行政書士試験の憲法(表現の自由3)

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前回の“行政書士試験の憲法(表現の自由2)”では、表現の自由に関する裁判例を挙げました。今回は、裁判例の内容について書きたいと思います。前回は10個の裁判例名を挙げましたが、内容の紹介は8個にします。あまりたくさん書いても覚えられませんものね。 

 

 

| 表現の自由の裁判例 

 

さっそく順番に紹介していきます。 

1 博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44・11・26) 

この裁判例では、報道の自由、取材の自由、取材源秘匿権の3つに関連しています。それぞれの区別が分かりやすいように書きたいと思います。 

博多駅テレビフィルム提出命令事件 (最大決昭44・11・26)の事件の概要から。1968年にアメリカ原子力潜水艦の佐世保港寄港に反対する学生が機動隊と激しく衝突しました。テレビ局では4社がその様子を撮影していました。護憲連合は、警察の行為がやりすぎだとして検察に告発しました。しかし、地方検察庁は不起訴処分にしたため、護憲連合は福岡地方裁判所に不審判請求をしました。福岡地裁は審理に必要だとして放送局に撮影したフィルムの提出を求めました。 

(1)報道の自由について 

報道機関の報道は国民の知る権利に奉仕するものだから、裁判の公正という観点からの制約はあるものの、事実の報道の自由は表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあると判示しました。 

(2)取材の自由について 

取材の自由は憲法21条から直接導き出されるものではないが、憲法21条の精神に照らして十分尊重に値する権利であると判示しました。 

(3)取材源秘匿権(取材によって得た情報の開示)について 

公正な刑事裁判の実現を保障するために証拠として必要と認められる場合には、ある程度の制約を被ることもやむを得ないが、報道機関の不利益が必要限度を超えないように配慮されなければいけないと判示しました。 

2 取材源の開示について 

取材源の開示については、刑事事件と民事事件の2つの裁判例があります。刑事事件では証言拒絶権が認められにくく、民事事件では証言拒絶権が認められやすいようです。 

(1)刑事事件について 

朝日新聞石井記者事件(最大判昭27・8・6)では、刑事訴訟法149条は新聞記者に類推できず、憲法21条は証言拒絶の権利までも保障したものではないとして、新聞記者の証言拒絶権は、真実追及のため、刑事訴訟法上も憲法上も認められないと判示しました。 

(2)民事事件について 

北海道新聞島田記者事件(札幌高決昭54・8・31)では、新聞記者の取材源は旧民事訴訟法281条1項3号(民訴197条1項3号)の“職業ノ秘密”にあたり、取材源秘匿により得られる利益が公正な裁判の実現という利益を上回るときは、証言拒絶権が認められると判示しました。 

3 法廷における取材について 

法廷における取材については、写真撮影についての裁判例とメモの採取についての裁判例があります。 

(1)北海タイムス事件(最大決昭33・2・17)(写真撮影) 

公判廷の状況を報道するための取材であっても、公判廷における審判の秩序を乱し訴訟関係人の正当な利益を不当に害することは許されない。したがって、写真撮影の許可を裁判所の裁量にゆだねた刑事訴訟法規則215条は憲法に違反しないと判示しました。 

(2)レペタ事件(最大判平元・3・8)(メモ採取) 

メモ採取行為は憲法21条1項の精神に照らして尊重されるべきであり、公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるという特段の事情のない限り、傍聴人の自由に任せるのが憲法21条1項の精神に合致すると判示しました。 

4 外務省秘密電文漏洩事件(最決昭53・5・31) 

沖縄返還協定に関する外務省の極秘電文を新聞記者が外務省女性事務官から入手して議員に流したため、事務官は国家公務員法100条1項違反、記者は国家公務員法111条違反で起訴されました。 

国家公務員法100条1項の秘密とは、非公知の事実であって、秘密として保護するに値するものをいうところ、取材の自由は憲法21条の精神に照らして十分尊重に値するから、真に報道目的であり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものであり社会観念上是認されるものであれば自室的に違法性を欠くというべきだが、本件取材行為は手段・方法において社会観念上是認することができないから違法であると判示しました。 

5 性表現について 

チャタレイ夫人事件(最判昭32・3・13)では、刑法175条のわいせつ文書といえるためには、(1)普通人の羞恥心を害すること、(2)性欲の興奮、刺激を来すこと、(3)善良な性的道義観念に反することの3つの要件があり、わいせつ文書にあたるか否かは裁判所が社会通念を基準に判断すると判示しました。 

6 名誉毀損的な表現について 

夕刊和歌山時事事件(最大判昭44・6・25)では、刑法230条の2の真実性の要件につき、事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信が確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく名誉棄損罪は成立しないと判示しました。 

 

刑事訴訟法や民事訴訟法、刑法の条文が出てきていますが、気にしなくても大丈夫です。ただ、夕刊和歌山時事事件で出てきた刑法230条の2については少し捕捉します。 

刑法230条の2では名誉毀損罪が成立しないための例外的な要件が記載されています。 

(1) 事実の公共性 

(2) 目的の公益性 

(3) 真実の証明があること 

夕刊和歌山時事事件では、この3つのうちの(3)真実の証明があることが問題になっています。真実の証明がない場合であっても、確実な資料・根拠に基づく誤信があった場合には名誉棄損罪が成立しないとされました。 

 

 

| まとめ 

 

1 報道の自由は憲法21条で保障! 

2 取材の自由は憲法21条で尊重に値する権利! 

3 法廷での写真撮影×、メモ採取〇! 



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