行政書士試験の憲法(表現の自由2)

前回から始まりました“表現の自由シリーズ”。前回の“行政書士試験の憲法(表現の自由1)”では表現の自由の価値と知る権利について書きました。 

今回は知る権利の続きである“アクセス権”と表現の自由の内容について書きたいと思います。 

 

 

| アクセス権ってなに? 

 

アクセス権という言葉は聞きなれないのではないでしょうか。知る権利を学習しないと聞く機会がほぼない言葉だと思います。 

アクセス権とは、一般的には情報の受け手(国民)が情報の送り手(マスメディア)に対して自己の意見の発表の場を提供することを要求する権利だと言われています。マスメディアに対する知る権利ですね。たとえば、意見広告や反論記事の掲載、紙面・番組への参加などです。“反論権”とも言われています。 

裁判例としてはサンケイ新聞意見広告事件 (最判昭62・4・24)が有名です。 

自民党がサンケイ新聞に掲載した意見広告によって共産党の名誉が毀損されたとして、共産党が同じスペースの反論文を無料かつ無修正で掲載することをサンケイ新聞に要求した事件です。最高裁は、反論文掲載のために紙面を割くことなどは、新聞社に批判的記事の掲載を躊躇させて表現の自由を間接的に侵害する危険につながる虞が大きいとして、具体的な法律がない状態では反論文掲載請求権を簡単に認めることはできないと判断しました。 

批判的な記事を掲載したら反論文を掲載しなければいけないとなると新聞社が委縮してしまうだけでなく、マスメディアの編集の自由との関係でも問題がありそうです。反論文掲載請求は憲法で禁じられているわけではありませんが、憲法で直接保障しているわけでもありませんから、憲法の条文からだけでは反論文掲載の条件等が分からないため法律が必要だとされました。 

 

 

| 表現の自由としての権利 

 

表現の自由は、演説、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ、絵画・写真、音楽・芝居などの表現方法を制限されません。もちろん、公共の福祉による制約はあります。 

ただ、表現の自由として認められるのかどうかが問題になった権利がありました。 

1 報道の自由 

報道の自由とは、一般的に報道機関が印刷や電波などのメディアを通じて国民に事実を伝える自由のことです。判例では博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44・11・26)があります。 

2 取材の自由 

取材の自由とは、報道の前提としての一種の情報収集活動をする自由のことです。判例では、報道の自由と同じく、博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44・11・26)があります。 

3 性表現 

判例では性表現も表現の自由に含まれると解されています。チャタレイ夫人事件(最判昭32・3・13)が有名です。 

4 名誉毀損的な表現 

判例では名誉毀損的な表現も表現の自由に含まれると解されています。夕刊和歌山時事事件(最大判昭44・6・25)があります。 

5 取材源秘匿権(取材の自由の1つ) 

取材源秘匿権には、広い意味で取材をして得た情報の開示を強要されない権利と、狭い意味で取材に応じてくれた取材源の開示を強要されない権利の2つがあります。判例には、広義の意味ではおなじみの博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44・11・26)、日本テレビ事件(最決平元・1・30)、TBS事件(最決平2・7・9)、狭義の意味では朝日新聞石井記者事件(最大判昭27・8・6)、北海道新聞島田記者事件(札幌高決昭54・8・31)などがあります。 

6 法廷における取材(取材の自由の1つ) 

法廷で写真を撮ったりメモを取ったりする権利のことです。判例では、北海タイムス事件(最大決昭33・2・17)で写真撮影は認められませんでしたが、レペタ事件(最大判平元・3・8)でメモ採取の自由は認められました。 

7 国家秘密(取材の自由の1つ) 

国家機密の漏洩は犯罪で処罰の対象になりますが、取材活動のすべてが国家秘密漏洩罪の教唆(そそのかし)になるわけではありません。外務省秘密電文漏洩事件(最決昭53・5・31)では、一定の要件の下で教唆が成立しないことを判示しました。 

 

上記の判例の一部は次回に紹介したいと思います。 

 

 

| まとめ 

 

1 アクセス権は意見公表の場を要求する権利! 

2 性表現・名誉毀損的表現は憲法で保障! 

3 報道・取材の自由も憲法で保障! 



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