年の瀬も迫ってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。毎年、行政書士試験の問題を検討しているところ、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。
合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回から選択問題を検討します。
| 選択式 第43問(行政法)
記述式の問題は長文ですので問題を掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。
早速、問題を見ていきましょう。
行政手続法の不利益処分における理由の開示に関する問題のようです。不利益処分の性質にかんがみ、行政庁の判断の[空欄ア]と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに…と書かれています。
何が入るのかよくわかりませんが、とりあえず選択肢の中で入る可能性のある語句をピックアップしてみます。
“公平”、“説明責任”、“根拠”、“慎重”、“適法性”の5つでしょうか。
選択肢を絞れないので、次に進みます。
処分の理由を名宛人に知らせて[空欄イ]に便宜を与える趣旨に出たものと解されるとあります。処分の理由を知らせる理由は一般に不服申し立ての便宜のためと言われています。
選択肢を見てみましょう。空欄イに入る可能性のある語句は、“弁明”、“名宛人以外の第三者”、“利害関係人”、“不服申し立て”、“審査請求”、“聴聞”の6つでしょうか。
“名宛人以外の第三者”と“利害関係人”は1つのグループ、“弁明”、“不服申し立て”、“審査請求”、“聴聞”は1つのグループとみなせます。
文章の前の方には、“名宛人に直接義務を課しまたはその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み”と書いてありますし、恣意の抑制と[空欄イ]の便宜と書いていますから、空欄イは名宛人の利害に関するものであって、“名宛人以外の第三者”や“利害関係人”は入らないでしょう。
また、聴聞や弁明の機会の付与は不利益処分を行うときに実施する手続きであって、処分が決まってから行うものではありません。ですから、“弁明”と“聴聞”も入らないでしょう。
残りは“不服申し立て”と“審査請求”の2つです。審査請求は不服申し立ての内の1つですね。不服申し立てには、審査請求のほかに、再調査の請求や再審査請求があります。不利益処分の理由を通知する目的は、審査請求について教示することに限りません。不服申し立て全般に対する教示のためです。行政手続法50条や60条にも、不服申し立てができる旨、不服申立先、不服申立期間などを教示することになっています。
よって、空欄イには“不服申し立て”が入ると思います。
続きを読んでいきますと、建築士法の懲戒処分に関する文章のようです。建築士に対する懲戒処分での特徴は2つあるようです。
1 処分要件が抽象的
2 戒告、1年以内の業務停止、免許取消のいずれかの処分の選択は処分行政庁の裁量
要するに、建築士法を見ただけではいついかなる時にどのような処分が下されるのかがよくわからない状態だということのようです。
続きを読みます。
処分内容の決定に関しては、[空欄ウ]が定められているようです。さらに、[空欄ウ]は、[空欄エ]の手続きを経るなど適性を担保すべき手厚い手続きを経たうえで定められて公にされているようです。
空欄ウには基準となるような何かが入るようです。選択肢の中から空欄ウに入る可能性のある語句を拾ってみます。“審査基準”、“条例”、“要綱”、“処分基準”、“規則”の5つでしょう。
“要綱”は大切なことだけれども抽象的な内容が記載されているようなイメージですし、“規則”は行政内部で適用すべきものですので、建築士の懲戒処分では当てはまらないように思います。
残りは“審査基準”、“条例”、“処分基準”の3つです。審査基準は許可などをする際の審査の基準を示したものですので、処分内容の決定に関して懲戒処分の是非が問われている本問では関係なさそうです。
“条例”と“処分基準”はありそうですね。特に“処分基準”は空欄ウにピッタリです。
文章を読み進めていくと、最後の方で“いかなる理由に基づいてどのような[空欄ウ]の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難である”と書かれています。建築士の懲戒処分に関して、“どのような[空欄ウ]の適用によって”とあるのですから、ここではいくつか選択できるものであるはずです。とするば“条例”はなさそうです。建築士の懲戒処分に関していくつも条例があるとは考えにくいですからね。
ということで、空欄ウには“処分基準”が入りそうです。
では、空欄エに進みます。空欄エには、文脈上、処分基準の制定過程に関するものが入ります。
選択肢の中で空欄エに入る可能性のある語句は、“意見公募”、“諮問”、“議会の議決”の3つでしょう。
ここで、行政機関の手続きについて、頭の中を整理しておきます。
まず、不利益処分をするときは聴聞または弁明の機会の付与が必要です。また、不利益処分については、処分基準を設定して公にしておく努力義務が行政庁にあります。
さらに、処分基準は行政手続法上の命令等に含まれていて、命令等を制定するには、原則として意見公募手続をとらなければいけません。
とすると、処分基準を定めるための手続きとしては“意見公募”が適当だと思います。命令等は分かりにくいので勉強がしにくく、知識が薄くなりがちです。そのくせ過去問では何度も問われていますので注意が必要です。
空欄イ、空欄ウ、空欄エと埋まったところで、空欄アに戻って考えてみましょう。
最後まで読んでも、“公平”、“説明責任”、“根拠”、“慎重”、“適法性”の5つから絞り切れません。消去法で考えていきます。
まず、“適法性”は入らないように思います。適法性を担保して恣意を抑制するというのは違いますよね。恣意を抑制することで適法性が担保されるのです。“公平”も同じ理屈で空欄アには入らないように思います。
空欄アで担保すべきなのは、行政機関の行為であるはずです。そうであるとすれば、“説明責任”や“慎重”が入りそうです。
普通に考えれば、慎重に判断させて恣意を抑制するという理屈がスムーズです。判断の説明責任を果たさせて恣意を抑制するという理屈は少々無理があります。不利益処分の理由を通知するだけで説明責任が果たされたとするのは無理な道理です。
明確には判断できませんが、空欄アには“慎重”が入るように思います。
この問題はかなり難しいと思います。
空欄ア: 9 慎重
空欄イ: 17 不服申し立て
空欄ウ: 13 処分基準
空欄エ: 6 意見公募
| まとめ
1 第43問は難問!?
2 行政手続法上の命令等は知識が薄くなりがち!
3 空欄アは題材の判例を知らないと解答に自信が持てない!?