2019年12月7日に“会社のお金が横領されたらどうしたらいいの?”では、従業員に会社のお金を横領された場合に会社がやるべきことを書きました。
今回は、早く確実に横領金の返済をしてもらうための方法を書きたいと思います。
| 身元保証人に請求
雇用するときには身元保証書を取得することが多いかと思います。従業員による横領が分かった時は身元保証書の提出を受けているかを確認してください。
身元保証には期間があります。期間の記載がない場合には3年、5年よりも長い期間が書かれている場合は5年です。身元保証は自動更新されませんので、期間が過ぎている場合には新しい身元保証書の提出を受けているかどうかを確認します。
身元保証人がいる場合には、身元保証人の所有不動産を調べましょう。自宅の所有者は登記簿謄本を取得すると分かります。土地と建物の両方を取得してください。
身元保証人が所有者の場合には、抵当権などの設定の有無や共同担保目録を確認します。
共同担保目録に自宅以外の不動産が記載されている場合には、その不動産についても登記簿謄本を取得します。
不動産を所有していれば、競売をして横領されたお金を取り戻すことが可能です。
| 本人の生命保険を解約
本人が生命保険に加入しているかどうかは、年末調整のときに提出している書類で分かります。
本人名義の生命保険があれば、強制的に解約をして解約返戻金を差し押さえることができます。
| 合意書は公正証書で作成
横領をした従業員が全額を一括返済できるのならば大きな問題はありません。期限を決めて一括返済をしてもらいます。
しかし、通常は分割での返済になると思います。この場合、合意書を公正証書で作成しておくことをおすすめします。
公正証書で作成する場合には“強制執行認諾条項”を入れるのが通常です。強制執行認諾条項は、例えば“本公正証書に定める金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に復する旨を陳述した”という文言です。
公正証書の最後の条文に記載されることが多いです。この文言があると、裁判をしなくても財産を差し押さえることができますし、返済への心理的な強制力もあります。
毎月の給料を差し押さえる場合には、手取り額の1/4が上限です。差し押さえると、毎月勤務先から会社に支払われることになります。
公正証書に記載される内容は主に次のような条項です。
(1)不法行為の承認
(2)損害賠償債務の承認
(3)返済方法
(4)期限の利益の喪失
(5)告訴
(6)秘密の保持
(7)清算条項
(8)公正証書の作成費用
(9)強制執行の認諾
その他、必要に応じて公証人と相談しながら作成していきます。
| まとめ
1 債権回収方法は身元保証、生命保険、給与差押!
2 身元保証書は期間に要注意!
3 合意書は公正証書で作成すると強制執行が可能!