宅建士試験の振り返り(2020年度10月)問3・4

2020年の宅地建物取引士試験は、新型コロナウイルス感染症への対応のため例年と異なる試験形態になってしまいました。都市圏では受験会場が確保できなかったため、10月の試験を受験できない受験生がいます。2020年は10月と12月の2回、試験が行われることになりました。

前回から引き続き2020年10月試験の問題を振り返ってみたいと思います。まずは民法から始めてまいります。今回は問3と問4です。

 

 

| 2020年10月試験 民法

 

1 問3 正解肢2

債務不履行による契約の解除に関する問題です。判決文を読んで誤っている肢を選びます。

判決文の概略は、債務の不履行による契約の解除は付随的な義務の履行を怠った場合にはできないというものです。

肢1 売買契約の付随義務

税金相当額の償還は付随的義務と書かれていますから、税金相当額の償還がなされないとしても、特段の事情がない限り、契約の解除はできません。

肢2 債務不履行の帰責性と付随義務

民法上および判決文によれば、債務者の責めに帰すことができない事由による債務不履行が付随的義務の不履行となるとは言えません。

肢3 履行の催告と付随義務

債務不履行が軽微であるときには付随的義務の不履行と言えます。ですから、特段の事情がない限り契約の解除はできません(民法541条ただし書)。

肢4 履行の拒絶

債務者が債務の全部の履行を拒絶したときは、付随的義務の履行とは言えませんので契約の解除をすることができます。また、履行の拒絶を明確に意思表示していますので、履行を促しても意味がないため、契約を解除する場合でも履行の催告は必要ありません(民法542条1項2号)。

2 問4 正解肢3

建物の賃貸借契約の終了場面に関する問題です。宅建士には大切な知識です。

肢1 通常損耗と原状回復義務

賃借人は、賃借物の通常の使用および収益によって生じる損耗を原状回復する義務はありません(民法621条)。

肢2 帰責性と原状回復義務

賃借人は、賃借物の損傷について、賃借人の責めに帰することができない事由による場合には原状回復義務がありません(民法621条ただし書)。

肢3 敷金の返還時期

敷金は、賃貸物の損傷を修繕費用に充当したり未払い家賃の充当に充てられたりするものです。ですから、賃貸人は、賃貸物の返還があり賃貸物の損傷を確認し修繕を行うまで、賃借人からの敷金返還請求を拒むことができます(民法622条の2第1項)。

肢4 敷金への充当の請求の可否

敷金は、賃貸人が先取特権を行使して未払い賃料の充当に充てられたりします(民法316条)が、充当するか否かは賃貸人の意思によります。また、賃貸人は敷金のうち債務額を控除した残額を賃借人へ返還する義務があります(民法622条の2第1項1号)が、賃借人は、賃貸人に対して敷金を未払い家賃に充てることを請求することはできません(民法322条の2第2項後段)。

 

 

| まとめ

 

1 判決文から解く問題は素直に判決文を読む!

2 賃貸借は最低限の条文知識が必須!

3 原状回復義務と敷金は宅建士には必須の知識!



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