【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第45問)

年の瀬も迫ってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。毎年、行政書士試験の問題を検討しているところ、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。

 

 

| 記述式 第45問(民法)

 

[問題]

Aは、Bに対して100 万円の売掛代金債権(以下「本件代金債権」といい、解答にあたっても、この語を用いて解答すること。)を有し、本件代金債権については、A・B間において、第三者への譲渡を禁止することが約されていた。しかし、Aは、緊急に資金が必要になったため、本件代金債権をCに譲渡し、Cから譲渡代金90 万円を受領するとともに、同譲渡について、Bに通知し、同通知は、Bに到達した。そこで、Cは、Bに対して、本件代金債権の履行期後に本件代金債権の履行を請求した。Bが本件代金債権に係る債務の履行を拒むことができるのは、どのような場合か。民法の規定に照らし、40 字程度で記述しなさい。

なお、BのAに対する弁済その他の本件代金債権に係る債務の消滅事由はなく、また、Bの本件代金債権に係る債務の供託はないものとする。

 

1 問われている内容

債権譲渡された債務の支払いを拒むことができる場合を問われています。債権譲渡は、民法改正で改正された箇所です。

2 事案の分析

(1)債権譲渡手続きの有効性

まずは条文を見てみましょう。

 

民法 第466条

(債権の譲渡性)

第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 以下、略

 

民法 第467条

(債権の譲渡の対抗要件)

第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2 略

 

債権は、原則として、性質上認められない場合を除いて、譲渡することができます。また、債権譲渡を債務者に対抗するためには、譲渡人が債務者に通知をするか債務者が承諾する必要があります。

本問では、債権者Aは債務者Bに対して債権譲渡を通知し、Bはその通知を受領しています。

AからCへの債権譲渡は、手続き上は問題なさそうです。

(2)債権譲渡が認められない場合

債権譲渡の手続きに問題はないとして、次に、そもそも債権を譲渡することができたのかを考えてみます。先ほど見たように、民法第466条では“性質がこれを許さないときは、この限りではない”とありますので、性質上、債権譲渡ができるのかを考えます。

従来は、債権の性質上債権譲渡が認められない場合の典型例として、債権譲渡禁止特約付きの債権の譲渡がありました。つまり、債権を第三者に譲渡できませんよという特約が付いている債権の譲渡です。

ただ、民法の改正で、債権譲渡禁止特約が付いている債権であっても、原則的に譲渡ができるようになりました。

では、無条件で債権譲渡禁止特約付き債権を譲渡することができるのでしょうか。また、条文を読んでいます。

 

民法 第466条

(債権の譲渡性)

第四百六十六条 略

2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4 略

 

民法第466条第2項では、債権譲渡禁止特約付きの債権も譲渡できることが明記されています。また、第3項では、そのときの要件が書かれています。

(ア)譲受人または第三者が譲渡制限の意思表示を知っていた場合

(イ)譲受人または第三者が譲渡制限の意思表示を重大な過失で知らなかった場合

この2つの場合には、債務者は譲受人に対して債務の支払いを拒むことができます。問題文に債権の消滅原因はないと書かれていますので、第3項の後半部分は本問では関係ありません。

 

解答例

“本件代金債権の譲渡制限の意思表示をCが知っていたかまたは重大な過失で知らなかった場合”(42字)

 

 

| まとめ

 

1 民法でも改正部分を出題!

2 債権譲渡は形式的な手続き上の不備からチェック!

3 手続きに不備がなければ譲渡の内容をチェック!



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