者と子どもをあわせて6000万円×1/2)。
遺言者が亡くなった後、この遺留分を無視した遺言書が出てくると大変です。相続を期待していた法定相続人は納得しないでしょう。この場合には、相続できなかった法定相続人は“遺留分減殺請求”をしてきて裁判に発展して数年間争う可能性があります。
| トラブルになりにくい遺言書は?
遺言書がなければ相続が“争続”になるし、書いたら書いたでトラブルになるかも…。どうすればいいのでしょうか?
そこでトラブルになりにくい遺言書を提案します。
1 必ず全文を自筆
自筆でなければ無効になります。
2 日付は具体的にきちんと
○○年〇〇月○○日ときちんと具体的に書いていないと無効になります。
3 署名と押印を忘れない
記名はダメです。かならず自署しましょう。押印は認印でもOKですが、実印が無難です。
4 不動産を相続させるとき
登記簿謄本のとおりに書きましょう。土地の場合は、“所在”“地番”“地目”“地積”を書きます。建物の場合は“所在”“家屋番号”“種類”“構造”“床面積”を書きます。
5 預貯金を相続させるとき
“金融機関名”“支店名”“口座番号”“預貯金の種類”を書きましょう。
6 遺留分に配慮が必要
遺留分は相続させるようにしましょう。トラブルの元になります。代襲相続した孫には遺留分がありますので注意しましょう。兄弟姉妹には遺留分がありません。代襲相続をした甥や姪にも遺留分はありません。
7 付言事項を書く
何を誰に相続させるのかを書いた理由や心情を書きましょう。「妻へ、今までありがとう」や「家族は皆仲良く」など感謝の気持ちや思いで十分です。
8 読みやすい丁寧な字で
判読できない字があると鑑定されますが、それでもダメなら無効になります。
9 封筒に入れて封印
封筒に入れて封をしましょう。紙のつなぎ目には遺言書に押した印鑑を押してください。
10 元気なうちに
認知症が疑われるようになってから遺言書を書くとトラブルの元になります。元気なうちに書いておきましょう。遺言書の内容を書き換えたくなったときは新たに書き直せば問題ありません。トラブルを避けるために古い遺言書は処分しておくと安心です。
| まとめ
1 遺言にも種類がいっぱい!
2 遺言を書いたらトラブルになるかも!
3 トラブルを避ける遺言を!