宅建士試験の振り返り(2020年度10月)問11・12

2020年の宅地建物取引士試験は、新型コロナウイルス感染症への対応のため例年と異なる試験形態になってしまいました。都市圏では受験会場が確保できなかったため、10月の試験を受験できない受験生がいます。2020年は10月と12月の2回、試験が行われることになりました。

前回から引き続き2020年10月試験の問題を振り返ってみたいと思います。まずは民法から始めてまいります。

 

 

| 2020年10月試験 民法

 

1 問11 正解肢4

居住用の建物所有を目的とする借地権に関する問題です。借地借家法の適用があります。

肢1 借地権の対抗要件

借地権の対抗要件は、借地権の登記または建物の登記です(借地借家法10条1項)。土地の引渡しだけでは新所有者に対する対抗力はありません。

肢2 賃料増額請求

借地の賃料の増減額請求は、租税公課の増減、土地価格の上昇・低下、その他の経済事情、近傍類似の土地の地代等との不相当を原因として、契約条件に関わらず賃料の増減額の請求をすることができます(借地借家法11条1項)。ただし、一定期間は“増額”しない旨の特約は有効です(借地借家法11条1項ただし書)。ポイントは“増額”のみで“減額”しない旨の特約は無効です。

肢3 建物買取請求権の合意

借地権の存続期間が満了した場合、借地権者は借地権設定者に対して建物等を時価で買い取ることを請求することができます(借地借家法13条)。この場合には、借地権者に不利になる特約は無効とされます(借地借家法16条)。しかし、借地権者の債務不履行による解除の場合は規定されていません。本肢のように、借地権者による債務不履行解除の場合には建物買取請求権を行使できないと特約で定めても有効です。

肢4 存続期間

借地権の存続期間は30年です(借地借家法3条)。また、更新の場合には10年になります(借地借家法4条)。ただし、借地権の設定後の最初の更新では20年になります(借地借家法4条括弧書き)。

2 問12 正解肢3

居住目的の建物賃貸借に関する問題です。借地借家法の適用があります。

肢1 新所有者への対抗要件

新所有者は旧所有者から賃貸人の地位を引き継ぎます。引き継がれる内容は従来の賃貸借契約の全てですが、保証金は返還義務がないため引継ぎの問題にはなりません。また、賃借権の対抗要件は建物の引渡しですから(借地借家法31条)、賃借人が建物の引渡しを受けていれば新所有者に対抗できることになります。家賃の前払も賃貸借契約の内容に含まれますので、建物の引渡しを受けている賃借人は新所有者に家賃の前払を主張することができます。

肢2 定期建物賃貸借の賃料増額請求

定期建物賃貸借では、一般の建物賃貸借の賃料増額請求の特約があっても適用されません(借地借家法38条7項、32条)。一般の建物賃貸借では、租税公課の増減、土地価格の上昇・低下、その他の経済事情、近傍類似の土地の地代等との不相当を原因として、契約条件に関わらず賃料の増減額の請求をすることができます(借地借家法32条1項)。

肢3 定期建物賃貸借の解約申入れ

定期建物賃貸借では、賃借人が転勤等のやむを得ない事情によって仕様が困難になったときは、解約の申し入れをすることができます(借地借家法38条5項)。ただし、解約申し入れをするのは賃借人からです。賃貸人からではありません。解約申入れの日から1か月後に賃貸借契約が終了するのは正しいです。

肢4 定期建物賃貸借の造作買取請求

建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作は、賃貸借の期間が満了または解約の申し入れ後、賃貸人に対して時価で買い取ることを請求できます(借地借家法33条)。定期建物賃貸借でも別の内容を記した条文や排除する条文がありませんので、適用されます。

 

 

| まとめ

 

1 建物と土地では対抗要件が異なる!

2 土地は建物買取請求権、建物は造作買取請求権!

3 借地借家法の存続期間には要注意!



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