年の瀬も迫ってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。毎年、行政書士試験の問題を検討しているところ、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。
合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。 “【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第45問)” の続きを読む
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前回の“民法ってどんな法律?(債務不履行編①)で書きましたが、契約を守らないと損害賠償や解除をされてしまいます。今回は契約の解除と危険負担について書きたいと思います。
解除は、一方的な意思表示で契約が最初からなかったことにすることです。契約が最初からなかったことになりますから、当事者はお互いに原状回復をする義務があります。元の状態に戻すということですね。受け取ったものは返しますし、加工していれば元の状態に戻ります。原状回復に費用がかかったとしても当人が負担します。ただし、費用は解除とは別に損害として賠償を請求される可能性があります。お金を返す場合は利息も必要です。
解除権は、債務不履行など法律の規定によって発生する場合、解約手付があったときなど契約によって発生する場合があります。
また、債務不履行の種類によっても変わりますので、分けて書きたいと思います。
1 履行遅滞のとき
履行遅滞のときは、債務が弁済できる程度の相当の期間を定めて弁済をするように催告します。たとえば、2019年5月15日までに支払いをするというように期限を定めます。その間に弁済がない場合に初めて解除することができます。
2 履行不能のとき
履行不能のときは、弁済を催告してもどうせ弁済できないのですから、いきなり解除をすることができます。
一度、解除権を行使するとあとから“やっぱりやめた”と撤回することはできません。
債務不履行になるのは債務者に故意や過失がある場合です。売った住宅をわざと引き渡さないとか引き渡したいけれど修理が間に合わないから引き渡せないといった場合ですね。
これとは違って、危険負担は誰にも故意や過失がない場合です。たとえば、建物の売買契約をした後に落雷によって建物が燃えてしまってなくなってしまった場合です。このような場合は誰が建物を引き渡せなくなった責任を取るのでしょうか?
民法ではいろいろと場合分けをして定めています。原則は、債権者主義と言われるものです。たとえば、建物の売買契約が落雷で燃えてしまった先ほどの例では、買主は代金を支払わなければいけません。
この危険負担は、中古住宅の売買のように特定の物権に関するものでお互いに義務を負っている場合に該当します。
では、賃貸借契約のように物権に関係ないものの場合には、債務者主義を適用します。たとえば、借りていたアパートが燃えてしまった場合には、大家さんは建物を貸せなくなった反面、家賃を徴収することができません。大家さんは建物を貸す義務がありますので、ここでは債務者になるのです。
その他の例外では、停止条件が付いている契約の場合です。たとえば、転勤が決まったら中古住宅を売るといった場合ですね。転勤がまだ決まらない間に落雷によって家が燃えてしまった場合には、転勤が決まっても売買代金を受け取ることはできません。ところが、落雷によって家が少し壊れただけの場合には、転勤が決まったら壊れた建物を引き渡すと売買代金を全額貰うことができます。
また、債権者が契約の目的物を壊してしまったような場合には、債権者主義になります。たとえば、中古住宅の売買で買主が家の様子を見に来た時に買主の吸っていたタバコの火の不始末で家が燃えてしまった場合、債権者は建物の代金を支払わなければいけません。ただし、売主が手に入れた利益(売買代金など)は、公平の観点から買主に変換しなければいけないことになっています。
1 履行不能で解除する場合は催告が不要!
2 だれの責任でもない場合は危険負担の問題!
3 危険負担には債権者主義と債務者主義があります!
契約は約束です。守らないといけません。しかし、いつでも契約が守られるとは限りません。約束を破ってしまうと相応のペナルティが課せられます。特に、わざと約束を守らなかったり(故意)、自分の過失で約束が守れなかったり(有過失)すると、損害を賠償する責任を負ったり契約を解除されることがあります。
故意や有過失でない場合には“危険負担”という制度を使って解決します。今回は、約束を守らなかった場合について書きたいと思います。
債務不履行は、正当な理由がないのに約束を守らなかったことです。“正当な理由がないのに”というのは、故意・過失があった場合のことです。
債務不履行には次の3つがあります。
1 履行遅滞
2 履行不能
3 不完全履行
これらの場合を一つずつ書いていきます。
履行遅滞は、債務の弁済ができるのに約束の期日を過ぎても弁済しない場合です。たとえば、中古住宅を購入したのに売主が約束の期日になっても住宅を引き渡さない場合です。
このような場合には、引渡が遅れたことによる損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたり、強制的に引渡をさせたりすることができます。
履行不能は、約束の期日に関係なく債務の弁済ができなくなった場合です。たとえば、中古住宅の売買契約をしたのに、土地や建物の引渡の前に売主の火の不始末で建物が燃えてなくなってしまい、建物の引渡ができなくなった場合です。
このような場合には、損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたりすることができます。
不完全履行は、債務の弁済として一応は行われたけれど不完全だった場合です。たとえば、物件の調査の依頼を受けた調査会社が調査をして報告書を提出したけれど、とてもずさんな報告だった場合です。
このような場合には、債務者が改めて完全な履行をすることができる場合には、完全な履行を請求したり期日に遅れたことによる損害の賠償を請求したりできます。債務者が完全な履行をすることができない場合には、損害の賠償を請求することができます。
損害賠償をする場合には、例外的に守らないといけないルールがあります。
1 損害賠償額の予定
家を買ったときには違約金の定めが契約書に書かれています。たとえば、暴力団員などの場合には違約金を物件代金の80%を支払うといったようなものです。民法では違約金の定めを損害賠償額の予定と推定することになっています。損害賠償額の予定は、あらかじめ債務不履行の場合に損害を賠償する金額を決めておくことです。
2 金銭債務の特則
代金の支払債務や賃料の支払債務は金銭債務と言います。金銭債務は履行不能になりません。いくらお金がなくて支払えなくても世の中のお金がすべてなくなったわけではありませんから、単に期日までにお金を用意できなかっただけです。このような場合には履行遅滞になります。
また、お金を支払えない原因が天変地異などの不可抗力であっても損害賠償をしなければいけません。支払えないことに故意や過失は必要ないのです。単に支払えないというだけで履行遅滞になります。
また、賠償金額は原則として法定利率とされています。一般消費者であれば5%、業者であれば6%の利率で支払わなければいけません。これよりも高い約束があればそれに従います。
3 過失相殺
債務不履行について、債務者だけでなく債権者にも過失がある場合には損害賠償の責任や金額を決めるときに裁判所が必ず考慮することになっています。
1 約束を守らないと債務不履行になります!
2 債務不履行の責任は損害賠償責任と解除!
3 損害の賠償には特別なルールがあります!