家系図の作成は行政書士の専売特許? ~その1~

少し古い判決ですが、2011年12月20日に最高裁判所が家系図の作成についての判断をしました。行政書士法違反で起訴された方の無罪を言い渡した判決です。

今回から家系図と行政書士の業務について書きたいと思います。

 

 

| 家系図は何のために作るの?

 

家系図を作る目的は様々あります。たとえば、次のようなものがあるようです。

1 自分や家族のルーツを知るため

2 自分や先祖のゆかりの地域を知るため

3 家族のルーツを子孫に残すため

4 相続の準備のため

5 父母や祖父母へのプレゼント

6 先祖を忘れないため

このような目的で作成される家系図は、観賞用の家系図だと言われています。たとえば、高級な和紙に書かれていたり、巻物になっていたり、額装されていたりと見栄えが良く、見るからに観賞用・装飾用です。立派で高級な家系図を作成する業者は多くあります。

これとは対照的に、事実関係を証明する書類として作成される家系図があります。行政書士が取り扱うものは主にこちらです。相続のときの遺産分割協議書の作成とともに相続関係説明図を作成するのですが、この相続関係説明図がいわゆる家系図です。

 

 

| 家系図の作成は行政書士法違反?

 

相続関係説明図の作成は行政書士の独占業務です。行政書士の独占業務には主に次の3つがあります。行政書士法1条の2と19条が根拠になっています。

1 官公署に提出する書類の作成

2 権利義務に関する書類の作成

3 事実証明に関する書類の作成

独占業務はこの3種類ですが、そのほかにも非独占業務もあります。行政書士法1条の3が根拠です。

行政書士法に違反したと言われるには、行政書士でない者が上の3つのいずれかを業として行う必要があります。

家系図や相続関係説明図はどれに当たるのでしょうか。

まず、相続関係説明図を考えます。この書類は遺産分割協議のときに法定相続人を確定するために使われます。つまり、“この人は法定相続人である”という事実を証明するための書類です。上で3つの中では、“3 事実証明に関する書類”になります。

ということは、行政書士でない者が遺産分割協議のときに説明するために用いられる相続関係説明図を業として作成すると行政書士法違反になります。

次に、家系図を考えてみます。家系図といっても範囲が広いですから、相続関係説明図のような事実の証明に利用するのではなく、その他の用途で作成される家系図に絞ります。

このような家系図については、最高裁判所の判例があります。冒頭で紹介した判例です。

 

【最高裁判例】

“本件家系図は,自らの家系図を体裁の良い形式で残しておきたいという依頼者の希望に沿って,個人の観賞ないしは記念のための品として作成されたと認められるものであり,それ以上の対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていたことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。そうすると,このような事実関係の下では,本件家系図は,依頼者に係る身分関係を表示した書類であることは否定できないとしても,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たるとみることはできないというべきである。”

 

言い回しが難しいですが、今回の事例の観賞用・記念用家系図は、何かを証明するといった用途が予定されていないので、身分関係を表示した書類ではあるけれども、行政書士法1条の2の“事実証明に関する書類”ではないと言っています。

結局、観賞用・記念用・装飾用の家系図は事実を証明する書類ではないので、行政書士以外の者が業として作成しても行政書士法違反にはならないのです。

行政書士の立場から言えば、観賞用・記念用・装飾用の家系図の作成は、行政書士の独占業務ではないので、このような家系図を作成するときに職務上請求書を利用できないことになります。

 

長くなりましたので、続きは次回以降に書きたいと思います。

 

 

| まとめ

 

1 家系図を作成する目的は大きく2種類!

2 行政書士は相続で必要な家系図を作成!

3 観賞用の家系図の作成は行政書士の独占業務ではない!



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