親御さんが農家をされていて不幸にもお亡くなりになった場合、お子さんは農地を相続することになります。農地を相続しても耕作していなければ農地の認定がなくなる可能性があり、そうなると固定資産税が大幅に増えてしまいます。
農家以外にとっては厄介な農地ですが、どうすればいいのでしょうか。
| 農地を相続する手続き
農地を相続する場合には次の2つの手続きをします。
1 法務局での相続登記
農地を相続した場合には、住宅を相続するときと同じように相続を原因とする所有権移転登記(名義変更)をします。相続で農地を取得した場合は、農業委員会の許可は必要ではありません。ただし、法定相続人でない人が相続したり遺贈を受けたりする場合には農業委員会の許可が必要になります。
また、所有権移転登記の費用は、依頼する司法書士への報酬とは別に、登録免許税が必要です。金額は「固定資産税評価額×0.4%」です。固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税の通知書に記載されています。
2 農業委員会への届け出
農地の所有者が変わったときは農業委員会へ届け出る必要があります。届け出には期間があり、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内です。もし届け出なかった場合には10万円以下の過料が課せられる可能性があります。
農業委員会は市町村ごとにありますので市役所に問い合わせると届け出先を教えてくれます。届け出には相続登記をした後の登記簿謄本が必要になりますので、先に相続登記を済ませておいてください。
| 農業をしない場合の手段
農地を相続したけれども、仕事は別にあるから農業はしないという方は多いと思います。そのような場合にはいくつかの手段が考えられます。
1 相続放棄
農地を含んだ相続財産のすべての相続を放棄する方法があります。この場合には、必ず相続財産を全部放棄しなければいけません。農地だけは要らないというのは通用しません。厳しいですね。
また、相続放棄ができる期間は、相続があったことを知った時から3か月以内です。かなり短いですのでご注意ください。届け出先は家庭裁判所です。
2 売却
農地を売却する方法もあります。農地を農地のままで売却する場合と、農地を宅地など別の用途に変えて売却する場合があります。土地の用途を変更する場合は次の「転用」をご参照ください。
農地を農地として売却するにしても、なかなか売却先が見つかりません。それにもかかわらず、宅地として需要がない地域では農地のままで売却するしかありません。
農地が売りにくいのには理由があります。農地を買う人は農業委員会の許可を取らないといけないからです。この場合の条件は次のとおりです。
(1)農地のすべてを効率的に利用すること(営農計画があること)
(2)必要な農作業に常時従事すること(原則150日/年以上)
(3)50アール(北海道は2ヘクタール)以上の農地を経営すること
地域によっては面積がもっと狭くてよい市町村もあります。
(4)周辺の農地利用に支障がないこと(無農薬栽培地域での農薬の使用など)
営農計画や常時従事など厳しい要件ですが、農家の方に譲る場合にはあまり問題にならないかと思います。新規参入する就農者に譲る場合には条件が厳しいかもしれません。
3 農地の転用
農地を宅地などに用途を変更して利用する方法です。自身のセカンドハウスを建築してもいいですし、アパートを建てて賃貸してもいいですし、住宅用地として売却してもかまいません。
ただし、農地を他の用途に変更する場合も農業委員会の許可が必要です。市街化区域の農地であれば比較的転用が認められやすいですが、市街化調整区域ではなかなか認められません。ご注意ください。
| まとめ
1 農地を相続したら農業委員会へ届け出!
2 農業をしないなら相続放棄も一つの手段!
3 農地を活用するなら転用も検討してみては?