宅建士試験の振り返り(2020年度10月)問1・2

2020年の宅地建物取引士試験は、新型コロナウイルス感染症への対応のため例年と異なる試験形態になってしまいました。都市圏では受験会場が確保できなかったため、10月の試験を受験できない受験生がいます。2020年は10月と12月の2回、試験が行われることになりました。

今回から2020年10月試験の問題を振り返ってみたいと思います。まずは民法から始めてまいります。

 

 

| 2020年10月試験 民法

 

まずは民法から振り返っていきます。受験をされなかった方はインターネット上で問題を探してみてください。

1 問1 正解肢1

囲繞地通行権の問題です。

肢1 共有物の分割による囲繞地通行権

共有物の分割によって公道に通じない土地ができた場合には、他の分割者の所有地を償金を払うことなく無償で通行できます(民法213条1項)。

肢2 囲繞地通行権の通路開設

囲繞地通行権を有している場合、必要であれば通路を開設できます(民法211条第2項)。ただし、通常は人が通行できる程度の幅員である2メートル程度とされています。しかし、自動車が通行する必要性と許容性が認められた場合、自動車が通行する程度の幅員を有する通路を解説することができます(東京高判平19.9.13)。

肢3 袋地の譲渡による賃借権の移転

袋地の賃借人は賃貸人の囲繞地通行権を主張できる可能性があります。ただ、条文上は囲繞地の通行権の主張ができるのは袋地の所有者とされています。そうであれば、袋地である甲土地を取得したBは自らの囲繞地通行権を甲土地の所有者に主張すればよいのであって、甲土地に設定した賃借権をAがBに譲渡することなく袋地の所有権に従たる権利としてBに主張させる必要はありません。

肢4 時効による袋地の所有権の取得

時効による所有権の取得は原始取得です。時効によって袋地を所有した場合には、袋地の所有者として囲繞地の所有者に対して囲繞地通行権を主張することができます。ただし、有償です(民法212条)。

2 問2 正解肢4

保証契約に関する問題です。

肢1 保証契約の諾成

保証契約は書面でしなければいけません(民法446条2項)。

肢2 保証契約の極度額

根保証契約において個人が保証人になる場合には、極度額が明記されていなければいけません(民法465条の2第2項)。保証額が明らかでないケース1および2の場合は根保証となり、個人が保証人になる場合には極度額が明記されていなければいけません。

肢3 催告の抗弁権

連帯保証の場合には催告の抗弁権はありません(民法452条、454条)。

肢4 事業融資の保証契約

個人が事業融資の保証人になる場合、契約締結1か月以内に公正証書で保証人になる旨の意思表示が必要です(民法456条の6第1項)。事業融資の保証人でない場合には、たとえ保証人が個人であったとしても、公正証書の作成の必要はありません。

 

 

| まとめ

 

1 囲繞地通行権は無償と有償がある!

2 個人根保証の場合は極度額の記載が必須!

3 事業融資の根保証で保証人が個人の場合は公正証書を作成!



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