2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。
行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。
過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。
| 民法 - 債務不履行
問題(2007年度 第46問)
金銭債務の不履行については、履行不能や不完全履行の観念を入れる余地はなく履行遅滞のみが問題となると考えられているところ、民法は、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と規定している。(419条1項)。それでは、この点のほか、金銭債務の特則二つを、「金銭債務の不履行の損害賠償については、」に続けて、40字程度で記述しなさい。
なお、「金銭債務の不履行の損害賠償については、」は、字数に算入しない。
問題文では“金銭債務の特則二つ”を問うています。
今回の問題も抽象的です。条文そのままの問題ですね。条文を知っているか知らないかで解けるかどうかが変わってきます。知らないと試験現場で考えても分かりません。条文を面倒くさがらずに読んでいたかどうかで差がつく問題です。
知らなかった場合に試験現場でどのように考えるのかを書いてみます。
金銭債務の特則ですから、通常の債務不履行の損害賠償とは違うところがあることになります。通常の債務不履行の損害賠償の要件を思い出しましょう。履行不能と不完全履行の場合の共通項を抜き出してみます。
1 債務者の帰責性
2 違法性
3 債権者による損害の証明
3つ出てきましたね。このうち“違法性”は金銭債務でも必要になりそうです。ですから、残りの2つが金銭債務の特則では必要ないということだと予想できます。
債務者の帰責性は支払いが遅れたことに対して債務者が“悪い”と評価される事実がある場合に帰責性があるとされます。帰責性が不要とするならば、どのような理由であれ支払いに遅れたら履行遅滞の責任を負うということになります。これが1つめです。
損害の証明が不要というのはそのままですので、さっそく解答を作ります。
“債権者は損害を証明する必要がなく、債務者は不可抗力による履行遅滞でも責任を負う。”(40字)
| 民法 - 債権譲渡
問題(2008年度 第46問)
AはBに対して、自己がCに対して有していた300万円の貸金債権を譲渡した。この場合、債権譲渡の合意自体はA・B間で自由に行うことができるが、債権譲渡の合意に基づいて直ちに譲受人Bが債務者Cに対して支払いを求めることはできない。では、その理由について、「なぜならば、民法の規定によれば、指名債権の譲渡は、」に続けて、40字程度で記述しなさい。
問題文では債権譲渡の合意をしても直ちに譲受人に支払いを請求できない“理由”を問うています。正しい理由が“~だから”と書ければ点数になります。
この問題は具体的でありそうですけれど、抽象的な条文問題です。条文の知識を問うていますから知らなければ解答できません。条文は面倒くさがらずに読みましょう。
指名債権譲渡の対抗要件は覚えてしまっている方も多いと思います。記述式の問題集でも必ずと言ってもいいほど予想されていたところです。
そうです。譲渡人からの通知か債務者の承諾です。
“譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をしなければ、債務者に対抗できないから。”(41字)
| まとめ
1 条文問題でも基本から考えれば解答できるかも!
2 特則や対抗要件は要注意!
3 条文は必ず何度も読むことが大切!