2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。
行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。
過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。
| 民法 - 盗品等回復請求権
問題(2013年度 第46問)
Aの指輪が、Bによって盗まれ、Bから、事情を知らない宝石店Cに売却された。Dは、宝石店Cからその指輪を50万円で購入してその引渡しを受けたが、Dもまたそのような事情について善意であり、かつ無過失であった。盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、40字程度で記述しなさい。
問題文では “必要なまたは関係する要件に言及して” “指輪の返還を請求できるか”を問うています。ですから、(1)要件を挙げた上で、(2)返還を請求できるかを書かなければ点数になりません。
本問の状況を図解します。
このような状況で、AはDに対して指輪の返還を請求したいと考えています。盗人に返還を請求するのなら“所有権に基づく返還請求権”を行使すればいいのですが、本事例では善意無過失の購入者であるDに対しての返還請求です。
Dの立場に立って、Aからの返還請求を拒むためにはDに所有権がなければいけませんが、そもそもDは所有権を取得しているのでしょうか。
まず、盗人Bに所有権はありません。
盗人Bから指輪を購入した宝石店Cはどうでしょうか。ここで考えるのは即時取得(192条)です。即時取得の要件は次のとおりです。
1 動産であること
2 前主が無権利であること
3 有効な取引行為
4 占有をしていること
5 平穏・公然・善意・無過失
これを本事例に当てはめると、指輪は動産で、盗人Bは無権利者です。宝石店Cは盗人Bから指輪を購入していますから有効な取引行為があります。宝石店Cは盗人Bから引き渡しを受けていて現実の占有がありました。また、宝石店Cは平穏・公然に善意・無過失で指輪を取得しています。
したがって、宝石店CはAの指輪を即時取得しました。即時取得で得た所有権は転得者にも承継されますので、買主Dは所有権を取得しています。
次に、Aの立場で考えてみましょう。盗品や遺失物の回復請求に関しては民法193条と194条に書かれています。
193条には、即時取得の場合で目的物が盗品や遺失物の場合には、被害者や遺失者は盗難や遺失のときから2年間、占有の回復を請求することができるとしています。ポイントは、“盗品と遺失物”、“盗難・遺失のときから2年間”、“占有の回復請求可”ということです。
これを本事例に当てはめると、Aは盗難のときから2年間、Dに返還請求ができることになります。
この話には続きがあります。194条です。194条には、盗品や遺失物を競売・公の市場・同種のものを販売する商人から善意で購入したときは、被害者や遺失者は“代価を弁償して”占有の回復を請求することができるとあります。
ポイントは、“競売・公の市場・同種のものを販売する商人”、“善意”、“代価を弁償”です。公の市場は通常のお店のことです。
これを本事例に当てはめると、Dは宝石店で盗品と知らずに50万円で購入していますので、AがDに指輪の返還を請求するには50万円を弁償しなければいけません。
以上のことを答案に表します。
“Aは、盗難の時から2年間、DがCに支払った代価を弁償して指輪の返還を請求することができる。”(45字)
その他の解答例
“Aは、6ヵ月以内にDが支払った50万円を弁償してDに指輪の返還を請求することができる。”(43字)
本事例は数字を間違えると0点です。ポイントは“盗難の時から”“2年間”“代価を弁償”“返還請求できる”の4つでしょうか。同じ意味で言い換えた解答例を“その他の解答例”で書いてみました。どちらでも点数がつくと思います。
| まとめ
1 問題文の誘導には素直に従って!
2 返還請求できるかどうかは両者の立場に立って考えます!
3 回答に数字を書く場合には間違えると0点!