民泊事業の登録などの申請事業は昨今少し下火ですがまだまだ民泊を希望しているオーナーはいらっしゃいます。申請はオーナー自ら行うこともできますが、中には少し手間のかかる場合もあって行政書士を頼る方も中にはいらっしゃいます。そのような案件を他の事務所の行政書士と契約させたという事件が、2020年11月に報道されました。
| 行政書士法人の職員が斡旋!?
行政書士で受けた業務依頼を別の事務所に委任させるように仕向けて損害を与えたとして、行政書士法人の元職員と行政書士が背任の疑いで逮捕されました。少しわかりにくいので説明します。
A行政書士法人に勤めていた職員が、以前所属していて現在は別の事務所を構えている行政書士に対して、A行政書士法人に相談に来た業務を流していたようです。
職員は、2019年3月にA行政書士法人に相談に来たBさんに対して、A行政書士事務所は民泊事業の申請業務から撤退するなどと嘘の情報を与えて、以前所属していた行政書士が構えている別の行政書士事務所に委任するように仕向けたそうです。職員は独立した行政書士の事務所と契約を結ぶように関係書類を作成したと言われています。
| 背任罪と業務上横領罪の違いって?
今回ご紹介した事件は、勤めている法人の仕事を他の事務所に斡旋していたとの疑いで背任罪に問われています。(1)会社のために事務処理をしている者が(2)自分や第三者の利益を図ったり会社に損害を与えたりする目的で(3)一定の行為を行い(4)会社に損害を与えるという意味では、背任罪も業務上横領罪も同じです。何が違うのでしょうか。
一番大きな違いは(3)の一定の行為の内容です。背任罪では任務に背く行為、横領罪では他人が預かったものを処分する行為です。預かったものをポケットに入れたり売ってしまったりすれば横領罪、職務に背く行為をすれば背任罪です。
行為のほかにも、横領罪は自分のモノにしようとする“不法領得の意思”が必要ですが、背任罪は第三者の利益を図っても成立します。
今回の事件では、第三者である退職した行政書士の利益にするために自社へ相談に来た事案を他の事務所へあっせんしたのですから背任罪ということになります。これがもし仕事のあっせんではなくて着手金をポケットに入れていたならば業務上横領罪になります。
独立した行政書士は共同正犯か教唆になるのではないでしょうか。ほう助という可能性もありますが、おそらく共同正犯での立件を目指していると思います。
| まとめ
1 法人の仕事を他の事務所へあっせん!?
2 背任罪と横領罪の違いは意思と目的!
3 独立した行政書士は共同正犯!?