2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。
行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。
過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。
| 民法 - 譲渡禁止特約
問題(2017年度 第45問)
AはBに対して100万円の売買代金債権を有していたが、同債権については、A・B間で譲渡禁止特約が付されていた。しかし、Aは、特約に違反して、上記100万円の売買代金債権をその弁済期経過後にCに対して譲渡し、その後、Aが、Bに対し、Cに譲渡した旨の通知をした。Bは、その通知があった後直ちに、Aに対し、上記特約違反について抗議しようとしていたところ、Cが上記100万円の売買代金の支払を請求してきた。この場合に、Bは、Cの請求に応じなければならないかについて、民法の規定および判例に照らし、40字程度で記述しなさい。
問題文では“BはCの請求に応じなければならないか”を問うています。ですから、請求に応じなければいけないか請求を拒絶できるかを書けなければ点数になりません。
状況を図解します。
このような状況で、BはCに対して代金の支払いを拒絶したいと考えています。Aに対しては譲渡禁止特約に違反していることを主張できるでしょうが、第三者であるCに対しても譲渡禁止特約を主張できるのでしょうか。
“民法の規定および判例に照らし”解答しなければいけませんが、判例は条文の文言を解釈していることが多いのでそこに注意して解答を作成します。
そもそも債権者と債務者間の約束事は債権ですから、第三者に何かを求めることはできません。譲渡禁止特約も同じように考えると、第三者のCには譲渡禁止特約の存在を主張することはできないように思えます。
民法の条文では、債権譲渡は認められていますが、性質上許されない場合は譲渡できません。また、当事者が反対の意思表示をしたときにも譲渡はできません。ただし、譲渡禁止の意思表示は善意の第三者に対抗することができません。
以上が条文知識です。この条文の判例の解釈はどうなっているのでしょうか。
ぱっと見て思いつくのが“善意の第三者”の解釈ですね。民法では“善意”や“第三者”の解釈には要注意です。
判例は、重過失は悪意と同視できるから、ここでいう“善意”は“善意・無重過失”のことだと言っています。
この問題も条文の知識と判例の知識がなければ解けない問題でした。
“BはCが譲渡禁止特約について善意無重過失である場合には、Cの請求に応じなければならない。”(44字)
| 民法 - 保証
問題(2012年度 第45問)
AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが保証人(Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない。)となり、また、Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、Cに対してのみ弁済を請求した。この場合において、Cは、Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。40字程度で記述しなさい。
問題文では“どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか”を問うています。ですから、どのような事を証明するのかを書けなければ点数になりません。
状況を図解します。
この問題、実は問題文に大きなヒントがあります。それは保証人Cが“Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない”とあるのです。つまり、単純保証と連帯保証の違いが答えになるのです。
単純保証人には認められていて連帯保証人には認められないものは何でしょうか。そう、“催告の抗弁権”と“検索の抗弁権”ですね。今回の場合のように支払いを拒絶したいときは、“検索の抗弁権”を主張することになります。これを答案に書けばOKです。
“CはBに弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明すれば弁済を拒むことができる。”(43字)
| まとめ
1 “第三者”が出てきたら対抗要件に注意!
2 判例は“善意”や“第三者”という条文の文言を解釈!
3 連帯保証の特殊性(抗弁権や絶対効)は要チェック!