| 同じ認定支援機関なのに別物?
認定支援機関(経営革新等支援機関)は全国に約2.5万か所あります。その多くは金融機関の支店です。その他には、商工会や商工会議所、士業では税理士さんが多いです。当事務所のような独立した事務所も比較的少ないながら存在します。ですので、大きく分けて、金融機関、商工会議所、税理士、独立系の4つに分類できます(アシュラ分類説)。これらは認定支援機関として同じように見えますが、業務の実態としては少し異なっています。
金融機関は自行の融資のために認定支援機関として活動します。商工会議所は相談サービスの一環としてある程度の相談を聞いてくれます。税理士さんは独立系と似ていますが、他の税理士さんが処理した決算を見るわけですから少し及び腰になります。その点、独立系の事務所は“しがらみ”がありませんから、何でもズバズバと話ができます。ただ、弱点もあります。
| 独立系認定支援機関の苦悩
認定支援機関の業務には、金融機関の協力が必要なものが多いです。融資にしてもしかり、(早期)経営改善計画策定支援にしてもしかり。ここで金融機関が認定支援機関であることが壁になってくるのです。
まず、金融機関の多くは融資が前提でないと経営の改善の相談に乗ってくれません。金融機関としてお金の相談を受けるのであれば無料なのが普通ですが、それは融資・貸付で儲けるためです。認定支援機関として相談を受けるならば有料になるでしょう。もし無料で行うと補助金を受け取れなくなります。補助金を受け取るには“金融機関としての業務”か“認定支援機関としての業務”かをきちんと分ける必要があるのです。金融機関が無料で相談に応じる場合、有料のサービス内容とはやはり差がでます。いくらあとに融資や貸付があるといっても、そこには限度があります。
では、税理士さんは親身に相談にのってくれるでしょうか?先ほど書いたとおり、税理士さんは他の税理士さんが処理した決算にケチをつけることを嫌がります。仲間意識がありますものね。どうしてもそうなってしまいます。中にはドライな先生もいらっしゃるのでしょうが・・・。
そうなったら独立系認定支援機関の出番です。業界にしがらみのない独立系ならばガンガンやってくれそうです。しかし、企業の経営改善には金融機関の協力が必須です。認定支援機関は、金融機関へ返済猶予をお願いしたり、債権放棄を迫ったりする立場です。そう簡単に金融機関の協力を取り付けることはできません。
金融機関からすると、「他の認定支援機関に相談するくらいなら自行に相談してほしい」と思っているに違いありません。とはいっても、すぐに融資が実行できることは少ないでしょう。融資は実行できないけれど、よそにお客さんを取られたくない。悪く言えば、お客さんを囲い込んでおきたいのです。ですから、他の認定支援機関の業務に協力的な金融機関は少ないのです。表向きの理由は「先例がない」「担当部署がない」など。まるでお役所のようですね。
このような商売のやり方を批判しているわけではありません。ただ、お客さんの立場になると、融資は出ないしよそへ支援を相談することもできないし、どうしようもない状態に陥ってしまいます。
金融機関の中には認定支援機関に協力したくない他の理由もあるでしょう。例えば、「他者に顧客の決算書など計算書類を見られてお金の流れを知られると、各支店の過剰融資や不正融資が分かってしまう」とか「ここはウチの管轄だから他所へは回さない」とか。酷いところだとお客さんをバカにしているようなところもあります。当事務所の代表がつぶやくには・・・
1 「昔、とある地方銀行の行員は、融資の相談中に『お前らに選ばれる覚えはない!』と豪語した。融資をしないことが担当者レベルで決まっていた。一般とは感覚が違う」
2 「とある大手都市銀行は、口座を持っている買主さんが、『現金取引で住宅購入の決済をするから場所を貸してほしい』と頼んでも、『当行の住宅ローンを利用しないのなら場所を貸せない。口座から預金をおろして現金を持っていけ』と言った」
3 「とある大手都市銀行は、法人口座を開くときに無理難題の手続きを要求し、それができないのならその法人の関連するすべての法人の口座を作らせない」
こういう考え方が、過剰融資や不正融資の温床になっているのかもしれませんし、お客さんの窮状を何とかするよりも他の認定支援機関の排除を優先する姿勢になっているのかもしれません。独立系の認定支援機関の方々はこのような金融機関に苦労されてきたのです。反面、ここが独立系の認定支援機関の存在意義にもなっています。当事務所では、メインバンクを他の金融機関に替える提案もしています。
このような状況を知らず悩み苦しむのが融資をお願いする社長さん。メインバンクが動いてくれないから他の認定支援機関を頼っているのに・・・。
このような金融機関に対して中小企業庁の対応は、「上が決めることなので・・・」「認定支援機関とは連携することになっているが、協力が得られないならどうしようもない」「上に報告はしておく」といったもの。やっぱりお役所ですね。
| まとめ
1 認定支援機関にもいろいろあります!
2 独立系の認定支援機関だからこそできることがあります!
3 お役所の対応は期待できない!
当事務所は認定支援機関ですが、やはりいろいろと悩まされることがあります。今回の記事は金融機関の悪口のようになっていますが、非協力的な金融機関ばかりではありません。親身になって一緒に対応策を考えてくれる金融機関もあります。経営者の皆さん、長い付き合いになるメインバンクはよく考えてから決めてください。一行に決めずに準メインバンクを作るのもいいですね。当事務所では創業支援も行っております。お気軽にご相談ください。