行政書士試験の憲法(表現の自由4)

【おしらせ】

新型コロナウイルス感染症の給付金等のご相談をお受けしています。

大阪府の休業要請支援金の申し込みは原則5月31日までです。web登録をしますと申請期日が6月20日まで延長されます。ご注意ください。

 

前回の“行政書士試験の憲法(表現の自由3)”では多くの裁判例を紹介しましたが、判断基準が分かりにくいと感じた方が多いと思います。実はいくつかの裁判基準があり、そのどれに当てはまるのかというだけの問題なのです。裁判基準は、公共の福祉による制限が許されるのかというところで権利の種類や制約方法などによって分けられています。 

今回は、裁判の基準(違憲審査基準)について書きたいと思います。 

 

 

| 表現の自由の限界 

 

前回の記事の裁判例でもお分かりいただけたとおり、事件によって表現の自由が認められたい認められなかったりしています。この境目は何なのかと疑問に思われるでしょう。一言でいえば“公共の福祉”による制約なのですが、人権の種類や制約方法などによって様々な基準があります。 

まず、大きく2つに分けられます。精神的自由と経済的自由です。精神的自由は、民主制の過程での修復が困難であることと裁判所の審査能力が及びやすいことによって、厳しい基準で審査されます。一方の経済的自由は裁判所の審査能力の限界によって国会の裁量が大きくなります。このように、精神的自由と経済的自由で審査基準が変わる理屈を“二重の基準論”といいます。 

1 経済的自由権の違憲審査基準について 

経済的自由権はさらに2つに分かれて、“消極目的規制”の場合と“積極目的規制”の場合です。これを“目的二分論”と呼んでいます。詳しくは経済的自由権のときに紹介します。 

(1)消極目的規制 

消極目的規制には“明白の原則”が用いられます。 

・規制が著しく不合理であることが明白 

この場合に限り違憲と判断されます。国会の判断を特に尊重しています。 

(2)積極目的規制 

消極目的規制では“厳格な合理性の基準”や“合理的関連性の基準”が用いられます。 

・厳格な合理性の基準(実質的関連性の基準と同等) 

 目的:必要性・合理性 

 手段:より緩やかな規制手段がない 

・合理的関連性の基準 

 目的:正当 

 手段:目的と手段との間に合理的関連性 

2 精神的自由権の違憲審査基準について 

精神的自由の基準はたくさんあります。まずは、内容規制と内容中立規制に分けられます。 

(1)内容規制の違憲審査基準 

内容規制については事件によって様々な基準が建てられます。たとえば、宴のあと事件では次の3つの要件を建てています。 

・私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄 

・一般人が公開を欲しないであろうと認められる事柄 

・一般に知られていない事柄 

以上の3つの要件を満たしたときにはプライバシー侵害があるとされています。チャタレイ夫人事件でもわいせつ性の定義をしていましたね。これは一つ一つ覚えるしかありません。 

ただ、一般的に、権利の内容・性質、規制の目的、規制の手段の3つの判断をしています。詳しくは内容中立規制の審査基準で書きます。内容規制独自の違憲審査基準としては“明白かつ現在の危険の基準”があります。 

・近い将来、実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白 

・実質的害悪が極めて重大・時間的に切迫 

・手段が必要不可欠 

この3つの要件を満たすと規制は合憲になります。 

(2)内容中立規制の審査基準 

内容中立規制については一般的な判断基準があります。権利の内容・性質によっては内容規制にも用いられます。 

・厳格な基準 

目的:必要不可欠

手段:必要最小限度

・実質的関連性の基準 

目的:重要

手段:目的と手段との間に実質的関連性

・合理的関連性の基準 

目的:正当

手段:目的と手段との間に合理的関連性

・LRAの基準

LRAの基準は表現の時・場所・方法に関する規制で用いられます。 

 目的:正当 

 手段:制限的でない他の選びうる手段がない 

 

違憲審査基準がややこしくなってきたので最後に整理します。 

1 明白かつ現在の危険(精神的自由権) 

 ・近い将来、実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白 

 ・実質的害悪が極めて重大・時間的に切迫 

 ・手段:必要不可欠 

2 厳格な基準(精神的自由権) 

 目的:必要不可欠、手段:必要最小限度 

3 実質的関連性の基準(精神的自由権) 

 目的:重要、手段:実質的関連性 

4 合理的関連性の基準(精神的自由権、経済的自由権) 

 目的:正当、手段:合理的関連性 

5 LRAの基準(精神的自由権) 

 目的:正当、手段:制限的でない他の選びうる手段がない 

6 明白の原則(経済的自由権) 

 規制が著しく不合理であることが明白 

7 厳格な合理性の基準(経済的自由権) 

 目的:必要性・合理性、手段:より緩やかな規制手段がない 

以上の7つを覚えておくと便利です。これらの他に文面審査がありますが、検閲のところで書きたいと思います。 

 

 

| まとめ 

 

1 判断基準の原則は公共の福祉! 

2 違憲審査基準にはいくつもの種類があります! 

3 二重の基準論と二分論をきっちりと区別! 



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ
Translate »